4Pとは?マーケティング戦略の基本を解説

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4Pとは、「Product(製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販促)」の4つの要素を分析するマーケティングのフレームワークです。この4つの視点を整理・検討することで、顧客のニーズに合ったマーケティング施策を体系的に構築することができます。マーケティング担当者であれば、ぜひ知っておきたい概念です。

この記事では、4P分析の基本的な進め方と、それぞれの要素がマーケティング戦略に与える影響について解説します。

4Pとは?マーケティング戦略の基本を解説

マーケティングの4Pとは?

マーケティングの4Pとは?

4Pは、マーケティング戦略を立案する際に活用される基本的なフレームワークです。「Product(製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つの要素から構成されており、それぞれの頭文字をとって「4P」と呼ばれています。

フレームワークとは、課題解決や意思決定を効率的に進める思考の枠組みです。4Pは、このフレームワークの一つとして、企業が自社の製品やサービスを分析し、顧客ニーズに合ったマーケティング施策を体系的に企画・立案するために広く活用されています。

4P分析の歴史

マーケティングの4Pは、1960年に米ミシガン州立大学のエドモンド・ジェローム・マッカーシー(E. Jerome McCarthy)教授により提唱されました。4Pは、『ベーシック・マーケティング:マネジメント・アプローチ』のなかで、マーケティングミックスにおける4P(製品、価格、流通、販売促進)として登場します。当時アメリカは大量生産・大量消費の時代が続いており、企業が効率的に製品・サービスを販売するためのマーケティング戦略の立案に4Pは大きく貢献しました。

混同しやすい4C分析との違い

4P分析と同様に、マーケティング分野でよく登場するフレームワークの一つが4C分析です。これは4Pを顧客視点で置き換えたもので、「Customer Value(顧客価値)」「Cost(コスト)」「Communication(顧客接点)」「Convenience(利便性)」という4つの要素で分析します。4Pが登場してから30年以上経った1993年に、マーケティング学者のロバート・F・ロータボーン(Robert F. Lauterborn)により提唱されました。

4Pと4C、両方の分析を行うことで、企業と顧客のどちらの視点にも偏らずに、質の高いマーケティング戦略を立てられます。

4Pの要素 説明 4Cの要素
製品、サービス(Product) 【4P】自社が提供する製品・サービス
【4C】購入により顧客が得るメリット・価値
顧客価値
(Customer Value)
価格(Price) 【4P】製品・サービスの価格
【4C】顧客が支払う費用
コスト(Cost)
流通(Place) 【4P】製品・サービスを顧客へ届ける経路
【4C】顧客にとっての利便性
顧客接点(Communication)
販売促進(Promotion) 【4P】製品・サービスを顧客に知ってもらうための方法
【4C】顧客とのコミュニケーション
利便性(Convenience)

マーケティングで4P分析を行うべき理由

企業が製品やサービスを市場に投入する際には、自社の強みを生かして差別化を図り、適切な流通経路と効果的なプロモーションを通じて顧客に届ける必要があります。

例えば、ある企業が「体脂肪減少効果が期待できる緑茶飲料」を販売する場合、通常のお茶と同じ販売方法では十分な差別化ができず、期待する売上には届かない可能性があります。何種類ものペットボトルが揃うコンビニの商品棚に並んだ際に、商品の機能や効果が一目で伝わるパッケージデザインや、ターゲット層に響くプロモーションを展開することで、他製品との差別化が図れ、購買につながります。

4P分析を行わずに製品を販売すると、戦略の一貫性が欠けたり、偏りや漏れが生じたりする可能性があります。

基本の4P分析のやり方

基本の4P分析のやり方

4P分析は、①製品の魅力をどう伝えるか②価格をどう設定するか③どこで販売すべきか④どんなプロモーションが効果的か、という順番で分析を行っていきます。

今回は、チョコレートを製造・販売するメーカーが新商品開発を行うケースを例として、基本の4P分析のプロセスを見ていきます。

例:都内に2店舗を構えるチョコレート専門店。海外での受賞歴を持つショコラティエが商品開発を行っており、世界各地から取り寄せた高品質の原材料を使ったチョコレート製品が特徴。最近はネット通販に力を入れており、通年で販売が見込める新商品の開発を検討している。

Product(製品)を分析する

はじめに、自社の製品・サービスをどのように提供するかを検討します。自社の強みはどこにあるか、市場での差別化ポイントはどこにあるかを洗い出し、以下の要素を検討します。

  • 機能・品質
  • ブランド価値
  • 名称
  • デザイン・パッケージ
  • ターゲット層

例:健康・美容意識が高い女性向けの高カカオチョコレートを提供する。「頑張った自分へのご褒美」という位置付け。SNS映えや女性受けを意識して、箔押しを使い、おしゃれで高級感があるパッケージを採用。

Price(価格)を分析する

次に、製品・サービスの価格を検討します。以下の要素を分析し、適切な価格設定を行います。希少価値を高くして高価格にする、低価格で薄利多売を目指す、などの戦略が考えられます。

  • 原価・利益
  • 付加価値
  • 顧客の購買力
  • 競合製品の価格

例:付加価値が高いため、通常のチョコレート製品よりも高め(20%)で利益率を設定する。

Place(流通)を分析する

インターネット販売、実店舗販売の使い分けや、店舗立地、物流体制など、製品が顧客に届くまでのチャネルや販売方法を設計します。ターゲットとなる顧客が購入しやすい流通経路を設定する、販売管理をしやすくするため販売チャネルを限定する、などの戦略が考えられます。

  • 販売チャネル
  • 物流体制

例:実店舗での販売はせず、インターネット通販限定にする。将来的には顧客データをマーケティングに活用する計画。

Promotion(販売促進)を分析する

最後に、製品・サービスを顧客にアピールする方法を分析します。広告を出稿してPRする方法のほか、SNSで投稿を行う、クーポンを配布する、キャンペーンを実施するなど、さまざまな方法で認知度を高めたり商品の魅力を発信したりします。

  • 媒体
  • ポジショニング
  • PRポイント

例:ターゲットにリーチしやすいYouTube動画広告を出稿。自社SNSで利用シーンを訴求し、ECサイトへ誘客する。

4P分析の事例

さまざまな業界で成功している企業戦略を、4P分析の切り口で分析して紹介します。

有名カジュアル衣料品メーカーの4P戦略

ある衣料品メーカーは、シンプルで高品質な衣料品を手頃な価格で提供するビジネスモデルで成功しています。商品は機能性、デザイン性に優れており、手に取りやすい価格を設定。さらにオンライン販売やSNSによる情報発信、DXによる顧客体験の向上など積極的にデジタル活用を進めており販売の高度化・効率化を進めています。

製品、サービス(Product) ・高品質な衣料品を手頃な価格で提供
・シンプルで合わせやすく幅広い層がターゲット
・企画から製造、物流、販売までを自社で一貫して行うSPAモデル
価格(Price) ・手ごろな価格設定
流通(Place) ・オンラインとオフラインを統合してオムニチャネル戦略
・効率的な在庫管理
販売促進(Promotion) ・有名ブランドとのコラボでブランド価値向上+新規顧客層開拓
・テレビCM、折込チラシ、アプリ、SNSなど多角的なプロモーション展開

大手グローバルカフェチェーンの4P戦略

あるグローバル展開するカフェチェーンは、国や地域ごとに異なる商品を提供することで、ローカルニーズに応える戦略をとっています。国ごとに異なる種類のドリンクを展開し、さらに地域ごとに限定メニューを導入するなど、きめ細かな商品設計を行うことで他社との差別化を行っています。また、良質な接客でブランドのファンを作りつつ、期間限定の商品提供などでリピーターを獲得しています。

製品、サービス(Product) ・国や地域ごとに異なる商品を提供
・居心地の良い「第三の場所」としての価値を訴求
価格(Price) ・他のカフェチェーンより高め
・コーヒー専門店よりも手頃
流通(Place) ・主要駅や商業施設など、アクセスの良さとブランドイメージを両立できる場所を選定
販売促進(Promotion) ・マス広告は利用しない
・利用者の口コミが広がることを期待

4P分析を行うときに気をつけたいポイント

4P分析を行うときに気をつけたいポイント

4P分析に初めて取り組む際には、いくつか注意すべきポイントがあります。まず、実商品以外のデジタルサービスや人的サービスを提供する企業の場合は、4P要素だけでなく人やプロセスなどの追加要素も考慮すること。また、分析を進める際には企業側の視点だけでなく、顧客の立場から見た価値や体験を意識することです。

サービス業は7Pで分析する

飲食、宿泊、各種サービス提供など、有形の製品ではなく接客やサポートといった無形のサービスを提供する業態をサービス産業と呼びます。この業態では人が大きな役割を果たすため、従来の4P分析では正確な分析ができない可能性があります。そこで、4P要素に加えて「People(人)」「Process(プロセス)」「Physical Evidence(物的証拠)」の3つのPを加えた7Pで分析することで、より的確なマーケティング戦略を立案することができます。

並行して4C分析も行う

企業視点の4C分析と顧客視点の4P分析は、対となる関係性です。4C分析を行うことで、顧客がなにを求めているか、どのようなコミュニケーションが適切かを理解できるため、4P分析と並行して4C分析も行うことで、より顧客視点を意識したマーケティング戦略を立案できます。

デジタル時代に合わせて4P分析をアップデートすることが必要

4Pは65年以上前に提唱された理論ですが、現在でもマーケティングの現場で広く活用されており、戦略設計の出発点として非常に有効です。しかし、4Pが生まれた当時と今は社会的な状況も顧客の購買行動も大きく異なります。今の時代に最適な形で4P分析を活用するためには、デジタルサービスの提供やスマホを起点としたコミュニケーション、ターゲティング広告など、時代の変化に合わせて分析をアップデートすることが不可欠です。

4Pはマーケティングの土台としてしっかり押さえておくことが重要

生成AIの登場により情報収集の手段が劇的に変化したように、今の時代は、あるきっかけで消費者の行動が急速に変化する可能性があります。そのため、企業が製品やサービスを提供する際には、世の中の変化を正確に把握したうえで柔軟かつ迅速な対応が求められます。

同時に、どれほど環境が変化してもマーケティングの根幹となる考え方には普遍的な価値があります。その代表的なフレームワークが4P分析です。マーケティング担当者は、この基本を理解した上で、市場や顧客の変化に応じて施策を組み立てていくことが重要です。