電子マネーとは?特徴や課題、他のキャッシュレス決済との違いを解説

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さまざまな店舗や施設で使える、代表的な決済手段である、電子マネーの利用経験がある方は多いでしょう。公共交通機関の利用や店舗での物品購入など、ビジネスの用途でもよく使われます。現金を持ち合わせていなくても支払えることは魅力の一つです。

一方で令和の時代は、QRコード決済など多種多様な支払手段があります。電子マネーと他のキャッシュレス決済には、どのような相違点があるのでしょうか?

この記事では電子マネーの特徴や活用するメリット、課題を中心に、キャッシュレス決済やキャッシュレス社会も含めて解説します。電子マネーの活用をお考えの方は、ぜひお読みください。

電子マネーとはなにか?

電子マネーとは電子データ化された金銭的価値を使って、支払を行う決済手段を指します。例えば1,000円をチャージした場合、電子マネーに1,000円分の金銭的価値が記録され、1,000円までの範囲なら電子マネーで決済することが可能になります。

電子マネーの支払方法は3種類

電子マネーの支払方法は、以下の3種類に分かれます。

支払方法 特徴
前払い
(先払い)
事前に金銭的価値(現金やポイントなど)のチャージを要する。チャージ残高の範囲内で決済できる。
後払い 決済した金額が後日請求される。事前にクレジットカードと紐づけするケースが多い
即時払い 決済と同時に、口座から即時引き落とされる。

支払方法によって、使い勝手は大きく異なります。使用する予定の電子マネーがどの支払方法に対応するか、事前に確認してから使いましょう。

代表的な電子マネー

電子マネーは複数の種類があり、さまざまな法人から発行されています。代表的な電子マネーは以下です。

種類 該当する電子マネーの例
交通系 全国交通系ICカード(Suica、PASMO、ICOCA、はやかけんなど)
流通系 楽天Edy、WAON、nanaco
クレジットカード系 QUICPay、iD
地域電子マネー 富士山Gコイン、MORIO Pay、アクアコイン

キャッシュレス決済とはなにか?

キャッシュレス決済とは、現金を使わずに支払を済ませる決済方法です。以下のように、さまざまな種類があります。

  • 電子マネー
  • クレジットカード
  • デビットカード
  • QRコード決済
  • プリペイドカード(QUOカードや図書カードなど)

上記のとおり、電子マネーもキャッシュレス決済の一つです。

電子マネーはキャッシュレス社会の一翼を担う決済手段

キャッシュレス社会とはキャッシュレス決済が普及し、現金を介さなくても決済を行える社会を指します。電子マネーは社会の幅広い場面で使われており、現金の持ち運びや小銭のやり取りの手間をなくし、スピーディーな支払いを可能にすることで、私たちの日常生活に大きな利便性をもたらしています。交通機関の利用からコンビニエンスストアでの少額決済、さらには自動販売機やコインパーキングに至るまで、その利用シーンは多岐にわたり、もはや生活に欠かせない存在となっています。

法人がキャッシュレス決済の手段に電子マネーを選ぶメリット

電子マネーはその簡便性と利用履歴の明確さから、企業や組織における経費精算や小口決済の効率化にも貢献しうる可能性を秘めています。特に、従業員の立て替え払いの削減や経費処理の透明性向上といった点において、そのメリットは注目に値します。ここからは法人が電子マネーを利用するメリットを詳しく解説します。

経費精算の効率化

法人が電子マネーを導入する最大のメリットの一つは、経費精算業務の効率化です。従来の現金精算では、従業員が立て替えた費用について、領収書を保管し、精算書を作成し、経理担当者が内容を確認して現金を払い戻すという一連の手間が発生していました。しかし、電子マネーを利用すれば、すべての利用履歴がデータとして自動的に記録・可視化されます。これにより、従業員はアプリやWebサービスを通じて簡単に利用明細を確認・提出できるようになります。経理部門においても、データ連携によって会計システムへ自動で取り込みが可能となり、入力作業や照合作業が削減されるため、経費精算にかかる時間と労力の削減に繋がります。

小口現金の管理コスト削減

企業が社内に小口現金を常備している場合、その管理には手間とコストがかかります。現金の補充、残高確認、金庫のセキュリティ管理、経理処理など、多岐にわたる業務が発生します。電子マネーを導入し、従業員が小口の支払いに利用することで、小口現金の必要性を最小限に抑えることができます。これにより、現金管理に伴う時間的・人的コストだけでなく、紛失や盗難のリスクも低減できます。

経費の透明性・ガバナンス強化

電子マネーの利用履歴はデジタルデータとして詳細に記録されるため、経費の透明性を向上させます。いつ、誰が、どこで、何に、いくら使ったのかが明確になり、不正利用や私的利用のリスクを軽減できます。従来の現金精算では不明瞭になりがちだった支出も、電子マネーであれば利用目的や金額を追跡することが可能です。監査時においても、必要な情報を迅速かつ正確に提示できるため、監査対応の円滑化にも貢献します。経費に関するコンプライアンス遵守の体制を構築する上で、電子マネーは強力なツールとなります。

従業員の利便性向上

企業が電子マネーを導入することは、従業員にとっても大きなメリットをもたらします。まず、業務上の立て替え払いが減るため、従業員自身の金銭的な負担や一時的な持ち出しが解消されます。さらに、領収書を保管したり、精算書を手書きで作成したりする手間もなくなり、経費精算にかかるストレスや時間を大幅に軽減できます。これにより、従業員は本来の業務に集中でき、生産性の向上にも繋がります。

セキュリティの向上(現金持ち運びリスクの低減)

現金を持ち運ぶことは、紛失や盗難のリスクを常に伴います。特に、多額の現金を取り扱う企業や、従業員が外出先で現金を扱う機会が多い場合、そのリスクは無視できません。電子マネーを導入することで、現金の持ち運びを最小限に抑えることが可能になります。万が一、カードやスマートフォンを紛失した場合でも、利用停止手続きを迅速に行うことで被害を抑えられます。企業資産の保護だけでなく、従業員が安心して業務に取り組める環境を提供できます。

法人がキャッシュレス決済の手段に電子マネーを選ぶデメリット

電子マネーは、メリットばかりではありません。以下のデメリットもあります。

  • 電子マネーによっては、デポジットが必要
  • 使える地域や店舗が限られる場合がある
  • カード型の電子マネーは、枚数が増えると管理の手間も増える
  • 悪意ある人が拾うと、電子マネーの残高を勝手に使われてしまう
  • 従業員による不正利用や私的利用に遭うリスクがある

電子マネーを利用する際には、上記の項目に注意することが求められます。

主なキャッシュレス決済と電子マネーとの相違点

現代では電子マネー以外にも、さまざまなキャッシュレス決済の手段が普及しています。ここからは主な3種類のキャッシュレス決済と、電子マネーとの相違点を確認していきましょう。

クレジットカード

クレジットカードは、後払い(ポストペイ)形式で、高額決済やオンライン決済、海外出張時の利用に強みを発揮します。法人カードの場合、利用明細が一本化され、経費精算の効率化や管理の透明性向上に貢献します。しかし、利用限度額の設定や審査が必要であり、従業員に持たせる場合の与信管理や利用ルール策定が重要となります。また、小口決済ではサインや暗証番号入力の手間が生じ、スピーディさに欠ける場合があります。

QRコード決済

QRコード決済は、スマートフォンアプリを利用した決済手段で、日本国内で急速に普及しています。導入コストが比較的低く、個人間の送金やクーポン利用など、マーケティングとの連携がしやすいのが特徴です。法人利用では、従業員の小口決済手段として活用できますが、利用にはスマートフォンが必須であり、従業員への周知や利用環境の整備が必要となる場合があります。また、利用履歴の連携や経費精算システムとの統合が、電子マネーやクレジットカードほどスムーズではないケースも存在します。

デビットカード

デビットカードは、決済と同時に銀行口座から引き落とされる即時払い(即時ペイ)形式です。口座残高の範囲内で利用できるため、使いすぎの心配がなく、与信審査も不要です。法人利用においては、リアルタイムで支出を把握できるため、資金管理がしやすいというメリットがあります。しかし、口座残高以上の決済はできないため、突発的な高額出費には対応しにくい側面があります。また、電子マネーのようなチャージの手間がない反面、小口決済におけるスピーディさでは電子マネーに劣る場合があります。

キャッシュレス社会における電子マネーの課題

電子マネーは、その利便性からキャッシュレス社会の推進に大きく貢献していますが、一方で、その普及と利用拡大にはいくつかの課題も存在します。これらの課題を認識し、適切な対策を講じることが、電子マネーをより効果的に活用するために不可欠です。

チャージの手間と上限金額

電子マネーの多くは、利用前に現金をチャージする必要があります。これは、特に高額な買い物をする際や、残高不足で決済できない場合に手間となることがあります。また、各電子マネーにはチャージできる上限金額が設定されており、一度に多額のチャージができないことや、累計チャージ額に制限がある場合もあります。法人利用においては、従業員が頻繁にチャージする手間や、高額な経費精算に対応しきれないケースが課題となることがあります。

利用可能店舗の限定性

電子マネーの種類によっては、利用できる店舗や施設が限られている場合があります。特に地域性の強い電子マネーや、特定のサービスに特化した電子マネーでは、全国どこでも使えるわけではありません。これにより、従業員が出張先や地方で電子マネーを利用しようとした際に、決済できないといった不便が生じる可能性があります。

紛失・盗難時のリスクと補償

電子マネーをチャージしたカードやスマートフォンを紛失・盗難した場合、残高が不正利用されるリスクがあります。現金と同様に、一度使われてしまうと取り戻すのが難しいケースも存在します。法人利用においては、従業員に持たせた電子マネーの紛失・盗難時の対応ルールや、補償制度の有無を確認しておく必要があります。

災害時や通信障害時の利用制限

災害や通信障害が発生した場合、電子マネーを含むキャッシュレス決済システムが利用できなくなる可能性があります。これは、電力供給や通信インフラに依存しているためです。現金を併用することの重要性は、このような非常時に再認識されます。

電子マネーはビジネスを加速させる決済手段。これからの動向に注目を

本コラムでは、電子マネーがキャッシュレス社会の一翼を担う決済手段であること、特に法人が電子マネーを導入することで得られる多大なメリットについて深く掘り下げてきました。経費精算の効率化から小口現金の管理コスト削減、さらには経費の透明性向上やガバナンス強化に至るまで、電子マネーは現代ビジネスにおける様々な課題解決に貢献し得る可能性を秘めています。

もちろん、チャージの手間や利用可能店舗の限定性、紛失時のリスクといった課題も存在します。しかし、これらの課題は技術の進化やサービスの拡充によって着実に改善されており、企業が電子マネーを導入・運用する上での障壁は年々低くなっています。むしろ、利用履歴の明確さやスピーディな決済といった電子マネーならではの強みは、他のキャッシュレス決済手段にはない独自の価値をビジネスにもたらします。

企業が持続的に成長し、競争力を維持していくためには、常に最新の技術やサービスを取り入れ、業務プロセスの最適化を図ることが不可欠です。電子マネーの導入は、単なる決済手段の変更に留まらず、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、生産性向上に寄与する戦略的な投資となり得ます。

未来のビジネスをよりスマートに、より効率的にするために、電子マネーの活用をぜひご検討ください。