介護現場の人手不足や業務負担を軽減するため、厚生労働省は介護ロボットやICT機器などの導入を支援する「介護テクノロジー導入支援事業」を推進しています。2025年度(令和7年度)は、重点分野の見直しや補助対象の拡充が行われ、より幅広い事業所が活用できる仕組みとなりました。しかし、申請手続きや締め切りは都道府県ごとに異なるため、正確な情報の把握が不可欠です。
本記事では、この介護テクノロジー補助金の概要や申請フロー、導入事例、さらに2025年度の最新の地域別情報を整理して解説します。

介護テクノロジー補助金とは、介護現場の業務効率化、職員の負担軽減、そしてサービスの質向上を目的に、介護ロボットやICT機器の導入を国と自治体が支援する制度です。各都道府県が窓口となり、介護事業者が対象機器を導入する際にかかった経費の一部を補助します。
介護テクノロジーとは、介護現場での生産性向上に資する機器やソフトウェアを指します。厚生労働省および経済産業省が定めた「介護テクノロジー利用の重点分野」9分野16項目に該当するものが対象で、移乗支援、見守り・入浴支援などを行う介護ロボット、介護記録ソフト、タブレット端末、クラウドサービスなどが含まれます。詳細は後述の補助対象事業で説明します。
補助の対象となるのは、厚生労働省および経済産業省が定めた「介護テクノロジー利用の重点分野」に該当する機器やソフトウェアです。
【補助対象】
【補助対象事業】
| 補助対象 | 説明 |
|---|---|
| 介護ロボット | 「介護テクノロジー利用における重点分野」(令和7年度より改定)に該当する介護ロボット(カタログ方式を導入) |
| ICT | 介護ソフト、タブレット端末、インカム、クラウドサービス、業務効率化に資するバックオフィスソフト(転記等の業務が発生しない環境が実現できている場合に限る)等 |
| パッケージ型導入 | 見守り機器等の複数のテクノロジーを連動することで導入する場合に必要な経費 |
| その他 | 第三者による業務改善支援等にかかる経費 |
なお、介護ロボットの項で記載されている「介護テクノロジー利用の重点分野」として、以下の9分野16項目が定義されています。
原則として、公益財団法人テクノエイド協会の「福祉用具情報システム(TAIS)」で選定された機器が対象となります。機器導入に付帯するWi-Fi工事などの通信環境整備経費は、原則として補助対象外となるケースが多いため注意が必要です。
補助金額は導入する機器や事業規模に応じて異なります。補助金の上限は、介護ロボットで30~100万円、ICTで100~250万円です。パッケージ製品の導入は、上限が400~1,000万円となります。
【補助額】
| 補助対象 | 補助額 | 補助台数 |
|---|---|---|
| 介護ロボット | 【移乗支援】上限100万円 【入浴支援】上限100万円 【上記以外】上限30万円 | 必要台数 |
| ICT | 【1~10人】 100万円 【11~20人】 150万円 【21~30人】 200万円 【31人~】 250万円 ※職員数により変動しない場合は一律250万円 | 必要台数 |
| パッケージ型導入 | 上限400~1,000万円 | 必要台数 |
補助率に関しては、以下の要件を満たした場合は4分の3、条件を満たさない場合は2分の1となります。
【補助率】
| 共通要件 | ・職場環境の改善を図り、収支が改善された場合、職員賃金への還元を導入効果報告に明記 ・第三者による業務改善支援を受けること |
| 介護ロボット | ・見守り、インカム・スマートフォン等のICT機器、介護記録ソフトの3点を活用すること(入所・泊まり・居住系に限る) ・従前の介護職員等の人員体制の効率化を行うこと 利用者のケアの質の維持・向上や職員の負担軽減に資する取組を行う予定であること |
| ICT | (在宅系)・ケアプランデータ連携システムを利用し、かつデータ連携を行う相手となる事業所が決定していること (それ以外)以下のいずれか ・LIFE* にデータを提供している又は提供を予定していること ・文書量半減を実現させる導入計画となっていること |
| パッケージ型導入 | ・介護ロボット・ICTの要件をいずれも満たすこと。但し、ICT(それ以外)に記載の要件はすべて満たすこと |
実際に介護テクノロジー補助金を活用して課題解決に成功した事例を2つ紹介します。
IoTセンサーは、温度・湿度・圧力などの物理データを収集する装置です。介護施設ではベッドやトイレ周辺にセンサーを設置し、利用者の心拍数、起床・就寝時間、活動状況などを取得。データをサーバーへ送信することで、遠隔から健康状態をモニタリングできます。
兵庫県の老人ホームでは、実証実験として5室の居室にベッドとトイレそれぞれに1台ずつセンサーを設置。カメラを使わずにプライバシーを保護しながら、心拍数や離床を遠隔でモニタリング可能になり、スタッフの夜勤負担が軽減されたほか、転倒リスクの予兆を約50%削減することに成功しました。
移乗サポートロボットは、ベッドから車椅子への移動が自力では難しい利用者を支援する介護ロボットです。利用者を座ったままリフトして移動させる仕組みで、従来は複数人で行っていた移乗介助を1人で対応できるようになります。介護業界で深刻化する人手不足の解消にも役立つことが期待されています。
福島県の介護施設では、補助金を活用して移乗サポートロボットを導入。利用者を抱きかかえずにスムーズな移乗が可能になり、1人での対応が容易になりました。スタッフの身体的・心理的負担が大幅に減少し、利用者にとっても「抱えられる不快感」が解消され、双方にメリットが生まれました。
申請締め切りや要件は都道府県によって大きく異なります。以下は2025年度(令和7年度)の主要な情報をまとめたものです。締め切り済みの場合や、2次募集が行われる場合もあるため、必ず「詳細リンク」から最新の公募状況をご確認ください。
介護テクノロジー補助金の申請は、基本的に事業所が所在する都道府県が窓口となります。
標準的な流れは、①申請窓口・要件の確認、②事前協議書の提出、③交付申請書の提出、④補助事業の実施、⑤実績報告書の提出、⑥使用状況報告書の提出というステップで進みます。
事業所が所在する都道府県のWebページで要件や締め切りを確認します。自治体によっては、指定された「生産性向上セミナー」への参加が必須条件となる場合があります。
指定期日までに「導入計画」などをまとめた事前協議書を提出します。郵送、メール、持参など、提出方法は自治体により異なるため確認が必要です。
事前協議で内示を受けた後、正式な交付申請書や見積書、納税証明書などを提出します。
「交付決定通知」が届いてから介護テクノロジー機器またはサービスを発注し、導入を完了します。
*契約、納品および支払いについては、補助金交付決定日より後に行う必要があります。補助金交付決定日よりも前に契約、納品した場合は補助対象から除外されます。
*また、実績報告期限までに導入し、支払いまでを完了する必要があります。実績報告期限よりも後に支払われた場合も補助対象から除外されます。
事業完了後、領収書や実績報告書を提出し、補助金額の確定を受けます。その後、補助金が振り込まれます。
介護テクノロジー補助金受給後の3年間、導入効果や使用状況を報告します。
介護テクノロジー補助金を申請・活用する際には、いくつか注意すべき点があります。制度の仕組みを理解していないと、申請が通らなかったり、導入後に思わぬ負担が発生したりする可能性があるため、事前に確認しておくことが重要です。
補助金は、事業者が全額を支払った後に支給される「後払い(精算払い)」方式です。数百万円規模の立替期間が数カ月発生するため、事前のキャッシュフロー計画が重要です。
補助対象となるのは原則として「初期導入費」です。クラウドサービスの月額利用料などは、一定期間(例:初年度分)のみ対象となるケースが多いですが、その後の保守費用や通信費は自己負担となります。
「補助金をもらって終わり」ではありません。3年間の報告義務があり、導入によって業務時間がどれだけ削減されたか、給与への還元ができたかなどのデータを継続的に記録する必要があります。
2025年度の介護テクノロジー補助金は、要件が緩和され、より使いやすい制度となっています。しかし、各都道府県で締め切りが異なり、すでに受付を終了している地域もあります。
まずは、自社の地域の締め切り情報を確認し、間に合う場合は速やかに事前協議の準備を、間に合わない場合でも次年度に向けた情報収集を始めることをおすすめします。テクノロジーを賢く活用し、スタッフの笑顔とケアの質向上を実現しましょう。