事業再構築補助金とは?申請から支給までの流れとポイントを解説

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事業再構築補助金は「新しい分野に進出したい」「最低賃金を引き上げ、従業員の頑張りに報いたい」「製造拠点を国内に戻したい」といった企業のニーズに対して活用できます。

この記事では事業再構築補助金の申請から支給までの流れとポイントについて解説します。

事業再構築補助金とはなにか?

事業再構築補助金は第12回の公募を2024年に行った、中小企業や中堅企業向けの補助金です。経済や社会の変化に対応するために、事業の再構築に意欲的な中小企業等の挑戦を支援し、日本経済の構造転換を促すことが目的です。

そもそも事業再構築補助金は、なぜ始まったのか?

2020年初頭から広がった新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に伴い売上が減少し、需要の回復が期待できない事業も多くなりました。事業再構築補助金はこの事態に対応する制度として、2021年から始まりました。

事業再構築補助金は不定期に、期間を設けて公募されています。

持続化補助金との違い

事業再構築補助金と小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)は、どちらも国の制度による補助金ですが、以下の違いがあります。

項目 事業再構築補助金 持続化補助金
補助金の目的 事業の再構築や拡大 事業者の生産性向上と持続的発展
対象 中小企業、中堅企業 小規模事業者(従業員が20名以下)
補助金額 100万円~5億円 50万円~200万円
建物に関する補助 対象 対象外
社団法人、財団法人 対象 対象外

事業再構築補助金を申請し受け取るための要件

事業再構築補助金を申請し金銭を受け取るためには、複数の要件があります。代表的な3つの要件を解説します。

「事業再構築指針」で示される、事業再構築の定義に該当すること

事業再構築補助金を申請する事業は、以下のいずれかに該当する必要があります。

番号 類型 説明
1 新市場進出 新分野展開、業態転換など。新たな製品などで新たな市場に進出する
2 事業転換 主な事業を転換する
3 業種転換 主な業種を転換する
4 事業再編 事業再編を通じて、1~3のいずれかを実現する
5 国内回帰 海外で製造などを行う製品について、国内生産拠点を整備する。製造方法は、先進性を有することが必要
6 地域サプライチェーン維持・強靭化 地域のサプライチェーンに必要不可欠、かつ供給が不足しているか不足のおそれがある製品について、国内生産拠点を整備する。製造方法は、先進性を有することが必要

事業計画書を作成し、金融機関等の確認を受ける

申請の際に提出する事業計画は、「金融機関等」または「認定経営革新等支援機関」と相談のうえ作成し、確認を受けた書類であることが必要です。以下の表に示された書類を提出してください。なお相談・確認する機関は、事業所のある地域に所在していない場合でも差し支えありません。

番号 相談し確認を受けた機関 提出すべき書類
1 金融機関等 金融機関による確認書
2 認定経営革新等支援機関 認定経営革新等支援機関による確認書

このうち金融機関等から資金提供を受けて補助事業を行う場合は、1番のみ有効です。

付加価値額を年平均3%~5%増やす

事業再構築補助金を受給した事業者は、以下いずれかの要件を満たし、事業の成長を図らなければなりません。この要件は補助金を受けて行う事業(以下「補助事業」と略)が終了した後、3年~5年で満たす必要があります。

  • 付加価値額を、年平均成長率で3.0%~5.0%増やす
  • 従業員一人当たりの付加価値額を、年平均成長率で3.0%~5.0%増やす

付加価値額は、営業利益、人件費、減価償却費を合算した数字です。また達成すべき年平均成長率は、事業類型により異なります。年平均成長率は、複利で計算する必要があります。

事業再構築補助金の申請から補助金受領までの流れ

事業再構築補助金は、正しい手順で手続きを進めなければなりません。申請から補助金を受け取るまでの流れを、7つに分けて確認していきましょう。

「GビズIDプライムアカウント」を取得

事業再構築補助金の申請方法は、電子申請のみです。電子申請には、あらかじめ「GビズIDプライムアカウント」の取得を要します。

GビズIDプライムアカウントは、発行までに1週間程度かかります。アカウントの発行が遅れても、申請の期限を延ばすことはできません。

電子申請システムで申請する

GビズIDプライムアカウントを取得したら、電子申請システムで申請を行います。画面の指示に従い、必要事項を入力してください。

審査結果の通知を待つ

申請後は事業再構築補助金事務局(以下「事務局」と略)において審査を行い、申請者に対して採択・不採択の結果を通知します。

採択された場合は、補助金の交付申請手続きを行う

申請が採択された場合、補助金交付候補者となり、以下の情報が公表されます。

  • 商号又は名称
  • 法人番号
  • 補助事業計画名
  • 事業計画書の概要
  • 金融機関等又は認定経営革新等支援機関の名称等

補助金交付候補者となった場合、事務局が実施する説明会への出席が必要です。不参加の場合、補助金は受けられません。 そのうえで「補助事業の手引き」に従い、補助金の交付申請手続きを行ってください。

事業を実施する

補助金の申請時に提出した計画に沿って、事業を進めてください。まとまった金額を要する場合は、1回に限り概算払を受けられる場合があります。概算払を希望する場合は、事務局に以下の書類を提出する必要があります。

  • 補助金概算払請求書
  • 経費明細表
  • 証拠書類(見積書、発注書または注文書、契約書、納品書、請求書など)

なお事業は、公募の回ごとに定められた「補助事業実施期間」内に終えなければなりません。

実績報告を行う

補助事業を終えた場合は、以下のどちらか早い日までに「補助事業実績報告書」を提出してください。

補助事業を完了した日から起算して、30日を経過した日

補助事業完了期限日(募集する回ごとに指定される)

指定された日までに「補助事業実績報告書」を提出しない場合、補助金は受け取れません。

補助金確定通知書の受領後、補助金の支払いを求める

事務局は提出された「補助事業実績報告書」をチェックし、補助金額を決定します。「補助金確定通知書」が発行されましたら、事務局に「補助金精算払請求書」を提出してください。申請には、振込先に関する情報(金融機関名、支店名、口座番号、預金名義など)が必要です。

事業再構築補助金の申請不備や変更があった場合はどうする?

申請書に不備や不足があると、審査できない場合があります。一方で、申請した後でも、内容を変更できるケースがあります。変更できるケースと変更不可のケース、変更方法について、3つの項目に分けて解説します。

事業の主旨・目的や成果目標が変わる計画変更は不可

採択後、補助事業計画名は貴社の名称とともに公表されるため、変更できません。また事業の主旨や目的、成果目標が変わる計画の変更は認められません。

「補助事業計画変更の承認申請」で認められる場合がある

採択後に計画を変更したい場合は、事前の承認が必要です。「補助事業計画変更(等)の承認申請書」を提出したうえで、事務局による承認を得てください。事後の承認は受け付けられません。承認が必要な例を、以下に挙げました。

  • 単価50万円(税抜)以上で取得する物品、または受ける予定のサービスを変更する
  • 経費区分ごとの金額を変える(各配分額の10%以内の増減は申請不要)
  • 発注先の業者や金額を変える
  • 補助事業を行う場所を変える 

補助事業実施期間末を待たずに事業を終えてもよい

事業再構築補助金を活用する事業は、目的が達成されれば、補助事業実施期間の末日を待たずに事業を終えても問題ありません。 一方で期間内に事業を完了できないと見込まれるケースのうち、貴社の責任によらないと認められる理由がある場合は、期限を延ばせる可能性があります。事務局に対して「事故等報告」を提出してください。 

事業再構築補助金に関する6つの注意点

ここからは事業再構築補助金の申請や活用にあたり、押さえておきたい6つの注意点を解説します。

公募期間を確認し、締切を厳守する

公募期間の締切は、厳守してください。申請日時に遅れると、選考されません。

申請額が全額補助されるとは限らない

申請時に記入した補助金の金額が、そのまま支給されるとは限りません。実際に支払われる補助金の金額は、以下の2段階の審査を経て決定されます。

  • 採択後に提出する「補助金交付申請」の内容を審査
  • 事業終了後に提出する「補助事業実績報告書」を審査

汎用性の高い物品を購入するなど、補助の対象にならない経費が含まれる場合は、補助額が減らされる可能性があります。

同じ事業で複数の補助金を受けることはできない

同じ事業で、複数の補助金を受けることはできません。一方で内容が異なる別の事業であれば、同じ会社で複数の補助金を受け取ることはあり得ます。この場合、かかった経費は事業ごとに必ず分けてください。 

なお以下の助成金や給付金、支援金を受給した法人が、事業再構築補助金を申請することは可能です。

  • 産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース) 
  • 持続化給付金
  • 事業復活支援金 

補助金の交付決定前に、補助事業を始めることはできない

2024年4月23日から開始された第12回公募より、事前着手届出制度は廃止されました。補助金の交付が決まる前に、補助事業を始めることはできません。交付決定日より前に購入や契約、発注を行った場合、該当する経費は補助の対象外となります。

経費の支払いは、銀行振込に限る 

経費の支払いは、銀行振込で行うことが必要です。現金や手形、小切手での支払いは、補助の対象外です。

補助金で取得した資産は、処分や廃棄に制限がかかる

事業再構築補助金によって取得する資産は、売却や廃棄、譲渡、他用途への転用を行う際に制限が課されることに注意してください。これらにより収入を得た場合は以下のいずれかを上限として、国庫に納付しなければなりません。

  • 処分した財産に対応する時価(譲渡額)
  • 残存簿価相当額
  • 補助金として受け取った額

特に単価50万円(税抜)以上の財産を処分する場合は、事前に事務局の承認を受ける必要があります。50万円(税抜)未満でも補助金を使って取得した資産を処分する場合は、あらかじめ事務局に相談し、指示を受けることがおすすめです。

事業再構築補助金は、明確な計画のもとに申請を

事業再構築補助金は、最初のステップである申請の段階で、何を書くかが重要です。いったん採択された後の変更には、ハードルがあります。特に採択後、補助金の支給額を増やせないことには注意が必要です。

このため事業再構築補助金は、明確な計画を立てたのちに申請を進めることをおすすめします。どのような事業を行いたいのか、どの項目にどの程度の費用が必要なのかを十分に検討しましょう。