事業の目標達成に向けて、何から手をつければ良いか迷っていませんか?あるいは、設定した目標がなかなか達成できず、具体的なアクションに繋がっていないと感じることはないでしょうか。
本記事で解説するCSF(Critical Success Factors:重要成功要因)は、まさにそうした課題を解決し、ビジネスを成功へと導くための羅針盤となるものです。KGIやKPIといった経営指標と密接に関わりながら、具体的な行動を明確にし、効率的な事業運営を実現します。
この記事では、CSFの基本的な概念から、KGI・KPIとの違い、そしてPEST分析やSWOT分析といった多角的な視点を用いた効果的な設定方法まで、具体的に解説していきます。
CSF(Critical Success Factor)は法人の経営や事業における目標を達成するうえで、重要な影響を与える要因を指します。KSF(Key Success Factor)やKFS(Key Factor for Success)とも略されます。
CSFは法人が3年~5年単位で策定する経営計画に合わせて作成されます。CSFで示された項目をクリアすることにより、目標の達成に近づきます。
CSFは組織の事業戦略と密接に関わることから、法人全体の経営戦略、または部門ごとの事業戦略で用いられます。プロジェクト単位での活用も可能ですが、適切な手法になるとは限りません。
CSFは、3つの理由で注目されています。重視される理由も含めて、項目ごとに確認していきましょう。
CSFを定めることで、潜在的なリスクを早期に特定して対策を講じることが容易になり、目標達成に向けてなにを行えばよいかわかります。組織のパフォーマンスを評価するための基準となり、進捗状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて戦略を調整することができます。目標達成につながる取り組みを推進し、目標達成を阻害する取り組みを避けることで、業績のアップやより良い事業運営を実現しやすくなります。
CSFを明確にすることで、優先すべき項目が明確になるため組織は最も重要な活動やプロジェクトにリソースを集中させることができます。これにより、限られた資源を最大限に活用し、無駄を減らせます。重要な成功要因を特定することで、どの部門やプロジェクトにどれだけの資源を配分すべきかが明確になります。明確にした指針に沿うことで資源の配分を効率的にし、全体のパフォーマンスを向上できます。
施策の評価に用いる項目は、少ないほど管理コストを減らせます。CSFの設定で評価に用いる項目を絞り込め、意思決定に必要な情報がわかります。重複した評価や不必要な評価を排除することにより、管理プロセスが効率化され、コスト削減につながります。目標に向けた管理コストを削減しつつ、着実に目標達成に向けて前進できます。
CSFの適切な設定には、4つのステップが必要です。それぞれのステップで行うべき内容をご確認ください。
CSFを設定する際には、現状の分析と正確な把握が重要です。以下に、よく用いられる手法を一覧にしました。
分析手法 | 概要 |
---|---|
PEST分析 | 政治・経済・社会・技術の観点で、外的要因が自社に与える影響を分析するフレームワーク |
STP分析 | 市場の理解に関するフレームワーク。セグメンテーション(市場の区分け)、ターゲティング(ターゲットの絞り込み)、ポジショニング(市場における商品やサービスの位置付け)の順で分析する。 |
SWOT分析 | 自社の内部環境における強みと弱み、外部環境における機会と脅威の要素に分けて分析する。 |
3C分析 | 市場・顧客、競合、自社の観点から、ビジネスの遂行に関する環境を分析する。自社の強みや弱みを明確にできる。 |
5F(ファイブフォース)分析 | 新規参入の脅威、競合他社の脅威、代替品の脅威、顧客の交渉力、供給者の交渉力の観点で、自社に関する競争要因を抽出する。 |
バリューチェーン分析 | 自社の事業を「主活動」と「支援活動」に分け、企業価値向上への貢献度を活動ごとに評価する。 |
現状の分析結果をもとに、課題をどのような方法で解決するか検討します。解決方法のピックアップには、情報をカードや付箋などを用いて可視化し、複数のグループにまとめて関係性を明らかにするKJ法の活用が有効です。複数のグループの特徴と関係性をラベリング・図解化した後、整理された情報をもとに考察を行い、文章化して結論や新しいアイデアをアウトプットします。
KJ法によるアウトプットをもとにして、自社に合うCSFを設定しましょう。重要な項目を厳選したうえで優先順位を決めることにより、施策のスムーズな実施できます。設定した項目と内容は、法人の内部で共有しましょう。
CSFに基づく施策を行った後は、結果の評価も忘れずに行いましょう。設定したCSFが不適切である、事業の成功に関する重要な要因が見つかった場合は、CSFを変更する必要があります。
事業の成功要因は、事業環境の変化によりしばしば変わることにも注意が必要です。施策がうまくいっている場合でも定期的にCSFを見直し、必要に応じて変更しましょう。
ここからは、CSFの種類と取り上げられやすい項目を解説します。
CSFには、5つの種類があります。それぞれの特徴を、以下の表にまとめました。
種類 | 概要 |
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業界動向 | 中長期的なトレンドの変化など、業界の動向を踏まえたCSF |
競合他社 | 競合他社よりも優位に立つ、競合他社と差別化する目的で設定されるCSF |
事業環境 | 自社が直接関与できない、継続的な要因に関するCSF。政策や法令の改正、経済情勢などがその一例です。 |
管理職 | 管理職を対象として設定される、能力や役割に関するCSF |
一時的な要因 | 偶然起こる事象や一時的な影響で終わる要因に関するCSF。自社の引っ越し、災害やパンデミックの発生がその一例です。 |
5つの種類それぞれについて、CSFを設定する必要はありません。課題とする項目を選んだうえで、CSFを決めましょう。
CSFは、法人の事業内容や目標に合わせて設定できます。以下の項目は、その一例です。
CSFは、法人の事業内容や経営方針によって変わります。他社で業績アップに寄与したCSFが、そのまま自社で役立つとは限りません。法人の事情を踏まえたうえで、適切なCSFを設定しましょう。
CSFは経営に関する他の用語と組み合わせて、または区別して使われる場合があります。ここからは関連する用語との相違点や、組み合わせて使われる手法を確認していきます。
経営ではCSFのほかにも、さまざまな用語が用いられます。代表的な用語との相違点を、以下の表でご確認ください。
用語 | 特徴とCSFとの相違点 |
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KGI(重要目標達成指標) | KGIはビジネスのゴールを示す最終目標で、定量的に設定される。CSFは、KGIの達成につながる要素 |
KPI(重要業績評価指標) | KPIはKGIの達成につながる中間目標で、定量的に測定される。CSFはKPIを設定する材料となる。またCSFは、定量的に定める必要が無い |
KPA(重要業績分野) | 組織の成功を左右する項目。CSFを設定する際の参考となる |
CSFは以下のように、他の手法と組み合わせて活用できます。
CSFは経営における重要な用語ですが、一つの手法に過ぎません。目的に応じて複数の手法を組み合わせることは、より良い経営を実現するコツです。
CSFは現状に基づく情報をもとに、取るべき行動や施策を示す重要な項目です。適切なCSFの設定と事業運営により、顧客や社会からの支持を得やすくなります。望ましい未来も実現できるでしょう。
CSFは経営と密接な関係がありますが、はじめから完璧に定める必要はありません。まずはCSFを設定し、より良い経営や事業運営の実現に向けて踏み出しましょう。