RPAとは?ツール活用のメリットと導入事例をわかりやすく解説

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RPAは、2010年代後半から注目され始めた技術です。PC上の単純作業を自動化することで人手不足の解消や生産性向上を目指すもので、事務系の定型業務が多い金融業界や効果が出やすい大企業などから導入が進みました。現在では、低コストで利用できる製品やクラウドサービスも数多く登場し、企業にとってより身近な選択肢となっています。

この記事ではRPAの全体像を理解したうえで、実際に導入する際に気をつけたいポイントなどを交えてわかりやすく解説します。
RPAとは?ツール活用のメリットと導入事例をわかりやすく解説

RPA(Robotic Process Automation)とは

RPA(Robotic Process Automation)とは

RPAは、パソコンで作業可能な操作をソフトウェアロボットにより自動化する技術です。繰り返し行われる作業の効率化や生産性の向上を目的に使用されます。

具体的には、RPAツールが画面上の座標、アイコンやボタンなどの画像、ソースコードから解析した構造や属性などを認識し、対象に対して行われたクリック、入力などの操作を記録・再現します。操作の記録方法には、実際のPCを操作する方法、用意されたアクションを組み合わせる方法、コーディングする方法などがあります。

対象となるのは、システム化が難しいとされていた業務や、コストをかけられない業務、フローが変わる可能性がある業務などです。例えば、複数のWebサイトから商品価格を調べてリスト化する作業、クラウドサービスからファイルをダウンロードして、社内の販売管理システムへデータを登録する作業などが該当します。

今まで自動化に向いていないとされていた業務であっても、RPAであればコストや開発期間を抑えて自動化が可能です。

RPAの機能

RPAツールによる自動化は、データ入力、ダウンロード、アプリケーション操作など、PC上で完結する作業を対象としています。さらにAI-OCRと組み合わせることで、紙の帳票に書かれた手書き文字をデジタルデータに変換して処理することが可能になり、自動化の範囲が広がります。

キーボード、マウスを使用したパソコンの画面操作

  • 社員から送信されたメールに添付されたファイルをダウンロードし、サーバー上の特定フォルダへ格納
  • 複数のファイルを1つずつ開き、必要なデータを統合用ファイルにコピー&ペースト
  • 手書きの申込書の内容を読み取り、テキストファイルとして保存 等

システムをまたいだデータの転記

  • クラウドサービスからダウンロードしたCSVデータを社内の販売管理システムへ転記
  • インターネットで検索した交通費情報をExcelの入力内容と照合してチェック 等

アプリケーションの操作

  • 部門ごとに作成された売上データを並び替え、集計レポートを作成
  • 特定のタイミングで社員宛に通知メールを送信 等

RPAツールの種類

RPAツールは、動作する場所の違いによりデスクトップ型、サーバー型、クラウド型の3種類に大別されます。自社でツール導入を検討する際には、社内の運用難易度やコストなどを考慮し、ニーズに合ったタイプを選択すると無理なく運用できます。

【デスクトップ型】

デスクトップ型は、個別のPCにインストールするタイプのRPAツールです。多くの無料または低価格帯のツールがこのタイプに該当します。コストを抑えられるメリットがある一方で、組織で管理されていない属人化されたロボット(野良ロボット)が生まれやすいというデメリットがあります。

デスクトップ型RPAツールが向いているケース

  • 自動化したい範囲が狭い
  • 利用者が少ない
  • できるだけコストを抑えたい
  • トライアルで導入したい

【サーバー型】

サーバー型は、組織内に構築されたサーバーにインストールするタイプのRPAツールです。ロボットの管理や実行指示はサーバー側で行い、ネットワーク内のPC上でロボットが稼働します。同じロボットを複数のPCで稼働させることが可能なため、組織的に横断してRPAツールを運用したい企業やロボットを一元管理したい企業に適しています。

サーバー型RPAツールが向いているケース

  • 複数のPCで運用したい
  • ロボットを一元管理したい

【クラウド型】

クラウド型は、サービス事業者がクラウド上で提供しているRPAツールです。初期費用を抑えられるほか、利用企業側では保守作業が不要な点がメリットです。一方で、このタイプはクラウドサービスの自動化が主な用途であり、ローカル環境のシステム自動化には弱いというデメリットがあります。

クラウド型RPAツールが向いているケース

  • 社内にシステム担当部門(または担当者)が不在
  • 短期間で導入したい
  • 自動化の対象がWebブラウザやクラウドサービスである

RPAツールを導入するメリット

RPAツールを導入するメリット

RPAツールを導入することで、PC上の単純作業を自動化できます。これにより、労働時間の縮減、ヒューマンエラーの軽減、業務のデジタル化(DX推進)などの効果が期待できます。

作業時間の削減

人手で行っていた作業をRPAで自動化することで、作業時間を削減できます。ファイルのダウンロードや転記作業など、作業内容によっては90%以上の自動化が可能です。これにより生み出された時間は、企画業務などの生産性が高い業務に割り当てることで業務効率化にもつながります。またソフトウェアロボットは24時間365日稼働可能なため、人手不足の改善にも貢献します。

ヒューマンエラーの防止

ヒューマンエラーとは、その名のとおり人間が原因となり発生する間違いや事故のことです。単純作業や件数が多い作業は、不注意や疲労などによりヒューマンエラーが発生しやすくなります。ヒューマンエラーを100%防ぐことは困難ですが、RPAツールを導入してソフトウェアロボットが指定の操作を忠実に実行することで、人間に起因するミスを削減できます。

業務のデジタル化(DXの推進)

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術とデータを活用してビジネスモデルや組織を改善し、競争力を高める取り組みです。人手で行っていたアナログ作業をデジタル化・自動化することで効率化が実現するだけでなく、データの取得・分析を通じて業務改善に役立てることができます。さらに自動化により創出された時間を付加価値の高い業務に割り当てることでも、DXの推進を支援します。

RPA、Excelマクロ(VBA)、AI(人工知能)の違い

RPA、Excelマクロ(VBA)、AI(人工知能)の違い

RPAと混同しやすい技術として、ExcelマクロとAIがあります。いずれも自動化を支援する技術ではありますが、それぞれ特徴が異なります。

Excelマクロとの違い

Excelマクロ(VBA)は、人間の操作を記録して繰り返し実行できる機能です。後から編集も可能で、Microsoft Office製品の自動化に最適です。

RPAとの大きな違いは、自動化できる対象範囲です。ExcelマクロはOffice製品内の操作がメインですが、RPAはアプリケーションをまたいだ操作も可能で、自動化できる作業範囲が広がります。

AI(人工知能)との違い

AIは、人間のような知的活動ができるシステムです。膨大なデータを学習し、画像認識や需要予測といった高度な判断を行います。最近では、リクエストに応じてテキストや画像を作成する生成AIも登場し、ビジネスシーンで活用が広がっています。

一方RPAは、あらかじめ決められた作業を繰り返すシステムです。認識や識別に基づいた自律的な判断はできず、高度な判断を要する作業には適していません。

RPA活用で効果が出やすい業務とは

RPA活用で効果が出やすい業務とは

結論から言うと、RPAは「マニュアル化できる定型作業」かつ「発生頻度が多く、件数が多い作業」に活用すると、大きな時間削減効果が期待できます。社内の業務を洗い出し、RPAで効果が出やすい業務を選定するとスムーズに進められます。

RPAが得意な作業

RPAが最も効果を発揮するのは、マニュアル化できる定型的な作業です。例えば、データの転記やファイルのダウンロードなど、誰が行っても同じ手順で同じ結果が得られる作業が該当します。

RPAは記録した操作を繰り返す仕組みのため、決められた手順に沿った作業でないと自動化できません。そのため、イレギュラーがなく、マニュアル化できる作業がRPAツールによる自動化に適しています。逆に、ルールが煩雑な作業や担当者の判断が必要な作業は適しません。

導入効果が高い作業

RPAによる時間削減効果が大きいのは、発生頻度が多く、件数が多い作業です。例えば、毎日申込書の内容をシステムに入力する作業などが該当します。たとえ件数が多い作業であっても、発生頻度が低い場合はロボットによる効果はそれほど見込めません。逆に、頻繁に発生する作業であっても、件数が少なければロボットを作成するメリットは少なくなります。

RPAの導入事例

RPAの導入事例

RPAツールを導入して業務を自動化・効率化した事例を紹介します。

データのダウンロード作業の自動化

クラウドサービスを利用していると、定期的にクラウドサービス側からデータをダウンロードして社内システムにインポートする作業が発生することがよくあります。あるメーカーでは、商品の販売データをダウンロードして分析に活用していましたが、細かな分類ごとにダウンロード作業が必要で毎日1時間以上を費やしていました。

そこでRPAツールを導入し、ダウンロード作業をロボットに任せることにしました。その結果、大幅に労働時間が削減され、社員の作業負担も軽減されました。

申請書類のデジタル化によるペーパーレス化推進

RPAとAI-OCRを組み合わせることで、ペーパーレス化の推進も可能です。ある地方銀行では、各種申請書や依頼書など多くの紙帳票が発生していることから入力作業やチェック業務が職員の負担になっていました。

そこで紙帳票をスキャンしたPDFをAI-OCRによりデジタルデータ化し、システムへの入力作業をRPAに任せることにしました。さらに申請者の照合や回答作業もRPAで自動化することで、職員の作業負担を減らし、業務効率化やペーパーレス化を実現しました。

RPA導入時に気を付けたいポイント

RPA導入時に気を付けたいポイント

RPAツールを導入したものの、適切に運用できずに期待した成果が得られないケースが散見されます。そのような失敗を防ぐために、以下のポイントに気をつけることをおすすめします。

RPA人材の育成を行う

RPAを導入する際に特に重要なのは、並行して社内でRPA人材の育成も行うことです。実際にRPAツールを導入した企業の多くでは、ロボットを作成できる人員が限られており、エラー対応ができない、または自動化対象を拡大できないといった課題がみられます。

デスクトップ型やクラウド型RPAツールでは、現場で働く担当者(非エンジニア)がロボットを作成・修正する運用も珍しくありません。その場合に担当者がロボットを開発できるように適切なトレーニングを行うほか、サポート体制を構築して困ったときに頼れる環境を整えることが重要です。専用のサポートサイトや教育支援を提供しているツールベンダーや代理店もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

「ロボットは間違える」という前提で運用する

RPAツールで作成したロボットは、運用するなかで誤った動作をしてしまうことがあります。これは操作対象となるWebサイトのデザイン変更やブラウザの反応が遅く想定していたページが表示されないなどが要因で発生します。また、そもそもロボット作成時の指定が適切でない場合、正しくない作業を実行し続けてしまいます。

この状態のままロボットが稼働し続けると、気づいたときには大きな問題にまで発展する危険があります。ロボットは間違えるという前提で、定期的に誤動作がないかどうかチェックするなどの対策が有効です。

RPAを継続的に運用できる体制づくりが重要

RPAを継続的に運用できる体制づくりが重要

RPAは、直接的には人手不足の解消や生産性向上、間接的にはDXの推進に効果を発揮する技術です。低コストで利用できるツールが増えたことや、インターネット上にRPAツールに関する情報が増加したことなどを追い風に、市場は右肩上がりに拡大しています。しかし、大企業が順調に利用を伸ばしている一方で、人数規模が小さい企業ではそれほど導入が進んでいないのが現状です。

人手不足や競争力の強化に課題を持つ中小企業こそ、RPA導入の効果が表れやすいと考えられます。これからRPAツールの導入を検討する場合は、自社でどのようにRPAを活用し、どのようにツールを運用するかを検討し、ニーズに合致した製品を選定することが重要です。また継続的に成果を上げ続けるためには、RPA人材の育成など組織的な体制づくりが不可欠です。