サービスデスクとヘルプデスクには、どんな違いがあるのかわからない方も多いのではないでしょうか。実際、サービスデスクとヘルプデスクは似たような役割を担っているため、混同されることもしばしばあります。
本記事ではサービスデスクとヘルプデスクの業務内容を詳しくみていくことで、それぞれの業務の違いをわかりやすく解説します。また、サービスデスクやヘルプデスクの業務効率を上げるためのツールについても紹介します。
サービスデスクとヘルプデスクの業務内容には大きな違いが3つあります。1つ目は「問い合わせをクローズまでワンストップで対応するか」、2つ目は「対応する問い合わせに特定の範囲や分野があるか」、3つ目は「情報発信を行うか」です。
ここからはサービスデスクとヘルプデスクの業務内容の違いを詳しくみていきましょう。
サービスデスクとは、顧客や従業員からのさまざまな問い合わせや要請に対応する窓口です。受け付けた事案は、クローズまでサービスデスクが一貫して担当します。解決できない事案については、専門の部署やスタッフへエスカレーションすることもあります。解決策や結果を質問者に報告するのも、サービスデスクの役割です。
問い合わせ内容や対応履歴の蓄積・管理やナレッジの共有や活用も行い、FAQの公表や更新といった情報発信をする場合もあります。
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービスマネジメントのための国際的なフレームワークのことで、ITサービスの設計、開発、運用、改善における成功事例をまとめたガイドラインです。ITILでは、サービスデスクをインシデント管理、問題管理、変更管理といったITサービスマネジメントの中心的機能の一つと位置づけており、SLA(Service Level Agreement)に準ずる運用を行う役割を担うとされています。
ヘルプデスクとは、顧客や従業員からの特定の範囲・分野におけるトラブルや質問を受け付ける窓口です。対応範囲が比較的狭く、技術的なトラブルに特化している場合が多いです。対象外の事案については、対応できる部署を案内します。
サービスデスクは一般的にローカルサービスデスク、センターサービスデスク、バーチャルサービスデスク、フォロー・ザ・サンの4つに分類されます。分類の基準はサービスデスクを置く物理的な場所です。
ローカルサービスデスクは、顧客に近い場所や顧客のオフィスに設置するサービスデスクです。顧客との距離が近いため、直接現地で迅速に対応できます。その反面、物理的な拠点を用意し、さまざまな案件に対応できる人員を拠点ごとに常駐させる必要があります。
センターサービスデスクは、本社など一つの拠点ですべての顧客をサポートします。情報を一元管理できるため、各地にサービスデスクの設置が不要です。ローカルサービスデスクと比較すると、コストや必要人員が抑えられます。
バーチャルサービスデスクは、サービスデスクを一つの拠点にまとめ、各地の人員をネットワークでつなぎます。バーチャルサービスデスクでは、在宅勤務も可能なため、物理的な各地の拠点は不要です。
グローバル展開をしている場合、2つ以上の海外の拠点にサービスデスクを置くことで、時差を利用し夜勤なしで24時間365日対応が可能になるサービスデスクをフォロー・ザ・サンといいます。時間がかかる案件もノンストップでサポート可能です。言葉や文化、ライフスタイルが異なるため、ルールの徹底や相互理解が欠かせません。
ヘルプデスクには社外ヘルプデスクと社内ヘルプデスクの2種類があります。
社外ヘルプデスクは、顧客からの問い合わせに対応します。社外ヘルプデスクで対応する事案は、範囲や分野が限定されています。対応範囲や分野は商品やサービスの問い合わせのほか、トラブルやクレームの初期対応など、企業によりさまざまです。
対象範囲外の事案や技術的な専門知識を要する事案については、該当する部署を案内します。企業によっては、コールセンター業務と兼務することもあります。かつての社外ヘルプデスクでは、電話対応がメインでしたが、近年はチャットシステムを利用した対応が増えています。
自社従業員からの問い合わせに対応するのが、社内ヘルプデスクです。社内システムの操作方法や技術的な問い合わせ、トラブル時の対応も担当します。マニュアル作成やOA機器のメンテナンス、ソフトウェアやOSのインストールや管理なども業務に含まれます。そのため、社内ヘルプデスクは情報システム部門に設置される場合が多いです。
サービスデスクを置くことのメリットとして、次のようなものがあります。
顧客からの問い合わせやトラブル、インシデント管理などを顧客とコミュニケーションを取りながら丁寧に解決することで、顧客に安心感と信頼感を与えることができます。手厚いフォローは、顧客満足度向上にも役立つでしょう。
また、顧客の要望などを直接聞く貴重な機会となります。顧客や従業員の生の声は、商品やサービスの改善すべき点の気付きにもつながるため、サービス水準の向上も期待できます。
顧客からの問い合わせやトラブル内容と解決までの経緯などを蓄積しデータ化することで、マニュアルやFAQのブラッシュアップに活用できます。その情報を共有することで、業務の属人化を防止する効果も期待できるでしょう。また、蓄積した情報を分析・フィードバックすることで、マーケティング戦略に生かすことも可能です。
サービスデスクで対応した情報を一元管理し、マニュアル化することで従業員の教育コストの削減が期待できます。システムトラブルの対応、IT機器の障害や技術サポートのような専門性の高い問題解決もサービスデスクの業務に含まれるため、システム担当に問い合わせが集中しません。各部署の本来の業務を遂行できるため、業務効率の向上が見込めます。
サービスデスクやヘルプデスクでは、コミュニケーション能力と的確で迅速な対応が求められます。また、サービスデスクやヘルプデスクで受け付けた事案について、情報の共有・フィードバックして活用することで得られるメリットがあります。
顧客や従業員からの問い合わせに直接対応するため、コミュニケーション能力は不可欠です。事案解決のためには、相手が伝えたい内容を丁寧に聞き取り、しっかりと理解する必要があります。また、こちらが伝えたい内容が、誤解なく伝わるようにしなければなりません。
サービスデスクやヘルプデスクでは的確で迅速な対応が求められます。特に顧客と直に接する社外対応の場合、対応の仕方が企業イメージに直結するため、相手に寄り添った丁寧な対応を心がける必要があるでしょう。
問い合わせやトラブル対応で得られた情報は、社内で活用してこそ価値があります。そのためには、共有できるように情報のデータベース化が必要です。データベース化は的確で迅速な対応にもつながります。また、事案の解決策や改善方法といった情報をフィードバックすることで、より良い商品・サービスの提供や社内業務の効率化が期待できます。
担当者の業務負担の軽減には、支援ツールの活用やチャットボットの導入が有効です。業務のDX化推進やITシステムの複雑化、リモートワークの増加により、サービスデスクやヘルプデスクに寄せられる事案は、増える傾向にあります。それにともない担当者の業務負担も大きくなります。負担が大きくなりすぎると、離職率が上がる原因になりかねません。
業務負担を軽減するには、支援ツールの活用がおすすめです。情報の管理や共有、データの収集や分析など、多くの機能が搭載されているさまざまな支援ツールが提供されています。提供形態もオンプレミス型とクラウド型があります。
支援ツールをうまく活用するためには、事前に必要な機能を洗い出し、優先順位を設定しておくとよいでしょう。メンテナンスに手間がかからないことや拡張性に富んでいることも判断の基準にできます。ITサービスでは、システム運用にITILを取り入れる企業が増えています。ツール選びに迷った場合は、ITILに準処したツールを優先するのも1つの手です。
楽天モバイルの法人向けサービスが提供する、法人向け生成AIサービス「Rakuten AI for Business」では、アップロードしておいたファイルを参照することで、AIが回答を生成できる機能があります。社内ヘルプデスクとして、簡易的なFAQシステムとして活用可能です。クラウドで運用するため、初期費用がかからず、ランニングコストも抑えることができます。
法人のお客様の様々な企業活動を支援する生成AIサービス。
法人向け生成AIチャット機能では、職種別のプロンプトテンプレートや社内のドキュメント連携(RAG)機能など、ビジネス利用に便利な機能を多数実装し、業務の効率化に貢献します。AIに無断でデータを学習されないセキュアな環境の下、使いやすさを重視したUIにより、どなたでも安心してご利用いただけます。
チャットボットを導入し、FAQシステムを構築することで、顧客や従業員の自己解決率の向上が見込めます。FAQシステムを構築していない場合、同じような問い合わせに都度対応する必要があります。加えて、担当者の就業時間外には対応できません。チャットボットを導入することで、よくある質問については、24時間365日対応が可能になります。
サービスデスクとヘルプデスクの違いは問い合わせなどにどこまで対応しているか、問い合わせ内容に対応制限があるか、情報発信を行うかという部分にあります。しかし、顧客や従業員をサポートし、顧客満足度や業務効率の向上に大きく関わる点は、サービスデスクとヘルプデスクの共通点といえます。
今後、担当者の負担を軽減しつつ、効率よく運用するために、支援ツールやチャットボットなどの活用が不可欠となるでしょう。