導入背景
保育現場のICT化を考える中で、立ち止まってこそ見えてきた課題
保育業界では、業務の複雑化や人材不足が続く一方で、ICTやDXの活用状況は限定的なまま推移しています。はな保育でも、日々の運営において、業界全体と自社固有の課題の両方を抱えていました。
加藤様「保育業界全体を見ると、ICTやDXが前提になっていない構造そのものに課題があると感じていました。園の現場でデジタル化を進めようとしても、行政手続きは紙中心で進んでいることが多く、情報が分断されてしまう。こちらでは紙で書き、提出先でも紙で管理し、さらに別のシステムに入力する。そうした運用が続く中で、非効率さを感じる場面は少なくありませんでした。
実際に、タブレット端末があってもネットワークにつながっていない園もあります。使おうとすると職員室まで行かなければならない、といった状況が当たり前になっているケースもありました。
ただ、保護者の方や若い保育士は、日常的にスマートフォンやデジタルサービスを使う世代です。同じ内容を何度も紙に書く運用に違和感を持つのは自然なことですし、ICTに触れる機会がほとんどない環境に不安を感じる人がいるのも事実だと思います」
こうした状況を踏まえ、はな保育では「保育施設におけるICT化そのものが避けては通れない課題である」と認識するようになりました。
加藤様「だからといって、単にツールを入れれば解決するわけではありません。まずは、きちんと使える前提を整えることが必要だと考えていました。通信環境が安定していなければ、AIやIoTを導入しても機能しない。どうすれば保育現場でICTが本当に活きるのか、その道を探るところから今回の取り組みは始まっています」
こうしてはな保育は、保育施設のICT化を前提に据えた上で、現場で無理なく機能する仕組みづくりを模索し始めました。
楽天モバイルに決めた理由
通信だけでなく、土台づくりを一緒に考えられる相手かどうか
保育施設のICT化に取り組むに当たり、はな保育では単なる通信サービスの導入ではなく、現場の実情を理解しながら中長期で伴走できる相手を求めていました。
加藤様「最初のきっかけは、楽天モバイルのイベントで声をかけていただいたことでした。当初は、法人の携帯電話を切り替えるといった話から始まっています。ただ、その時点でスマートフォンを変えて終わりという形にはしたくないと感じていました。
ICT化を進める上で、はな保育が重視していたのは、個別のツールを増やすことではなく、園の運営を支える前提条件そのものを見直すことでした。
保育業界は、園だけで完結できない課題が多くあります。通信環境が安定していなければ、どれだけ良いシステムや機器を入れても、現場では使われなくなってしまう。だからこそ、通信を含めた土台から一緒に考えてくれるパートナーが必要だと考えていました」
そうした考えのもと、楽天モバイルとの対話を重ねる中で、通信にとどまらず、AIやIoTを含めた幅広いソリューションを持ち、全体像を踏まえて提案できる点に可能性を感じたといいます。
加藤様「実際に話を進める中で印象的だったのは、サービスを一方的にすすめるのではなく、『保育園の運営にとって何が必要か』という視点で一緒に考えてもらえたことです。通信を整えた上で、どんな仕組みを載せていくのか。そうした全体像を共有しながら進められたことが、楽天モバイルさんにお願いしようと決めた理由でした」
導入プロセス
開園時期から逆算し、必要なICTソリューションを一つずつ導入
はな保育では、「次世代型ICT保育園」の構想段階から、開園後に無理なく運用できる環境の整備を重視していました。そのため、園の開設スケジュールに合わせ、通信基盤の整備から段階的に各ソリューションの導入を進めています。
加藤様「はな保育室こまきはらは、2025年11月の開園が決まっていました。そこから逆算して考えると、開園してから試すのではなく、準備段階できちんと使える状態をつくっておく必要がありました。まずは通信環境を整えることが最初のステップでした。
最初に着手したのが、園内の通信インフラの整備です。複数のデバイスやクラウドサービスを前提とした運営を想定し、楽天モバイルの法人向け高速インターネット接続サービス「KŌSOKU Access」を導入し、園内全体で安定したネットワーク接続を確保しました。
次はAI搭載カメラ「Safie One」です。園内の様子を継続的に確認できる環境を整えることで、安全管理の考え方そのものを見直す狙いがありました。 さらに、園内環境の管理や入退室の仕組みとして、AI空間管理ソリューション「Rakuten NEO」を試験的に導入しました。
また、多言語対応が必要な場面も想定し、AI通訳機「ポケトーク」も導入しました。
いきなりすべてを完成させるというより、通信を整えて、その上に必要なものを一つずつ載せていく。その順番を意識して進めてきました」
このように、はな保育では開園前から段階的に導入プロセスを設計し、通信→お子様の見守り→施設管理→コミュニケーションという流れで、現場で使えるICTの形を積み上げてきました。
活用方法
通信基盤を起点に、お子様の見守り・施設管理・多言語対応を支える仕組みを構築
はな保育室こまきはらでは、導入した各種ソリューションを単体で使うのではなく、通信基盤を中心に、園内の業務や安全管理を横断的につなげる形で活用しています。
加藤様「今回の取り組みでは、何か一つのツールを便利に使うというよりも、通信を土台にして、園の中の仕組みがちゃんと動く状態をつくることを意識していました。
法人向け高速インターネット接続サービス「KŌSOKU Access」の導入で、複数のPCやタブレット、IoT機器が同時に接続される状態でも、安定した通信が確保されています。
AI搭載カメラ「Safie One」は、園内の様子を常時確認できるだけでなく、映像がクラウドに保存されるので、必要に応じて状況を振り返ることが可能です。事故やヒヤリとする場面があった際にも、感覚や記憶に頼らず、状況を事実として確認できます。
園内環境を管理するAI空間管理ソリューション「Rakuten NEO」は、入退室管理や空調・照明といった設備をデジタルで制御できる機能を備えており、子どもにとって快適な環境づくりと、職員の手間の軽減を両立できるかを検証しています。
多言語対応のAI通訳機「ポケトーク」は、外国人保育士や、多言語での説明が必要な保護者対応などを想定し、円滑なコミュニケーションを支えるツールとして活用するつもりです」
導入効果
ICTの基盤が整備され、保育園運営は次のフェーズへ
加藤様「はな保育室こまきはらは開園から日が浅く、ICT導入による効果を数値で示せる段階にはありません(※取材時期は2025年12月)。しかし、運営や現場の捉え方には、すでにいくつかの変化が生まれています。
AIカメラがあるから安心というよりも、確認できる手段があるという状態が重要だと思っています。何かあったときに、事実として振り返られる。それがあるだけで、現場の心理的な負担は違ってきます。
また、ICTに取り組む姿勢そのものが、保護者や職員からの受け止め方にも影響を与えています。
新しい技術を取り入れ、安全性や快適な環境づくりに向き合っていることが伝われば、園に対する信頼感につながります。
採用の観点でも、変化は感じています。若い世代の保育士にとって、ICTに触れられる環境があることは、働く場としての安心感や将来性を考える材料になります。
今の若い人たちは、スマートフォンなどのデジタル機器が当たり前にある世代です。ICTがまったくない環境だと、それだけで不安を感じる人もいる。今回の取り組みは、そうした不安を減らす意味があると考えています」
まだ効果が表れ始めた段階ですが、ICTを無理なく使える前提が整ったことで、はな保育の園運営は確実に次のフェーズへと進み始めています。
今後の展望
実証を重ね、保育業界にとって無理のないICTの形を探求
加藤様「はな保育では、今回の取り組みを『一部の先進的な園だけの特別な事例』として終わらせる考えはありません。すべての園に同じ仕組みを一律に展開することが現実的ではないことも、冷静に受け止めています。
ただ、この中で子どもや保護者にとって本当に意味があると分かったものについては、今後も前向きに取り入れていきたいと考えています。
はな保育室こまきはらでの取り組みは、あくまで実証の場です。通信環境、お子様の見守り、施設管理、コミュニケーションといった要素が、実際の運営の中でどのように機能し、どこに価値があるのかを見極めながら、必要なものを選び取っていく方針です。
私自身は、保育業界全体にICTやDXがもっと自然に広がってほしいと思っています。便利だから使う、安全だから取り入れる、という判断が特別なことではなく、当たり前になる状態をつくりたいです。
その実現において、楽天モバイルとの連携には大きな期待を寄せています。通信というインフラから、AIやIoTまでを一体で支えられる点は、ICT化に課題を抱える保育業界にとって重要な要素です。
保育の現場は、ツールを導入する以前に、そもそもつながる土台が整っていないケースも少なくありません。通信からまとめて考えられるパートナーがいることは、業界全体を前に進める上で欠かせない存在だと感じています。
今後は、はな保育が現場で得た知見を活かしながら、保育業界とテクノロジーの間をつなぐ役割も模索していく考えです。楽天モバイルと共に、『機能するICT保育』の形を示し続けることが、次世代の保育環境づくりにつながっていくと考えています」