生成AIはコンピューターが学習した情報をもとに、新たなコンテンツや情報を作り出す技術です。「生成系AI」「ジェネレーティブAI」とも呼ばれる生成AIの特徴を、4つの観点から確認していきましょう。
生成AIで生み出せるコンテンツや情報は、以下のように多種多様です。
技術を駆使すればビジュアルと音をふんだんに使ったコンテンツを、すべて生成AIで作り上げることも可能です。
生成AIに対して同じ問いを複数回繰り返した場合、得られる回答は毎回変わります。例えば「楽天モバイルの特徴を教えて」と問いかけると、その都度異なる回答が返ってくるでしょう。コンピューターらしからぬ振る舞いに、不思議な感覚を抱いた方もいるかもしれません。
大阪大学はこの点について、「生成AIには、回答の創造性を向上させるために、回答に「ゆらぎ」を与えるパラメータが存在しています。」と指摘しています。この特徴を活かし、同じ問いを複数回行うことで複数のアイデアや案を得ることが可能です。
生成AIでは、機械学習(ディープラーニング)の技術が使われています。このなかでも、入力データと出力データの対を与えて学習させる「教師あり学習」の手法がよく用いられています。問いと答え、データと分類先の対を示すことは、代表的な学習データの与え方です。
膨大な量のデータを学習させることで、人間がルールを明示的に提示しなくてもコンピューター自身がルールを見つけます。このため新たに入力したデータをもとに、適切なアウトプットを提示できます。
従来のAIは、新しいものを作り出せません。このため、以下の用途で使われてきました。
一方で生成AIは、創造が可能です。新しいコンテンツを作り出せることは、従来のAIにはない特徴です。
生成AIは、企業で行われる多種多様な業務で活かせます。本記事では、7つの活用方法を取り上げました。生成AIが持つ多彩な能力をご確認ください。
提示された文章の要点を把握しながら要約することは、生成AIの得意分野です。また生成AIは新たなコンテンツを生み出せるため、新しい文章を作り出すことも可能です。文章の作成業務に使用できること、要約によりすばやく要点をつかめることは、生産性の向上につながります。
但し生成AIは、ユーザーの脳内を読み取る能力までは備わっていません。このため生成AIで文章を作る場合は、キーワードなど必要な情報を与えないと目的に合った文章を得られません。また要約する場合は、重要なポイントを示すことで求めるアウトプットを得やすくなります。
生成AIは、多言語に対応することが特徴です。使用にあたり、事前に設定を済ませておく必要はありません。どの言語で問われたかを自動で識別し、求める言語で出力します。
このため、翻訳にも使えます。生成AIによっては単に翻訳結果を返すだけでなく、語句の解説をしてくれる場合もあります。未知の語句や文章に対する理解を、よりいっそう深めることができるでしょう。
生成AIは、自動応答にも活用できます。これまでのチャットボットでありがちな、定型的な回答とは異なることが特徴です。利用者が入力した文章の趣旨を把握したうえで、適切な応答を生成し提示します。生成AIの活用で、よりきめ細かく適切な対応を行えるでしょう。
生成AIは、業務に必要なデータの抽出にも使えます。これは学習済みの膨大な情報のなかから、求めるデータを探し出し提示できる特徴を活かしたものです。「検索エンジンで探すのは面倒」と思った際には生成AIに問いを投げかけることで必要な情報を得られ、すぐ業務に活かせる点は魅力的です。
「同じ問いを行っても、回答はその都度異なる」で解説したとおり、同じ問いを繰り返された場合に異なる回答を返すことは生成AIの特徴です。「複数の案を比較検討したい」と思った場合は、生成AIに複数回同じ質問を投げかけることで、簡単に複数の案を得られます。生成AIによっては、はじめから複数の回答を用意し提示するものもあるため、比較検討しやすいメリットも見逃せません。
さまざまな案を得ることで、より良い業務につながるアイデアを発見できるでしょう。生成AIは思い込みが無いため、ときに思いもよらぬ案が提示される場合もあります。生成AIの活用により、革新的なアイデアや新しい製品コンセプトも得やすくなることが期待できます。
生成AIは、言語やプログラミング言語の文法を理解しています。このため、以下の用途で使うことも可能です。
生成AIの活用により誤った箇所をすばやく見つけ、迅速に修正できます。チェック作業にかかる時間を大幅に削減でき、業務効率化に寄与することはメリットの一つです。
生成AIでは文章だけでなく、画像や動画、音声なども生成できます。「オリジナルのコンテンツを簡単にすばやく作りたい」という目的で活用できるでしょう。背景の画像やイラスト、アイキャッチ画像など、幅広い使いみちがあります。
但し生成されたコンテンツが、著作権侵害になっていないかどうかのチェックはされていません。この点は面倒でも、人の手でチェックする必要があります。
生成AIは新しいコンテンツを創造する能力を有していますが、万能ではありません。以下のように、苦手なこともあります。
人はときに感情に基づいた、一見して合理的とは言い難い判断や行動を行う場合があります。この理解や説明は、生成AIでは難しいかもしれません。また生成AIは学習済みの、また提示された条件に基づいてアウトプットを生成します。このため、暗黙の了解に基づいた判断やアウトプットの提示は難しいでしょう。
生成AIといえば、ChatGPTを思い浮かべる方も多いでしょう。確かにChatGPTは生成AIの代表的なサービスですが、ほかにも優れたサービスがあります。主な生成AIの名称と特徴を、以下の表にまとめました。
生成AIの名称 | 運営する法人 | 特徴 |
---|---|---|
ChatGPT | OpenAI | テキストで知りたいことを入力すると、アウトプットが返ってくる。無料版と有料版がある |
Bard | ChatGPTと類似のサービス。アウトプットが3つ示され、適切なものを選べる | |
Gemini | 2023年12月に発表された新しいAIモデル。テキスト等による質問に回答できるほか、コーディングやアプリの構築も可能 | |
Adobe Firefly | Adobe | 文章による指示で、画像を生成可能。Adobe製品の機能に含まれる(含まれる機能は製品により異なる) |
Stable Diffusion | Stability AI | 生成したい画像の具体的なイメージを入力すれば、希望する画像をアウトプットできる |
Gen-2 | Runway AI | 文章や画像をもとに、動画を生成可能。既存の動画も加工できる |
2023年現在、どのような用途にも対応できる万能な生成AIはありません。用途や目的を考えたうえで、適切なサービスを選ぶことが重要です。
楽天グループではOpenAIと協業し、2024年以降に新しいAIプラットフォーム「Rakuten AI for Business」を本格的に提供いたします。OpenAIは、代表的な生成AI「ChatGPT」の開発元です。
Rakuten AI for Businessは営業やサポート、事業戦略、開発など、多種多様な企業活動を支援します。含まれる機能には、以下のものがあります。
機能名 | 機能の内容 |
---|---|
Rakuten AI Analyst | データ分析やチャート作成など実用的な分析の手助けを行う |
Rakuten AI Agent | 企業の担当者が効率的により高度な消費者へのサービスを提供できるように手助けする |
Rakuten AI Librarian | 企業のあらゆる資料を分析し必要な情報を提供することで顧客からの質問に迅速に回答できる |
Rakuten AI for Businessは、スマートフォンやタブレットでもアクセス可能です。上記の機能により企業の業務効率化はもちろん、付加価値や競争力の向上も後押しします。
生成AIは便利ですが、何も考えずに使っても有用な情報を得られるほど進化してはいません。上手に使うためにはコツがあります。
ここからは、ユーザー一人ひとりが生成AIを活用するうえで重要な6つのポイントを紹介します。見落としやすい項目をチェックして注意を払いながら活用し、生成AIを自社での業務に役立てましょう。
生成AIのアウトプットは、正しいとは限らない点に注意が必要です。そもそも生成AIは、アウトプットを出す前に正しいかどうか検証する仕組みを備えていません。もし誤りの情報が多ければ、生成AIも誤った回答をしやすくなります。これは多種多様なデータをもとに学習することの隠れたデメリットです。
一例として、日本の最高気温記録を考えてみましょう。長らく1933年に山形市で記録された40.8℃が最高でしたが、21世紀に入ると数年おきに記録が更新されています。過去の「最高気温の記録更新!」というニュースには、以下の気温が示されているかもしれません。
このため「過去の日本での最高気温は?」と生成AIに問いかけると、「40.8℃」「40.9℃」といった誤った回答が返される可能性があります。
生成AIがアウトプットを出す際にどの情報を参考にしたかによって、回答は変わります。このため、最新で正しいデータをもとにアウトプットが出されるとは限りません。回答の根拠が示されない場合もあるため、得られたアウトプットの正確さや妥当性は各自でチェックすることが必要です。
2023年時点の生成AIは、事前に学習した範囲の情報をもとに回答を作成しています。このため、以下の問いには適切な回答を行えない可能性が高いでしょう。
例えばChatGPTの無料版は、2021年9月までの学習データに基づきアウトプットを生成します。2023年11月に公表された有料版の「GPT-4 Turbo」でも、含まれる情報は2023年4月までです。リアルタイムで変化する状況への適切な対処方法を求めたくても、生成AIでは最新の情報に対応できない場合があることは理解しておきましょう。
2023年時点の生成AIは、事前に学習した範囲の情報をもとに回答を作成しています。このため、以下の問いには適切な回答を行えない可能性が高いでしょう。
例えばChatGPTの無料版は、2021年9月までの学習データに基づきアウトプットを生成します。2023年11月に公表された有料版の「GPT-4 Turbo」でも、含まれる情報は2023年4月までです。リアルタイムで変化する状況への適切な対処方法を求めたくても、生成AIでは最新の情報に対応できない場合があることは理解しておきましょう。
生成AIはWebに蓄積された幅広い情報を学習していますが、それ以外の場所にある情報は学習していません。このため、以下の情報を生成AIで引き出すことはできません。
この点は、生成AIが持つ限界の一つです。「なんでも生成AIにたずねればわかる」と思わないよう、注意してください。
生成AIは学習済みの多種多様な情報を踏まえて、確からしいアウトプットを出します。この内容はさまざまな情報の最大公約数ですから、無難な情報となりがちです。
人間の場合はTPOに応じて、「このケースでは無難な情報を提示」「このケースでは尖った提案を」などの判断を行い、適切な提案ができます。しかし生成AIは、このような判断ができません。いつでも無難な情報を提示するため、尖った情報や最先端の情報は引き出しにくいでしょう。
生成AIが出力した情報は、他社の著作権を侵害していないか、不適切な表現でないかチェックされているとは限りません。「生成AIが提示したのだからオリジナルの情報」と思い込み、チェックもせずに使うことは危険です。著作権侵害による訴訟の対象とならないためにも、アウトプットを使う場合は著作権侵害に当たらないか必ずチェックしましょう。
ここまで解説したとおり、生成AIは業務を円滑に、効率的に進めるための道具です。またアウトプットは、あくまでも参考情報です。生成AIは情報を簡単に、また多角的に得る手段として使い、得た情報の活用方法や活用の可否は人間が判断するようにしましょう。
もし生成AIに判断まで任せると、誤った現状認識のもとに誤った判断を下し、実行することになりかねません。トラブルに巻き込まれるリスクも大きく増加するでしょう。何よりも人間がAIに支配されるという、望ましくない事態を引き起こしかねません。
生成AIはうまく使えば、業務遂行にかかる時間を大幅に短縮できます。短い時間で、良質の成果物を作成できるでしょう。
一方で、正確性は必ずしも担保されていません。なんでも生成AIにお任せしてしまい、正確性や著作権侵害の有無をチェックせずに使うと、思わぬところから批判を受けかねません。
生成AIを業務に活かすうえで、特徴と限界、注意点を知ることは重要です。すべてを生成AIに任せず、適材適所での活用を心がけましょう。また重要なポイントは、必ず人がチェックすることをおすすめします。適切に使用することで、生成AIを業務効率化や業績向上に活かすことが可能です。