自社のマーケティング戦略に「LTV」を活用したいと考える方は多いのではないでしょうか。本記事では、LTVの基本的な意味や計算式、用語をわかりやすく解説します。さらに、取り組み事例や利益向上につながる具体的な施策についても紹介します。LTVを正しく理解し、戦略に取り入れることで、長期的な収益の最大化を目指しましょう。

LTVは「Life Time Value」の略称で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。一人の顧客がその企業との取引を開始してから終了するまでの期間にもたらす利益がどれぐらいかを数値化したものです。数値化することで、自社の利益や目標数値などの分析が容易になり、マーケティング戦略の方向性を定めやすくなります。また、LTV向上は利益率向上にも深く関わっています。
一般的なLTVの計算方法には、主に売り切り化型とサブスクリプション型の2種類があります。近年は、従来の売り切り型よりもサブスクリプション型のサービスが増えてきています。
売り切り型は、1回の購入で取引が完結するタイプのサービスです。計算式は次のようになります。
LTV=購入単価×購入頻度×取引期間×粗利率
例えば、1回当たりの購入単価が10,000円、購入頻度が年4回、取引期間が3年、粗利率が40%の場合のLTVは次のとおりです。
10,000円×4回×3年×0.4=48,000円
サブスクリプション型は、月額料や年額料を継続的に支払うサービスです。この場合は、月額や年額といった支払い単位を購入単価とし、チャーンレート(解約率)とあわせて計算します。計算式は次のようになります。
LTV=購入単価(年額または月額)÷チャーンレート
例えば、年額料金が5,000円、チャーンレートが5%の場合のLTVは次のとおりです。
5,000円÷0.05=100,000円
LTVが注目を集めている理由は、大きく分けて3つあります。
総務省統計局の人口推計によると日本の総人口は減少傾向にあり、特に2019年を境により減少傾向が強まっています。今後は市場が縮小するため、新規顧客の開拓が難しくなります。そのため、一度獲得した顧客の価値が相対的に上がるともいえます。そのため、LTVを伸ばしていくことの重要さが増しています。
近年、月額や年額で継続的に製品やサービスを利用できるサブスクリプション型のビジネスが急増しています。サブスクリプションは一度きりの売上ではなく、継続利用によって長期的な収益を得られる点が大きな特徴です。そのため、顧客が自社サービスをどれだけ長く利用してくれるかを示す指標である LTVの重要性が高まっています。
従来、Web広告の多くは第三者が発行する「サードパーティーCookie」を活用し、ユーザー行動を追跡して最適化を行ってきました。しかし近年、個人情報・プライバシー保護の規制強化によりCookie利用が難しくなり、外部データを用いた広告ターゲティングは難しくなっています。
その結果、新規顧客を効率よく獲得するためのコスト(CAC:顧客獲得コスト)は上昇傾向にあります。こうした状況下では、LTV(いかに既存顧客から長期的に収益を得るか)を高めることが、企業の利益を守る上で重要なテーマです。
ここからは、LTV算出に関する押さえておきたい指標や用語について解説していきます。LTVを構成する指標は次の6つです。どの指標も顧客1人当たりの数値で考えます。
1アカウント(ユーザー)当たりの平均売上額です。ARPAが高いほどLTVの分子(売上)が大きくなるので望ましいですが、単価を上げすぎると離脱(チャーン)リスクもあるため、競合や顧客ニーズとのバランスを見ながら判断します。
(計算式)ARPA=一定期間の売上額÷アカウント(ユーザー)数
顧客1人を獲得するために必要なコストです。低いほど良いですが、単純にコストを下げると質の低いリード獲得につながる場合もあるので注意が必要です。LTVとのバランス(LTV÷CAC)で採算性を確認します。
(計算式)CAC=新規顧客獲得にかかったコストの総額÷新規顧客獲得数
解約率のことを指します。低いほどLTVは伸びます。業界平均と比べて高い場合は、サポート体制や顧客体験の改善が必要となります。
(計算式)チャーンレート=(解約した顧客数÷同期間に契約した顧客総数)×100
ユニットエコノミクスとは、新規顧客1人を獲得するのにかかったコスト(CAC)に対して、その顧客が生涯にもたらす価値(LTV)がどれだけ上回っているかを示す指標です。
(計算式)ユニットエコノミクス=LTV÷CAC
ユニットエコノミクスは一般的に3~5が適正値とされています。3より低い場合は改善の余地があります。また、1未満であれば、新規顧客を獲得すればするほど赤字になるため、早急に事業の見直しが必要です。5よりも高い場合は、新規顧客獲得の機会損失がないか確認してみましょう。
見込み顧客の状態を表す指標です。それぞれ、MQLはマーケティング活動によって獲得され、興味・関心があると判断されたリード、SQLは営業部門が商談に進めるべきだと判断したリードを指します。MQLが多くてもSQLに進まなければ意味がなく、自社の営業フローに沿って定義を明確化し、MQLからSQLに進む割合で健全性を判断します。
1件の成果(コンバージョン)にかかった広告費です。低いほど良いですが、単純に下げると質の低い顧客獲得になることもあります。LTVから差し引いて利益を計算するのがポイントです。
(計算式)CPA=広告費用÷コンバージョン数
投資収益率です。100%を超えれば黒字となり、数値が低い場合は、投資配分や効率を見直す必要があります。
(計算式)ROI=(利益÷投資額)×100
広告費用対効果です。損益分岐点ROAS以上であれば利益が出ます。
(計算式)ROAS=(広告売上÷広告コスト)×100
ROASを活用するためにはまず損益分岐点ROASの把握が必要です。
損益分岐点ROAS=(単価÷(単価-原価))×100
損益分岐点ROASの数値を下回ると赤字になります。この損益分岐点をもとに、目標ROASを設定しましょう。但し、目標ROASが高すぎると、新規顧客獲得の機会損失が起こることもあるので、注意が必要です。
LTV向上につながる施策にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは5つの視点から紹介します。
クロスセル(関連商品の提案)やアップセル(上位商品の提案)、商品の付加価値向上によって1回の取引当たりの売上を増やします。これにより、顧客1人から得られる収益が拡大します。
ポイントプログラムや、顧客の購買サイクルに合わせた定期的なメール施策などで購入サイクルを短縮し、リピートを促すことで生涯の購入回数を増やします。
1人当たりのLTVに直接は影響しませんが、紹介プログラムや口コミ施策によって顧客数を増やせば、顧客全体でのLTVの総額は大きくなり、事業全体の成長につながります。
解約率(チャーンレート)を下げ、顧客が長く利用し続ける仕組みを整えます。サポート体制の充実や、長期継続者への特典の提供などが有効です。
LTVが高くても、CACが大きければ利益は残りません。広告の効率化やカスタマーサポートの自動化(チャットボットなど)でコストを下げることが、ユニットエコノミクスの改善につながります。
LTV向上に役立つツールとして、AI、CRM、MAがあります。それぞれの特徴などを見ていきましょう。
AIは大量のデータを高速に処理し、パターンを学習して自動で判断・予測を行える技術です。人間では見落としやすい傾向や相関関係を発見できる点が大きな特徴です。マーケティング領域では、この特性を生かして顧客データを分析し、一人ひとりに最適な提案やサポートを行うことが可能になります。顧客との接点においては、チャットボットとして活用することでサポート体制を充実させることもできます。
CRMは顧客情報を一元管理するツールです。顧客情報には住所や連絡先だけでなく、購入履歴や問い合わせ履歴、対応記録なども含まれています。CRMを活用し、顧客情報の見える化や営業の効率化を図ることで、顧客への対応がスムーズになり、より信頼関係が深まることが期待できます。これは継続期間の伸長(チャーンレート低下)に大きく寄与します。
MAは顧客への情報発信や分析など、マーケティング活動を自動化するツールです。顧客へ適切なタイミングでのメール配信や顧客のニーズあった商品提案はもちろんのこと、Webサイトの閲覧履歴の分析や施策の効果測定にも活用し、購入頻度や単価の向上を効率的に支援します。
ここでは、サブスクリプションやOMOの仕組みを活用して、顧客との関係性を深めようとした企業の事例を紹介します。
ある飲料メーカーは、家庭向けにビールサーバーを活用したサブスクリプションサービスを展開しています。顧客は銘柄を自由に選んだり、追加注文や配送スケジュールを調整できたりする仕組みになっており、買い忘れを防ぎながら継続的な利用を促すことができます。
こうした柔軟なサービス設計により、長期的な顧客接点の強化を目指しています。 この事例は「購入頻度」と「継続期間」を伸ばすことでLTVを高めるアプローチです。
あるアパレル企業は、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)を取り入れ、実店舗とECを連携させた取り組みを進めています。公式アプリでは、起動するだけでポイントが貯まったり、実店舗・ECの両方で使えるクーポンが配布されたりします。
また、店舗のレシートに印字されたQRコードを読み取るとEC特典を得られ、ECで購入した商品を店舗で受け取れる仕組みを構築。こうした取り組みによって、顧客の利用機会を増やし、継続的な関係づくりにつなげています。この事例は「購入頻度」と「顧客接点の拡大」に働きかけることで、LTV向上につなげています。
LTVは顧客との関係を長期的に捉え、マーケティングの成果を測るうえで欠かせない指標です。事業のPDCAの各プロセスにLTVを組み込み、継続的に改善していくことで、収益性の高いビジネスモデルを築くことができます。
さらに、AI、CRMやMAなどのツールを活用すれば、顧客データの分析やコミュニケーションの自動化が進み、効率的かつ効果的にLTVを高めることが可能です。競争環境が激しく変化するいま、LTVを重視した戦略を取り入れることが、ビジネスの持続的な成長につながります。