チャットボット(chatbot)とはチャットとロボットを組み合わせてできた言葉で、チャットを通じて質問に自動で応答するプログラムのことを指します。テキストベースでの双方向コミュニケーションが可能です。
近年、チャットボットを導入する企業や行政機関も増えており、2024年3月には総務省とデジタル庁が連携し、各府省の協力のもと整備された国・地方共通相談チャットボット、通称「Govbot(ガボット)」の運用が開始されました。
チャットボットの原点は、1960年代にアメリカで開発された自動会話プログラムELIZA(イライザ)にあります。ELIZAは質問に対して定型文の返答しかできなかったため、広く活用されることはありませんでした。しかし、AIの登場により、チャットボットの自動会話プログラムが再注目されるようになりました。
チャットボットには、事前に登録したシナリオに沿って回答する「シナリオ型」とAI技術を活用して適切な回答を生成する「AI搭載型」の2つの種類があります。
シナリオ型のチャットボットは、入力された質問に対してあらかじめ登録しておいたシナリオに沿って回答します。一問一答形式で回答できる定型的な質問について、正確に回答できます。
AI搭載型のチャットボットは、事前に登録したデータや繰り返しの利用で蓄積されたログを基に学習したAIが、入力された質問を分析することで的確な回答をします。回答精度は質の良いデータをどれだけ学習させたかによって決まるので、AIに定期的な学習を施すことが欠かせません。
万能に見えるAIですが、人間の感情の理解や学習させていない暗黙の了解に基づいた判断などは苦手なことがあります。
チャットボットの会話の仕組みは、4つに分類できます。
選択肢型はチャットボットが提示した選択肢をユーザーが選ぶ形式です。「ログインIDやパスワードを忘れた」「利用可能な支払い方法の案内」「機器の操作方法」など、定型化できる質問に適しています。
辞書型は質問文に含まれるキーワードを読み取り、適切な回答をする形式です。キーワードが複数含まれる場合も対応が可能です。辞書型の場合、事前にキーワードとキーワードに対応した回答を大量に登録しておく必要があります。
ハイブリッド型は選択肢型と辞書型を組み合わせた形式です。より柔軟で精度の高い回答が期待できます。基本的には選択肢をユーザーが選んでいきますが、質問したい項目が選択肢にない場合は、質問を入力することも可能です。
選択肢の適切な設定や十分な量のキーワード登録など、手間や時間がかかる作業が必要となります。
蓄積型は、チャットボットのログに保存された過去のやり取りをAIが分析し、質問に最適な回答を導き出す形式です。会話自体も学習していくため、人間が対応しているように自然な会話ができます。チャットボットを使い込んでいくことで、学習も進むので、回答の精度も高くなっていきます。
チャットボットはその特長から顧客対応のみではなく、業務の自動化にも生かされています。ここでは代表的な機能を取り上げます。
ユーザーが入力した質問に対する適切な回答を提示します。質問の種類が少ない場合はシナリオ型、質問の種類が多い場合はAI搭載型が利用されます。顧客からの質問対応だけではなく、社内のヘルプデスクとしても活用できます。
ユーザーが入力した内容に基づいたシステム処理を代行します。旅行会社の宿泊予約や宅配会社の再配達申請などに活用されています。定型処理が中心なのでシナリオ型が使われていることが多いです。
これまで人が行ってきた処理をプログラムが自動で代行することで、業務の効率化を実現し、生産性の向上も見込めます。
指定した日時に情報の発信をします。メールマガジンなどの情報発信やリマインダーとして活用することも可能です。双方向コミュニケーションの機能はなく、定型処理を行うため、一般的にシナリオ型が利用されています。
主にAI搭載型のチャットボットで実現されています。顧客と気軽な会話のなかから、顧客の本音を探ったり、商品やサービスをさり気なく紹介したりすることも可能です。
チャットボットを導入することで、問い合わせ業務の効率化や顧客対応品質の均一化などさまざまなメリットがあります。
チャットボットによくある質問などの対応を任せることで、問い合わせ業務の効率化やコストの削減が見込めます。チャットボットで対応できない質問のみに対応すればよいので、問い合わせ業務担当の従業員の負担も軽減可能です。
顧客の問い合わせに24時間対応が可能になるため、顧客満足度の向上や顧客離れの防止が期待できます。社内のヘルプデスクとして利用する場合は、疑問点を迅速に解消することで作業効率の向上につながる可能性があります。
チャットボットでの対応であれば同時に複数の問い合わせを処理することも可能です。迅速な問い合わせ対応は、顧客満足度の向上にもつながります。
有人での問い合わせ対応では、対応する従業員の力量によって対応品質にばらつきが出てしまいます。チャットボットで対応すれば、安定した対応品質が期待できます。
基本的にテキスト形式でチャットボットとのやり取りは保存されるため、文字起こしの手間も省け、データを利活用しやすい特長があります。蓄積された問い合わせデータを利用することで、顧客のニーズや商品・サービスの改善点を把握し、マーケティングに生かすことができます。
ここからはチャットボット導入や運用における課題と解決のための対策について解説します。
チャットボット導入のためには初期費用や運用費用などがかかります。導入前にチャットボット導入で解決したい課題や目的を明確にし、費用対効果を検討したうえで、自社にあったチャットボットを導入しましょう。
回答精度を上げるためには定期的なメンテナンスやキーワードの登録などさまざまな作業が必要です。効率よくメンテナンスを行ったり、知識やノウハウを共有し属人化を防いだりするために、事前にメンテナンス方法を準備しておくことが大切です。
「チャットボット導入したけれど、どれくらい効果が出ているのかわからない」といった事態に陥ることも考えられます。導入前に、1日の問い合わせ件数や解決率などの指標を定めておくことで、導入後にチャットボット導入の効果をスムーズに見える化できます。
顧客のチャットボット利用率が低い場合は、顧客がチャットボットに気づいていないこともあります。チャットボットの存在を顧客へ周知できるよう、サイト設計を工夫することが大切です。
チャットボット利用時に途中で離脱する顧客が多い場合は、顧客が手に入れたい情報にたどり着けていないという可能性もあります。チャットボットの回答精度が低いのであれば、登録キーワードを増やしたり、AIを学習させたりする必要があります。
チャットボットにはさまざまな活用方法があります。チャットボット導入のヒントとしてチャットボットの活用方法を5つ紹介していきます。
チャットボットにより、顧客が探したい情報のキーワードを入力していくだけで回答を得られるようになります。さらに、チャットボットは24時間対応で問い合わせに対応できるため、顧客の都合のよいタイミングで質問できるというメリットがあります。
従業員からの問い合わせが多いバックオフィス業務において、手続きや制度に関する問い合わせの対応にチャットボットを導入する企業も増えています。
グループウェアと連携できるチャットボットであれば、グループ内のスケジュールやメッセージなどを一元管理できるため、スケジュールの調整ミスやメッセージの見落としなどを防ぐことをサポートします。
社内情報をチャットボットに集約すれば、ナレッジの蓄積が可能です。チャットボットに蓄積したナレッジの共有も簡単に行えます。
チャットボットは問い合わせ対応以外にも、サイトを訪問した顧客に対してサイトの案内役、自社商品やサービスの説明やヒアリング、資料請求、新規申し込み、商品購入へ誘導など、さまざまなマーケティング支援に活用できます。
チャットボットは顧客からの問い合わせ対応以外でも、社内のヘルプデスクやナレッジ共有など、さまざまな活用方法があり、ビジネスシーンにおいて欠かせないツールになってきています。応答能力の向上やChatGPTのような生成AIとの連携拡大で、ますます利用しやすく、効果的なチャットボットが実現されていくでしょう。今後のチャットボットの発展に期待しましょう。