RFPとはなにか?目的や作り方、作成のポイントまでわかりやすく解説

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企業で活用するシステムは、発注者が積極的に要件を提示したうえで、良い提案を行ったIT企業を選んで導入するケースがみられるようになっています。この際に使われる「RFP」は、IT企業から適切な提案を受け取るうえで、重要な役割を担う書類です。

この記事ではRFPの意味や目的、メリットやデメリットに加えて、RFPの作り方や含める項目などを解説します。「初めてRFPを作る」「RFPの作り方やポイントを確認したい」という方は、ぜひお読みください。

RFPとはなにか?目的や作り方、作成のポイントまでわかりやすく解説

RFPとはなにか?

RFPとはなにか?

RFP(Request for Proposal)は、日本語で「提案依頼書」と呼ばれます。システムに対して求める要件や対象の業務内容などを記したうえで、SI企業やベンダーなどのIT企業に示します。このためRFPは、発注者側で作成すべき書類です。RFPを受け取った企業は記載されている内容を確認したうえで、提案するための材料とします。

RFPを作る目的

RFPは発注者側の要望を正確に伝え、自社に合ったシステムの提案を受ける目的で作成します。口頭のみのやり取りでは、発注側と受注側の認識のズレがもとで、希望とかけ離れたシステムを導入するおそれがあります。RFPには自社の課題や将来の希望、システムを導入する目的などを記すため、仕様のズレに基づくトラブルを防止することが可能です。

RFPに含める項目

RFPには、大きく7つに分けられる項目が含まれます。以下が代表的な項目です。

カテゴリ RFPに記載される項目の例
発注元となる、自社に関する情報 会社情報、事業概要、窓口となる部署や担当者名、連絡先
プロジェクトの概要 プロジェクトの目的、業務で抱えている課題、システム化の対象となる業務、現状のシステム構成、導入後のイメージ、導入までのスケジュールや本稼働の時期、依頼する範囲(スコープ)
システムに関する要件 機能要件、非機能要件(処理速度やUI、セキュリティなど)、使用する言語
委託業務に関する要件 フェーズごとの業務内容(要件定義、設計、開発、テスト、データ移行、教育、保守サポートなど)、物品などの提供や貸与
体制に関する要件 体制図、会議体、参画する要員のスキル
金額に関する要件 想定している予算、支払方法
選考の実施要領 提案書の作成要領や記載すべき内容、提出先、選考スケジュール、評価基準、オリエンテーションやプレゼンテーションを行う機会の有無
その他 契約内容、プロジェクトに関する制約事項

RFPを作るタイミング

RFPはシステム導入における一連の流れのなかでも、早期の段階で作る必要があります。システムを導入するプロジェクトが始まり、社外のIT企業に依頼することを検討し始めた時点が作成の目安です。

代表的なシステム開発の工程である「要件定義」や「設計」は、発注先のIT企業が決まった後に実施されます。RFPは要件定義や設計、発注先の選定よりも前の時点で作成し提示されなければなりません。

RFPの作り方・8つのステップを紹介

RFPの作り方・8つのステップを紹介

ここからはRFPを作るステップを、8つの項目に分けて解説します。作成の際には課題の把握や解決方法など、事前の準備が重要です。RFPを作った後の使い方も含めて、確認していきましょう。

プロジェクトの目的を定める

プロジェクトの目的を定めることは適切なRFPを作る第一歩ですから、初期の段階で明確にしておきましょう。自社がどのようなシステムを求めるかにより、受注者側に提示するRFPが変わります。この段階で業務やシステムのあるべき姿を示すことも、良い方法の一つです。

現状の課題を把握する

システムは、業務や経営の課題を解決するために導入します。情報を収集したうえで課題をしっかり把握しておきましょう。

課題を正確に把握するためには、幅広い部署や立場の方に対するヒアリングが欠かせません。現場の第一線で働く従業員はもちろん、管理職や経営層、情報システム部門など、さまざまな立場の方から情報を得ることがオススメです。

課題を解決する方法や、RFPに含める各種要件を定める

把握した課題をもとにして、解決方法を考えましょう。このとき現行のビジネスルールを前提としてシステムを導入すると、十分な効果を得られない可能性があります。業務の進め方や組織の変更を要するかなど、業務改革の観点で解決方法を考えることにより、システム導入による効果がアップします。

システムの導入目的や課題の解決方法が固まった時点で、RFPに含める項目や要件を決めましょう。それぞれの要件を「必須要件」と「あれば良い要件」に分け、優先順位をつけることをオススメします。また各要件の内容を明確にすることで、解釈の相違によるトラブルを防げます。

ベンダーやSI企業など、提案の依頼先となるIT企業の情報を収集する

RFPは、発注側の企業が作成・提示しなければなりません。このためRFPを提示する前の段階として、IT企業に関する情報収集が不可欠です。SI企業はもちろん、導入対象の業務に関するシステムを開発・販売する企業も含めて、幅広く情報を収集することが解説です。

RFPの文書を作成する

RFPに含める要件と提示先となるIT企業が決まったら、RFPの文書を作成しましょう。「RFPに含める項目」で解説した内容をベースに、導入するシステムや環境に即した項目を追加するとよいでしょう。作成にあたっては、簡潔・明確な記載を心がけることが大切です。

またRFPの提示後は、各IT企業から提案書が提出されます。各社の提案を評価し、発注先を選ぶ基準となる「評価基準」もこの段階で作成しましょう。

各社にRFPを提示する

RFPの作成が完了した後、IT企業に提示します。状況によっては、IT企業を集めて内容を説明する「オリエンテーション」を開催する場合があります。RFPの提示後、IT企業から質問が寄せられる場合もありますので、適切に回答することをオススメします。

各社から提案書や見積書を受領する

RFPを受け取ったIT企業は内容を確認して、提案書を作ります。指定した期日までに各社から提案書が順次送付されます。見積もりを依頼する「RFQ」も送付した場合は、見積書も提出されます。必要に応じて、提案者によるプレゼンテーションを実施します。

最も良い提案や金額を提示した企業と契約する

各社から受領した提案書や見積書をもとに、あらかじめ設定した「評価基準」に基づいて選考を行います。最も良い提案や金額を提示したIT企業を契約先として選びましょう。希望する内容と完全に一致していない場合は、必要に応じて内容や金額のすり合わせを行いましょう。

RFPを活用するメリット・デメリット

RFPを活用するメリット・デメリット

RFPの活用には、メリットとデメリットがあります。それぞれについて解説します。

RFPを活用するメリット

RFPの活用により、以下に挙げるさまざまなメリットを得られます。

  • 要件を明確に伝えられるため、自社にマッチする提案を受けやすい
  • 提案書のフォーマットが統一されるため、複数の提案を比較しやすい
  • プロジェクトが進んだ段階で、自社と発注先との間で認識の相違が起こりにくい
  • 無名だが実績や実力のあるIT企業を見つけやすい

RFPの導入によりプロジェクトがスムーズに進み、より良いシステムの導入が期待できます。選考結果によっては、これまで取引が無かったIT企業のシステムを活用できるかもしれません。

RFPを活用するデメリット

RFPを用いる場合は、「RFPをIT企業に提示して提案書を受け取り、発注先を選考する」というプロセスが増えます。RFPの作成に手間と時間を要することは、代表的なデメリットです。また、システムに関する検討開始から実際の開発に着手するまで日数を要することも、デメリットに挙げられます。

RFPを作成する3つのポイント

RFPを作成する3つのポイント

RFPは作成するだけでは、良い提案を受け取れるとは限りません。事業の発展に寄与する提案を受けるために押さえておきたいポイントは3つあります。各項目をよく確認し、より良いRFPの作成にお役立てください。

システムの提案に用いる情報をもれなく、明確に記載する

システムの提案に必要な情報は、もれなく明確かつ正確に記載しましょう。提案するIT企業は、RFPを熟読したうえで提案します。もしRFPの内容に漏れや誤り、明確でない点などがあると、適切な提案を受け取りにくくなってしまいます。

関連する部門と連携して作成する

RFPは、関連する部門と連携して作成しましょう。自部門だけで作ると、導入後に問題を起こすおそれがあります。

例えば情報システム部門だけでRFPを作成すると、現場の従業員にとって使いにくいシステムとなる可能性があります。一方で現場だけでRFPを作ると、使いこなせないほど多機能で高価なシステムや、社内のITルールに違反するシステムを導入するリスクがあります。

実現可能な内容を記載する

RFPに記載する内容は、実現可能な内容かどうかを吟味したうえで決めましょう。システムで実現できないほど高い要求など、非現実的な内容を記載してしまうと、提案が1件も無い事態に陥るおそれがあります。提案が行われた場合でも、想定を大きく上回る価格になってしまう可能性があります。

RFPと関連する用語との相違点

RFPと関連する用語との相違点

RFIやRFQは、RFPと関連し比較されがちな用語です。ここでは、それぞれの定義やRFPとの相違点を説明します。

RFIとの相違点

RFI(Request for information)は「情報提供依頼書」と呼ばれる、システムや企業に関する情報の提供を求める書類です。発注を検討中の企業が作成して、ベンダーやSI企業などのIT企業に提示します。あくまでも情報収集に用いる書類であるため、受け取ったIT企業が提案を行わなくてよいことはRFPとの相違点です。

RFIに記された内容は、発注の検討に用います。RFPはRFIで得た情報をもとに作成されるため、RFIはRFPよりも先に提示されなければなりません。

RFQとの相違点

RFQ(Request for Quotation)は、「見積依頼書」と呼ばれます。IT企業に対して見積もりを依頼する書類です。システムを導入する一連のプロジェクトにおいて、どれだけの費用が必要か把握する目的で使われます。金額に絞ってフォーカスする書類であることは、RFPとの相違点です。

RFPは業務に適するシステムを導入する近道

RFPは業務に適するシステムを導入する近道

RFPを活用することで、業務にフィットするシステムを導入しやすくなります。RFPの作成には、多少なりとも時間と労力を要します。情報収集や準備を万全に行うことは、成功の秘訣です。RFPを活用して、業務の改善や業績アップにつながるシステムの導入につなげましょう。