事業再構築補助金にはどんな種類がある?わかりやすく紹介

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事業再構築補助金には、さまざまな種類(事業類型)があります。広い範囲をカバーしているため、企業が進めるさまざまな事業の再構築をサポートできます。

事業再構築補助金には5つの事業類型がある

事業再構築補助金は、5種類の事業類型に分かれます。

成長分野進出枠(通常類型)

以下のどちらかに取り組む事業者

  • 成長分野への大胆な事業再構築
  • 国内市場の縮小など、構造的な課題に直面する業種や業態の事業者により取り組む事業再構築

成長分野進出枠(GX進出類型)

グリーン成長戦略の「実行計画」に示された14分野の課題について、解決に資する取り組みを行う事業者

コロナ回復加速化枠(通常類型)

コロナ禍の影響を受け続け、以下どちらかに該当する事業者

  • コロナ禍で負った債務を借り換える事業者
  • 事業再生に取り組む事業者

コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

コロナ禍が終わった後も、最低賃金の引き上げによる影響を大きく受けている事業者

サプライチェーン強靭化枠

以下どちらかに該当し、国内サプライチェーンの強靭化と地域産業の活性化に資する取り組みを行う中小企業等

  • 海外で製造などを行う製品の国内回帰
  • 地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産

事業再構築補助金の補助率や補助額 

事業類型による補助率や補助額を、以下にまとめました。短期で賃金を大規模に引き上げる場合の上限額は、かっこ内の数字をご確認ください。

補助金額の下限は、100万円(サプライチェーン強靭化枠は1,000万円)です。

成長分野進出枠(通常類型)

基本的な補助率

中小企業者等:1/2
中堅企業等:1/3

補助率が変わる要件と、変更後の補助率

短期で賃金を大規模に引き上げる場合
中小企業者等:2/3
中堅企業等:1/2

補助金額の上限

従業員数により、1,500万円(2,000万円)~6,000万円(7,000万円)
※廃業を伴う場合は、廃業費(補助経費対象総額の半分まで。最大2,000万円 )を上乗せできる

成長分野進出枠(GX進出類型)

基本的な補助率

中小企業者等:1/2
中堅企業等:1/3

補助率が変わる要件と、変更後の補助率

短期で賃金を大規模に引き上げる場合
中小企業者等:2/3
中堅企業等:1/2

補助金額の上限

中小企業者等の場合、従業員数により、3,000万円(4,000万円)~8,000万円(1億円)
中堅企業等は従業員数に関わらず、1億円(1.5億円)

コロナ回復加速化枠(通常類型)

基本的な補助率

中小企業者等:2/3
中堅企業等:1/2

補助率が変わる要件と、変更後の補助率

従業員数と補助額が下記に該当する場合、中小企業者等は3/4、中堅企業等は2/3

  • 5人以下:400万円までの金額
  • 6人~20人:600万円までの金額
  • 21人~50人:800万円までの金額
  • 51人以上:1,200万円までの金額
補助金額の上限

従業員数により、1,000万円~3,000万円

コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

基本的な補助率

中小企業者等:3/4
中堅企業等:2/3

補助率が変わる要件と、変更後の補助率

コロナ禍による債務の借り換えを行っていない場合
中小企業者等:2/3
中堅企業等:1/2

補助金額の上限

従業員数により、500万円~1,500万円

サプライチェーン強靭化枠

基本的な補助率

中小企業者等:1/2
中堅企業等:1/3

補助率が変わる要件と、変更後の補助率

無し

補助金額の上限

5億円

事業再構築補助金の支給要件

補助の対象に含まれる経費を、以下の表にまとめました。

すべての類型で共通

  • 建物費
  • 機械装置・システム構築費

サプライチェーン強靭化枠を除く類型で補助の対象

  • 機械装置・システム構築費(リース料)
  • 技術導入費
  • 専門家に対して支払う経費
  • 運搬費(宅配便の費用や、郵送に関わる費用など)
  • クラウドサービスを使う費用
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 広告宣伝・販売促進費
  • 研修費(上限額は補助対象となる経費総額の3分の1 )

成長分野進出枠(通常類型)のみ

廃業費(市場規模が10%縮小する業種や業態に属する企業で、別業種や別業態の事業を新しく始める場合)

申請にあたっては、以下の要件をクリアする必要があります。

  • 「事業再構築指針」で示される、事業再構築の定義に該当すること
  • 事業計画書を作成し、金融機関等の確認を受ける

上記に加えて、類型ごとにクリアすべき要件もあります。

成長分野進出枠(通常類型)

補助期間が終わった後3年~5年で、年平均成長率を4.0%以上アップさせる内容の事業計画を策定する必要があります。加えて以下の表に示す要件のうち、いずれかの項目を満たさなければなりません。

番号 支給の要件
1 給与支給総額について事業が終わった後3年~5年で、年平均成長率を2%以上増やす。かつ過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上広がる業種・業態に、自社が取り組む事業が属する
2 過去から今後のいずれか10年間で、現在の主たる事業が、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属する。自社で別の業種・業態の新規事業を行う

以下に挙げる両方の要件(補助率等引上要件)を満たせば、「短期で賃金を大規模に引き上げる場合」の補助率等を適用できます。

  • 給与支給総額を、年平均6%以上増やす
  • 事業場内最低賃金を、年額45円以上の水準で引き上げる

補助事業を行う期間は、交付決定日から12ヶ月以内です。但し補助金交付候補者の採択発表日から、14ヶ月後の日までに終えなければなりません。

成長分野進出枠(GX進出類型)

補助期間が終わった後3年~5年で、年平均成長率を4.0%以上アップさせる内容の事業計画を策定する必要があります。加えて以下に挙げる両方の要件を満たさなければなりません。

  • グリーン成長戦略「実行計画」に掲げられた14分野に関する課題の解決に資する取り組み
  • 事業が終わった後3年~5年で、給与支給総額を年平均成長率2%以上増やす

「短期で賃金を大規模に引き上げる場合」の補助率等を適用できる要件は、「成長分野進出枠(通常類型)」と同様です。

補助事業を行う期間は、交付決定日から14ヶ月以内です。但し補助金交付候補者の採択発表日から、16ヶ月後の日までに終えなければなりません。

コロナ回復加速化枠(通常類型)

補助期間が終わった後3年~5年で、年平均成長率を3.0%以上アップさせる内容の事業計画を策定する必要があります。加えて以下の1番または2番の要件を満たさなければなりません。

番号 支給の要件
1 コロナ借換保証などを活用し、すでに受けている融資を借り換えている
2 中小企業活性化協議会などにおいて、以下のいずれかを実施

補助事業を行う期間は、交付決定日から12ヶ月以内です。但し補助金交付候補者の採択発表日から、14ヶ月後の日までに終えなければなりません。

コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

補助期間が終わった後3年~5年で、年平均成長率を3.0%以上アップさせる内容の事業計画を策定する必要があります。加えて指定された期間内 で、以下のどちらにも該当する従業員の割合が、すべての従業員の10%以上となる必要があります。

  1. 受け取る賃金が、最低賃金に50円を加えた金額以下
  2. 1番に該当する期間が、3ヶ月以上ある

補助事業を行う期間は、交付決定日から12ヶ月以内です。但し補助金交付候補者の採択発表日から、14ヶ月後の日までに終えなければなりません。なおコロナ借換保証などですでに負った債務の借り換えをしていない場合、補助率は下がります。

サプライチェーン強靭化枠

補助期間が終わった後3年~5年で、年平均成長率を5.0%以上アップさせる内容の事業計画を策定する必要があります。加えて、以下に挙げるすべての要件を満たさなければなりません。

  • 取引先から国内の生産または増産要請があり、事業が終わった後に具体的な商談が進められる予定がある
  • 経済産業省が公開している「DX推進指標」を活用し、自己診断を行った結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に提出済み
  • IPAが実施する「SECURITY ACTION」について、二つ星の宣言をしている
  • 交付が決まった時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金と比べて30円以上高い。新規に立地する場合は、上記を満たす内容の雇用計画を示す
  • 事業が終わった後3年~5年で、給与支給総額を年平均の成長率で2%以上増やす
  • 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトで、宣言を公表する

製造業の場合は、「取り組んでいる事業が、過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上広がる業種・業態に属する」ことも求められます。

補助事業を行う期間は、交付決定日から28ヶ月以内です。但し補助金交付候補者の採択発表日から、30ヶ月後の日までに終えなければなりません。

追加で申請できる事業再構築補助金を紹介

サプライチェーン強靭化枠以外で申請する事業者には、補助金の金額を増やせる2種類の「上乗せ措置」が用意されています。両方には申請できませんので、どちらかを選んでください。

なお、上乗せ措置に関する経費は、もともと申請した分と明確に分ける必要があります。

卒業促進上乗せ措置

事業再構築補助金を活用した事業が終わった後、3年~5年で、以下の表に示す企業規模にまで成長する企業を対象としています。

申請の時点 成長した後の企業規模
中小企業、またはみなし中堅企業 大企業、中堅企業、特定事業者のいずれか
特定事業者(中小企業等経営強化法第2条第5項に規定する特定事業者) 大企業または中堅企業
中堅企業 大企業

補助率は中小企業者等が2分の1、中堅企業等が3分の1です。補助される金額や補助事業を行う期間、補助の対象に含まれる経費の品目は、もともと申請した事業類型に準じます。

中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置

事業再構築補助金を活用して行われる事業を通して、賃上げと増員の両方に取り組む事業者を対象とします。申請した事業類型の補助事業が終わった後3年~5年の間、以下の両方を実現することが要件です。

  • 事業場内最低賃金を、年額45円以上の水準で引き上げる
  • 従業員数を、年平均成長率で1.5%以上増やすこと

補助率は中小企業者等が2分の1、中堅企業等が3分の1です。また補助される金額の下限は100万円、上限は3,000万円です。補助事業を行う期間と補助の対象に含まれる経費は、もともと申請した事業類型に準じます。

まずは要件を確認し、適切な類型を選んで申請を

事業再構築補助金は多額の支給を受けられる一方で、類型ごとに要件が大きく異なります。受給するためには要件をよく確認したうえで、適切な類型を選ぶことが重要です。この記事を参考にして、補助金を貴社の発展にお役立てください。