個人事業主でも持続化補助金を受け取れる?条件や必要な書類、申請の注意点を解説

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持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)は、事業者の経営を後押しする国の補助金です。事業者のなかには、個人で事業を営む「個人事業主」もいます。持続化補助金を受け取れるかどうか知りたい個人事業主の方も、多いのではないでしょうか?持続化補助金は個人事業主も対象ですが、業種は限定されており、申請には条件があります。
この記事では個人事業主を対象として、持続化補助金を申請する条件や必要な書類、申請する際の注意点などを解説します。
個人事業主でも持続化補助金を受け取れる?条件や必要な書類、申請の注意点を解説

個人事業主が持続化補助金を受け取るための条件

個人事業主が持続化補助金を受け取るための条件

補助金のなかには、法人に限って申請できるものもあります。持続化補助金は、商工業者であれば個人事業主も申請でき、事業運営に生かすことが可能です。

持続化補助金を受給する条件は、申請者の条件と事業に関する条件の2種類に分かれます。

申請者に関する条件

持続化補助金を申請する個人事業主が満たすべき主な条件は以下です。

  • 商工業者であること(農業・林業・水産業・医師・歯科医師・助産師は対象外)
  • 過去3年分について、課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと 
  • 常時使用する従業員数が20人以下。但し商業またはサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)に該当する場合は5人以下

事業に関する条件

持続化補助金の申請には、補助金を使って営む事業(以下、「補助事業」と略)に関する条件もあります。以下が主な条件です。

  • 販路開拓等、または販路開拓等の取り組みとあわせて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みであること
  • 補助事業は、あらかじめ定める補助事業実施期間内に終了すること
  • 補助事業の終了後、おおむね1年以内に売上につながる見込みであること
  • 国が助成する他の制度と同一または類似する内容の事業でないこと
  • 射幸心をそそるおそれがある、または公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある事業でないこと
  • 商工会議所または商工会の支援を受けること

個人事業主が持続化補助金を受け取るメリット

個人事業主が持続化補助金を受け取るメリット

個人事業主が持続化補助金を受け取る2つのメリットを紹介します。

まとまった額の投資ができる

業務効率化や販路拡大をしたくても、必要な金額の投資が難しいという理由であきらめた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

持続化補助金は通常枠で最大50万円、創業枠などの特別枠にインボイス特例を組み合わせることで最大250万円を受け取れる可能性がある補助金です。持続化補助金の活用により、ビジネスの効率化や販路拡大へのまとまった投資をしやすくなります。

事業運営を見直すきっかけとなる

持続化補助金の申請を行う際に記入する「経営計画書兼補助事業計画書」のなかには、記述式の項目があります。代表的な項目は、以下のとおりです。

  • 市場の動向や顧客のニーズ
  • 営む事業の概要、および提供する商品・サービスの強み
  • 経営方針や今後の目標
  • 持続化補助金を受け取って行う事業名
  • 販路開拓等に取り組む内容

いずれも、熟慮して記入する必要があります。 これまでの事業運営を振り返り、今後の事業運営について計画を立てることとなるでしょう。持続化補助金の申請は、事業運営を見直すきっかけとなります。

持続化補助金を申請する流れを紹介

持続化補助金を申請する流れを紹介

個人事業主が持続化補助金を申請する場合は、以下の流れに沿って進めてください。

  1. 公募要領を確認し、申請に必要な書類を準備する
  2. 電子申請システムに経営計画と補助事業計画を入力して、申請内容を印刷する 
  3. 事業を営む地域の商工会議所または商工会に依頼し、「事業支援計画書」を発行してもらう
  4. 申請に必要な書類を、電子申請システムにアップロードする
  5. 申請結果を待つ

持続化補助金を申請する際に必要な書類

持続化補助金を申請する際に必要な書類

ここからは、持続化補助金を申請する際に必要な書類を解説します。

全員が提出すべき書類

持続化補助金を申請する個人事業主は、事業支援計画書を提出する必要があります。事業を営む地域の商工会議所、または商工会に発行を依頼してください。加えて、以下に挙げるいずれかの書類も必要です。

書類の名称 備考
直近の確定申告書の写し 税務署の受付印が押された書類を提出する。電子申告の場合は受付印の代わりに、「受付結果(受信通知)」を提出する
納税証明書(その2:所得金額の証明書)の写し 確定申告書を書面で提出した場合で、受付印が押された確定申告書をお持ちでない場合に、直近の確定申告書とあわせて提出する必要がある
開業届の写し 決算期を一度も迎えていない場合に限る。開業日の記載が必要

希望する枠や特例によって追加で必要になる書類

持続化補助金は希望する枠や特例により、追加で提出を要する書類があります。それぞれについて、どのような書類が必要かご確認ください。

賃金引上げ枠 

賃金引上げ枠で申請する場合は、以下の書類が必要です。

書類の名称 備考
直近1ヶ月間の賃金台帳の写し 役員、専従者従業員、申請時に退職済みの従業員は除く。年俸制の場合は、直近1年間の年俸総額と所定労働時間数がわかる賃金台帳の写しが必要
すべての従業員の雇用条件が記載された書類(写し) 就業規則、雇用契約書、労働条件通知書など。役員と専従者従業員は除く

卒業枠(従業員がいる場合)

卒業枠で申請する場合は、最新の労働者名簿の写しが必要です。なお名簿に記される従業員は、常勤の方だけで問題ありません。

創業枠

創業枠で申請する場合は、以下の書類が必要です。

書類の名称 備考
「特定創業支援等事業」による支援を受けたことの証明書の写し 証明書の発行は、特定創業支援等事業の実施元である認定市区町村に依頼する。有効期限が切れた証明書も有効
開業届の写し 開業日の記載が必須。税務署の受付印も押されている必要がある。電子申告した場合は、受付印の代わりに「受付結果( 受信通知)」画面の写しを提出する

インボイス特例

インボイス特例を希望する場合は、適格請求書発行事業者の登録通知書の写しを提出してください。インボイスを申請中の個人事業主で申請をe-Taxで行った方は、登録申請データの「受信通知」で代えることが可能です。

加点を希望する場合に要する書類

持続化補助金には、加点審査があります。加点を受けることで有利に審査を進めてもらえるため、補助金を受けやすくなります。どのような書類の提出が必要か、加点項目ごとに確認していきましょう。

事業承継加点

個人事業主の年齢が満60歳以上で、補助事業を後継者候補が中心になって行う場合に加点されます。以下の書類を提出してください。

書類の名称 備考
事業承継診断票 事業を営む地域の商工会議所、または商工会が発行する
代表者の生年月日が確認できる公的書類 運転免許証の写し、住民票の原本など 
「後継者候補」の実在確認書類 従業員に承継する場合は、雇用契約書の写しが必要。従業員や家族専従者以外に承継する場合は、後継者候補が実在することを示す公的書類が必要

経営力向上計画加点

中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている個人事業主が対象です。加点されるためには、「経営力向上計画」の認定書の写しが必要です。また基準日までに認定を受けていることが求められます。

賃上げ加点

補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上アップする個人事業主が対象の加点です。事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりも30円以上高い場合は、申請時点での事業場内最低賃金より30円以上アップすることも要件に加わります。

必要な書類は、賃金引上げ枠で申請する場合と同じです。なお賃金引上げ枠で申請した場合は賃上げ加点が自動的に適用されます から、別途申請する必要はありません。

くるみん・えるぼし加点

以下のどちらかの認定を受けている個人事業主に対して加点されます。

  • 次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」
  • 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく「えるぼし認定」

くるみん・えるぼし加点を受けるためには、「基準適合一般事業主認定通知書」の写しが必要です。

東日本大震災加点

東京電力福島第一原子力発電所の影響を受け、引き続き厳しい事業環境下にある個人事業主に対して加点されます。加点を受ける場合、以下に挙げるどちらかの書類の提出が必要です。

  • 食品衛生法に基づく営業許可証の写し
  • 食品衛生法に基づく保健所の受付印のある届出書の写し

以下のいずれかの許可も必要です。

  • 魚介類販売業
  • 魚介類競り売り営業
  • 水産製品製造業
  • 複合型冷凍製品製造業

加点を受けられる営業地域は、業種により異なります。以下の表でご確認ください。

業種 加点を受けられる営業地域
水産仲買業者または水産加工業者 北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県
上記以外 福島県のうち、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村

個人事業主が持続化補助金を受け取るための注意点

個人事業主が持続化補助金を受け取るための注意点

ここからは、個人事業主が持続化補助金を受け取るための注意点を解説します。手続きに不備があるため補助金を受け取れないという事態にならないよう、ご一読のうえ準備を進めてください。

持続化補助金の対象となる業種や事業であること

個人事業主が持続化補助金を申請する場合、ご自身が商工業者であることが必要です。また営む事業にも要件があります。調剤薬局やゲームセンター、麻雀店などの事業は持続化補助金の対象外であることに注意してください。

申請に必要な書類を早めに準備すること

持続化補助金の申請に必要な書類のなかには、すぐに用意できないものもあります。例えば「賃金引上げ枠」の申請に必要な「すべての従業員の雇用条件が記載された書類」は、従業員全員の分を用意しなければなりません。

また従業員・家族専従者以外に事業承継する場合で「事業承継加点」を受けたい場合は、事業を承継する方に連絡し、実在することを示す書類の写しを用意してもらう必要があります。書類の入手に日数を要する場合がありますから、早めに準備を進めることがおすすめです。

商工会議所や商工会への連絡を早めに行うこと 

持続化補助金には、商工会議所または商工会から発行された「事業支援計画書」が必要です。事業支援計画書の発行の受付は、持続化補助金の応募が締め切られる1週間前が期限ですが、発行にはさらに日数を要する可能性もあります。持続化補助金を受けたい方は、事業を営む地域を管轄する商工会議所または商工会へ早めに相談し、事業支援計画書の発行を依頼しましょう。

持続化補助金を受給するまでの資金繰りを検討すること

持続化補助金は、補助事業が終わった後に支給されます。 事業を行っている時点では、補助金を受け取れていない状態であることに注意してください。

このため持続化補助金を受け取る前に経営が破綻しないよう、資金繰りの方法を検討することも求められます。借り入れは代表的な資金調達の方法です。

開業届に 記載した開業日が申請日以前、または申請日と同日であること

創業枠で申請する場合など、申請の内容によっては開業届の提出を要する場合もあります。開業届に記載した開業日は、以下のどちらかの要件を満たさなければなりません。

  • 開業日と、持続化補助金の申請日が同一
  • 開業日が、持続化補助金の申請日よりも前

持続化補助金を活用して、業績アップにつなげよう

持続化補助金を活用して、業績アップにつなげよう

持続化補助金は個人事業主でも、商工業者であり販路開拓等の取り組みを行うなら、多くの方が対象となります。まとまった資金を得て業績を伸ばすために、活用を検討してみてはいかがでしょうか?募集は不定期に行われますので、「小規模事業者持続化補助金」の公式サイトでご確認ください。