次世代インターネットといわれているWeb3.0は、ブロックチェーン技術を用いた分散型インターネットのことを指します。これまでGAFAM(ガーファム)と総称されるGoogle、Apple、Facebook(現Meta Platforms, Inc)、Amazon、Microsoftといった巨大企業がプラットフォーマーとなり、個人情報などのデータを管理・運用してきました。
Web3.0では、インターネット上のコンテンツ運用の仕組みを利用者側に分散することで、プラットフォーマーのサーバーを経由せずデータの管理や運用が行えるとされています。
ブロックチェーン技術とは、パソコンや携帯電話などの情報端末同士を直接つなぎ、暗号技術を用いて取引記録などを分散して処理や記録をするデータベースの一種です。ブロックという単位でデータ管理を行い、ブロック同士を鎖のようにつなげることでデータ保管をする仕組みのことを指します。
Web3.0が登場するまでのインターネットは、大きく2つに分けることができます。インターネット黎明期であるWeb1.0とSNS普及後のWeb2.0です。
黎明期におけるインターネット利用の主な目的は、開設されているWebサイトの閲覧です。Webサイトはテキストが主体で、ユーザーとのコミュニケーションはWebサイトに設置されているCGI(Common Gateway Interface)プログラムを利用した掲示板を介して行うことが一般的でした。
当時、Webサイトで情報発信するためには、HTMLコードを理解しなければなりませんでした。掲示板の設置にはプログラミングの知識も必要です。そのため、Webサイトを開設しているのは企業や一部のユーザーにとどまっていました。
基本的にはWebサイトの情報を閲覧するだけなので、一方通行のコミュニケーションといえます。
2024現在、主流となっているのはYouTubeなどの動画サイト、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを利用した情報発信です。難しい知識が不要で、誰もが情報発信することができます。また、ユーザー同士の直接交流が一般的になりました。
Web2.0は、双方向のコミュニケーションを大手企業が提供するプラットフォームを介して行うため、プラットフォーマーに個人情報を登録しなければなりません。そのため、大手のプラットフォーマーのサーバーが個人情報や行動履歴など、膨大なデータを独占することになります。
中央集権型といわれるWeb2.0の仕組みでは特定のサーバーにデータを集約するため、プライバシー侵害や個人情報の漏えいリスクが高いと指摘されています。
Web2.0の課題であったセキュリティやプライバシーの問題を解決するために考え出されたのが、Web3.0です。Web3.0には、セキュリティ強化やプライバシー保護以外にもさまざまなメリットがあります。
Web3.0においては、企業やサービスに個人情報を登録する必要はありません。データは特定のサーバーではなく個人で管理します。サーバーへの不正アクセスによる情報漏えいのリスクが軽減され、プライバシーの保護も可能です。
各ブロックには、以前のブロックの情報内容が記録されるようになっています。過去の取引情報に編集を加えると、ブロック内に記録された情報との齟齬が出るので、データ改ざんを容易に発見できます。
Web3.0ではサーバーを介さずに複数の情報端末同士で直接、相互通信を行うP2P(Peer to Peer)ネットワーク方式を利用しています。サーバーが不要になるため、アクセス集中によるシステムダウンの心配がありません。
複数の情報端末同士を直接つないでデータのやり取りをするWeb3.0には、仲介となる企業などが存在しません。そのため、手数料の負担を減らすことができます。
また、ブロックチェーン上のコンテンツは承認不要で誰もが利用できます。そのうえ、情報漏えいなどのセキュリティ面の心配もありません。国を越えての利用も可能になるでしょう。
多くのメリットがあるWeb3.0ですが、新しい概念ゆえのデメリットも存在しています。ここからは、Web3.0におけるデメリットについてみていきます。
Web3.0はできたばかりのサービスなので、法制度がまだ整っていません。また、国をまたいだ利用も考えられるので、国内だけでなく国際的な法整備が必要となるでしょう。今後、速やかな法整備が待たれます。
Web3.0では、取引に仮想通貨を使用するため、仮想通貨についての専門知識や高いITリテラシーが必要になります。まだ誰もが使えるサービスとはいえません。気軽に使える仕組みづくりが、Web3.0普及には不可欠です。
Web2.0のように情報の管理者やサービスの運営者が、Web3.0には存在しません。これまでは管理者や運営者への問い合わせで解決できた問題も、自分自身で解決していく必要があります。
トラブルは、技術的なものだけではなく、詐欺などの犯罪や流言飛語・誹謗中傷などさまざまです。正しい知識やリテラシーを身に付けることが自己防衛につながります。
Web3.0のアプリケーション分類は、主にDeFi(ディーファイ)、GameFi(ゲーミファイ)、NFT(エヌエフティ)、DAO(ダオ)の4つがあります。どのアプリケーションもブロックチェーン技術を使用したものです。
DeFiはDecentralized Financeの略称で、日本語では「分散型金融」です。銀行や金融機関を通さずに、誰もが参加できる金融システムのことを指します。ブロックチェーン技術により、コストダウンや取引速度向上、不正行為の減少などが期待できます。
GameFiはGameとFinanceを組み合わせた造語です。ゲーム産業の金融サービスを提供します。例えば、ゲームをプレイして報酬を獲得し、その報酬を使いゲーム内でキャラクターやアイテムを取引することも可能です。
NFTはNon-Fungible Tokenの略称で、「非代替性トークン」を意味します。NFTはブロックチェーン上にデータを刻むことで、改ざんが難しくなるという特徴を生かし、デジタルアートなどの唯一性や真正性を確保します。
容易にコピーができてしまうデジタルデータのオリジナルに唯一性や真正性を与えることで、取引履歴を追跡可能となり、所有権取引や権利管理が容易に行えます。また、二次的流通であっても作者に収益が入る仕組みができあがります。
DAOはDecentralized Autonomous Organizationの略称で、分散型自立組織を指します。DAOは集約された権限を持つ管理者がいない組織形態で、ブロックチェーン上のプログラムによって運営されます。組織の透明性が非常に高く、物事の決定は投票に委ねられ、民主的な運営が可能です。
2022年に経済産業省が作成した資料「Web3.0事業環境整備の考え方」では、Web3.0がもたらす社会や環境の変化が紹介されています。
日本が世界に誇るクリエイティブ産業において、大きな経済価値を生み出す可能性があります。
クリエイターの収益が初期販売だけでなく、二次流通や、ファントークンの発行によって保有者を優待し、ロイヤリティの高いファンを集めることで得られるからです。また、ブロックチェーンを活用した新たなビジネスモデルの登場にも期待できます。
権利の移転や管理のコストが大きく、個人投資家が購入することが難しかった金融商品をトークン化することで、小口で購入可能になります。個人投資家向けの金融商品の選択肢が増えることで、投資が活性化し、経済発展につながる可能性を秘めています。
Web3.0では、中央管理者がいないため、コンテンツの制作や販売のみならず、応援したいサービスのマーケティングに関わるなど、参入したくても関われなかった部分にまでユーザーが主体となって参入することが可能です。
また、金融サービスを受けられない金融排除といわれる状況にある人が多い途上国などであっても、DeFiなどを活用することで、金融包摂や個人資産形成などを促進できる可能性があります。
組織のビジョンに共感した個人が集まって貢献するコミュニティをDAO型組織といいます。DAO組織では、プロジェクトに貢献すれば、プロジェクトを立ち上げた企業や団体に所属していなくても貢献度に応じたトークン報酬を受け取ることができます。
魅力的なプロジェクトであれば、プロジェクトの成長に貢献する個人が増え、成功に導きやすくなることから、組織の多様化や高度化が促進されると考えられています。
NFTやトークンは自治体や非営利団体の新たな資金調達やコミュニティマネジメント手法としても注目されています。自治体や非営利団体が抱える地方創生などの社会課題に関心を持つ個人を集めてコミュニティ化し、DAO組織とすることで資金調達も可能です。
日本は官民ともに諸外国に比べて、デジタル化の遅れが指摘されています。国民の生活向上や産業の活性化、経済成長には、デジタル化社会の実現に向けた構造改革が必要だと考えられています。2021年、デジタル庁はデジタル社会の実現に向け、次のような5つのデジタル原則を定めました。
データの真正性や透明性を担保する技術であるブロックチェーンを活用することで、これらのデジタル原則に適合した規制への見直しが期待できます。
まだまだ発展途上のWeb3.0ですが、さまざまな可能性を秘めていることは間違いないでしょう。但し、一般に広く浸透するには、利用者の理解とリテラシー向上に加え、誰もが利用できる仕組みの構築や利用者の安全を確保するための法整備など、さまざまな課題を克服する必要があります。
これらの課題克服までには、もう少し時間を要するでしょう。今後のWeb3.0の動向に注視し、来たる時に備え、準備をしておく必要があるといえます。