法人携帯の経費計上には、さまざまな科目が使われます。代表的な科目を、以下の表にまとめました。
科目名 | 代表的な経費の例 |
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通信費 | 月額費用、通話料金、SMSでの通信費、郵送料 |
消耗品費 | 充電器やUSBケーブル、モバイルバッテリーなどの周辺機器 |
一括償却資産 | 端末の購入費用を一括償却資産で計上する場合 |
工具器具備品 | 端末を固定資産で計上する場合 |
減価償却費 | 固定資産を減価償却する際の費用 |
修繕費 | 修理費用 |
賃借料 | 端末をレンタルした場合の利用料金 |
支払手数料 | 解約時の手数料 |
雑損失 | 解約時などの違約金 |
交通費 | 購入や手続き等に要した交通費 |
上記の経費を計上する際には、以下の科目もよく使われます。
科目名 | 代表的な経費の例 |
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仮払消費税 | 課税商品を購入した場合に、借方に計上する。税抜方式で経理を行う場合に使う |
現金 | 店頭など現金で支払った場合に、貸方に計上する |
普通預金 | 請求書払いなど銀行口座を介して支払った場合に、貸方に計上する |
未払金 | すでに購入済みのもので、支払いが終わっていない分の金額 |
個人事業主のなかには、同じ端末を仕事とプライベートで兼用する方がいるかもしれません。該当する場合は、仕事で使った分のみ経費に計上できます。事前に家事按分を行い、仕事で使う割合を確認しておきましょう。
法人携帯をどのように仕訳するかは、科目により異なります。科目や支出項目ごとに、どのような仕訳を登録すればよいか確認していきましょう。
なおこの記事では特記ない限り、税抜経理を採用するものとします。また支払方法は特記ない限り、請求書を受け取って法人の銀行口座から支払うものとします。
毎月発生する月額費用や通話料金、SMSで通信した費用は、「通信費」で計上します。以下の例を考えてみましょう。
上記は、すべて「通信費」にまとめられます。請求書を受け取った際の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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通信費 3,700円 仮払消費税 370円 | 未払金 4,070円 |
後日銀行口座から引き落とされる際に、以下の仕訳を行います。
借方 | 貸方 |
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未払金 4,070円 | 普通預金 4,070円 |
契約事務手数料は固定資産「電気通信施設利用権」に計上することが原則ですが、10万円未満の場合は損金にできます。回線当たりの契約事務手数料が10万円を超えるケースはなかなか無いため、結果的に契約事務手数料は「通信費」として計上可能です。
「Rakuten最強プラン ビジネス」の契約事務手数料は、3,000円(税込3,300円)です。1回線を契約した場合の仕訳を、以下に示しました。
借方 | 貸方 |
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通信費 3,000円 仮払消費税 300円 | 未払金 3,300円 |
後日銀行口座から引き落とされる際に、以下の仕訳を行う必要があります。
借方 | 貸方 |
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未払金 3,300円 | 普通預金 3,300円 |
携帯電話会社によっては解約する際に、解約手数料や違約金などの費用が請求される場合もあります。解約手数料は「支払手数料」として課税対象となる一方、中途解約の違約金は消費税不課税であり「雑損失」の科目で計上します。
現在利用中の携帯電話会社が、解約時に1,000円(税込1,100円)の解約手数料と、10,000円の違約金を請求するケースを考えてみましょう。手続き時の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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支払手数料 1,000円 仮払消費税 100円 雑損失 10,000円 | 未払金 11,100円 |
後日銀行口座から引き落とされる際に、以下の仕訳を行ってください。
借方 | 貸方 |
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未払金 11,100円 | 普通預金 11,100円 |
端末を購入した場合の科目は、1台当たりの価格や支払方法によって決まります。5つのケースに分けて、仕訳の方法を解説します。
1台当たり10万円未満の場合は、科目「消耗品費」を使い、購入した年度の費用として全額計上できます。8万円(税込88,000円)のスマートフォンを1台購入した場合の仕訳を、以下の表でご確認ください。
借方 | 貸方 |
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消耗品費 80,000円 仮払消費税 8,000円 | 未払金 88,000円 |
後日銀行口座から引き落とされる際に、以下の仕訳を行う必要があります。
借方 | 貸方 |
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未払金 88,000円 | 普通預金 88,000円 |
1台当たり10万円以上20万円未満の法人携帯を仕訳する方法は、3つあります。
1番の方法は「1台当たり30万円以上の場合」、3番の方法は次の「1台当たり20万円以上30万円未満の場合」をご参照ください。ここでは18万円(税込198,000円)で購入したスマートフォンを、一括償却する仕訳を解説します。購入時と銀行引き落とし時の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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一括償却資産 180,000円 仮払消費税 18,000円 | 仮払金 198,000円 |
仮払金 198,000円 | 普通預金 198,000円 |
決算時には3年間にわたり、以下の仕訳を行ってください。
借方 | 貸方 |
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減価償却費 60,000円 | 一括償却資産 60,000円 |
青色申告を行っている従業員500名以下の中小企業は「少額減価償却資産の特例」を活用して、社用携帯の購入費用をその年にすべて計上できます。上限は年度ごとに300万円です。この方法は、「1台当たり10万円以上20万円未満の場合」に該当するケースでも使えます。
ここでは20万円(税込22万円)のスマートフォンを購入したケースを例に、購入時の仕訳を確認していきましょう。
借方 | 貸方 |
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工具器具備品 200,000円 仮払消費税 20,000円 | 未払金 220,000円 |
後日銀行口座から引き落とされる際に、以下の仕訳を行ってください。
借方 | 貸方 |
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未払金 220,000円 | 普通預金 220,000円 |
決算時にスマートフォンの購入額を、一括して償却します。
借方 | 貸方 |
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減価償却費 200,000円 | 工具器具備品 200,000円 |
少額減価償却資産の特例を選ばず、本則どおり原価償却する方法も選べます。この場合は次の「1台当たり30万円以上の場合」をご参照ください。なお中小企業の定義は、国税庁「No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者」にあります。
1台当たり30万円以上の携帯電話は、本則に従って減価償却を行い、複数年にわたって費用を計上します。減価償却の年数は、以下の2通りの解釈があります。あらかじめ貴社の顧問税理士に相談するとよいでしょう。
また減価償却の方法は、以下の2通りから選べます。
ここでは30万円(税込33万円)で取得した携帯電話を、定額法を使い10年で減価償却するケースを考えます。購入時の仕訳を、以下に示しました。
借方 | 貸方 |
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工具器具備品 300,000円 仮払消費税 30,000円 | 未払金 330,000円 |
後日銀行口座から引き落とされる際の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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未払金 330,000円 | 普通預金 330,000円 |
決算時には以下のとおり、毎年3万円ずつ減価償却します。最終年の減価償却費は、1円少なくなります。
借方 | 貸方 |
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減価償却費 30,000円 | 工具器具備品 30,000円 |
分割払いを選んだ場合は、法人携帯の費用を数カ月にわたって支払います。この場合は支払いが済んでいない金額を科目「未払金」で計上し、購入費用を月々支払うたびに未払金を取り崩します。
ここでは8万円(税込88,000円)のスマートフォンを、20回払いで購入したケースを考えてみましょう。購入時の仕訳を、以下に示しました。
借方 | 貸方 |
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消耗品費 80,000円 仮払消費税 8,000円 | 未払金 88,000円 |
月々の支払額は、4,400円となります。これを完済まで、毎月仕訳します。
借方 | 貸方 |
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未払金 4,400円 | 普通預金 4,400円 |
なお分割払いで金利がかかる場合は、別途計上が必要です。
近年では、スマートフォンのレンタルサービスも登場しています。このサービスを使用してスマートフォンを借りた場合、料金は「賃借料」という科目を使って仕訳します。月額9,900円(税込)のスマートフォンを借りた場合、請求書が発行された時点での仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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賃借料 9,000円 仮払消費税 900円 | 未払金 9,900円 |
後日銀行口座から引き落とされる際の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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未払金 9,900円 | 普通預金 9,900円 |
法人携帯を使う際には、以下のように携帯電話本体以外にも必要な機器があります。
また状況によっては、以下の物品を購入するケースもあるかもしれません。
業務に必要なものは、科目「消耗品費」で仕訳します。ここでは100円(税込110円)のUSBケーブルを従業員が購入し、購入費を現金で渡したケースを考えてみましょう。
借方 | 貸方 |
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消耗品費 100円 仮払消費税 10円 | 現金 110円 |
スマートフォンの修理費用は、「修繕費」で計上できます。ここでは画面の修理に3,700円(税込)かかり、店頭で修理費用を現金で支払った場合の仕訳を示しました。
借方 | 貸方 |
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修繕費 3,364円 仮払消費税 336円 | 現金 3,700円 |
なお修繕費の代わりに、「通信費」や「消耗品費」で計上することも可能です。
スマートフォンの手続きを店頭で行う場合は、交通費がかかります。郵便で書類をやり取りするなら郵送費が必要です。またスマートフォンを他の拠点に送る場合は、送料を要します。これらは、以下の科目に計上できます。
スマートフォン1台を送った場合(送料1,120円、税込)で、送料を現金で払った場合の仕訳を以下に示しました。
借方 | 貸方 |
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通信費 1,019円 仮払消費税 101円 | 現金 1,120円 |
また店頭まで出向く交通費が片道220円(税込・現金で支払い)かかった場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 |
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交通費 400円 仮払消費税 40円 | 現金 440円 |
なおスマートフォンを販売する目的で送った場合、送料や梱包に使う資材は「荷造運賃」や「荷造発送費」の科目を使います。
法人携帯に関する費用は、具体的な内容によって勘定科目が異なります。発生した費用の詳細を把握したうえで、適切な仕訳を行いましょう。
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