LTEはLong Term Evolution(長期進化)の略で、3Gと4Gの中間にあたるモバイル通信技術です。登場当初はITU(国際電気通信連合)が定める4Gよりもスピードが少しだけ遅かったため、「3.9G」と呼ばれていました。その後、2010年にITUはWiMAXとともにLTEも「4G」と称することを表明します。
LTEの国内での提供が始まったのは、スマートフォンが台頭し始めた2010年からです。これを機に大容量のデータのやりとりが容易になり、スマートフォンのコンテンツに高画質動画配信や対戦型ゲームが登場、社内で必要なアプリケーションやデータをサーバーで一元管理するシンクライアントの導入などが進みました。
LTEには電話通信から発展したFDD-LTEとデータ通信から発展したTD-LTEがあります。FDD-LTEとTD-LTEの大きな違いは端末から基地局にデータを送る「上り(送信)」と基地局から端末にデータを受ける「下り(受信)」で使用する回線の周波数が分かれているかどうかです。この違いは電話通信とデータ通信の特徴が関係しています。
電話通信のメインは会話のやりとりを行う音声通話です。会話のやりとりを行うには音声データの送受信を同時に行わなければなりません。このとき同じ周波数を利用すると混線の可能性があります。そのため、送受信で別の周波数が使われています。また、送信と受信で使用するデータ量に大きな差はないので、送信と受信で使用する周波数の比率の調整は必要ありません。
一方、データ通信は動画を視聴したり、サイトを閲覧したりと受信のデータ量が圧倒的に多くなります。また、使用する際の送信と受信の比率も一定ではないため、送受信で周波数を分けるよりも同一周波数内で利用比率をその都度変更する方が効率よく利用できます。
送受信で別の周波数を利用するFDD-LTEと同一周波数内で送受信を賄うTD-LTE、2つのLTEはもともとの使用用途の違いで生まれました。前述のLTEはFDD-LTEでキャリアがいうLTEです。WiMAXやAXGPはTD-LTEで、モバイルルーターで使用されています。一部のモバイルルーターはFDD-LTEも併用しています。
LTEにおける主な技術は次の3つです。
それぞれの技術についてみていきましょう。
OFDMAとは「Orthogonal Frequency Division Multiple Access」の略で、日本語では「直交周波数分割多元接続」といいます。同一周波数帯を複数のユーザーで共有するための技術です。周波数軸と時間軸の両方で分割したチャンネルをユーザーのデータ使用量に合わせて分配・再分配する方式です。そのためより効率よく電波を利用できるので通信速度が速くなります。
MIMO(マイモ)は送信側と受信側の両方に複数のアンテナを立ててデータを伝達する技術です。略さずに言えばMultiple Input Multiple Output、つまりマルチ入力・マルチ出力です。送受信双方に複数のアンテナを立てデータの通り道を複数用意することで、通信速度を上げます。
QAMとは「Quadrature Amplitude Modulation」の略で、直交振幅変調というアナログ信号をデジタル信号に変調する技術の一つです。電波の振幅と位相を使用して変調を行います。QAMの前の数字が情報密度を表しています。情報密度が大きいほど多量のデータを一度に送れますが、伝送エラーも多くなっていきます。
LTEと3Gや5G、Wi-Fiなどの通信規格の違いについてみていきます。
LTEはキャリアの基地局を介して使用するモバイル通信回線です。LTE対応のスマホやタブレット、ルーターで利用できます。全国にキャリアの基地局が設置されているので、通信範囲はかなり広範囲にわたります。そのため、移動しながらの利用も可能です。ただ、キャリアのプランによってデータ通信量の上限が設けられており、上限を超えると通信制限がかかります。
対するWi-Fi(Wireless Fidelity)はLTEよりも幅広い機器でデータ通信を利用できる無線通信規格です。利用するにはWi-Fiルーターなど電波を発信する機器が必要となります。通信範囲はWi-Fiルーターなど機器の近くのみと限定的です。また、障害物があると通信が不安定になることがあります。通信速度は速く、データ通信量の制限は原則ありません。ホテルや商業施設などで誰でも利用できるフリーWi-Fiが提供されていることもあります。
厳密に言えばLTEと4G(4th Generation)は全く別物です。しかし、前述の通り「3.9G」だったLTEは2010年に4Gの一つの通信規格との公式見解が発表されました。その後、2015年頃にLTEをさらに進化させたLTE advancedという規格が登場します。2024年現在、LTEは4Gの仲間という認識が一般的です。
LTEと3G(3rd Generation)はどちらもモバイル通信回線ですが、使用されている技術が違います。3GはLTEよりも通信速度は遅いものの、通信範囲が広く、都市部のみならず山間部でもつながる安定した通信回線です。しかし、3Gサービスの取り扱いは2022年以降順次終了する予定です。
5G(5th Generation)もLTEと同じくモバイル通信回線です。4Gよりもさらに「高速大容量」「超低遅延通信」「多数同時接続」を目指して開発されました。日本国内では2020年からサービスが始まっています。普及が進めばDX(デジタルトランスフォーメーション)促進にも拍車がかかるでしょう。
5Gについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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5G対応のサービスエリアは拡大中!メリットと必要な項目を教えます
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LTEを利用することによるメリットとデメリットについてみていきましょう。
LTEのメリットとして、
この2点が挙げられます。
LTEは面倒な設定無しで、屋内・屋外を問わずサクサクと利用できることは言わずもがな。通信会社の基地局が全国に設置されているため提供エリアも広く、いつでもどこでも利用できる通信手段です。
LTEのデメリットは規定のデータ使用量を超えると通信速度に制限がかかることです。これは通信回線の混雑を防ぐために通信会社がデータ使用量に制限を設けているためです。Wi-Fiなどの無線通信ではこのような制限はないので、データ量の多い動画視聴や対戦ゲームなどを利用するときはWi-Fiに切り替えるといった工夫が必要です。
登場当初のLTEの最大通信速度は、理論上、下り326.4Mbps、上り86.4Mbpsでした。その後、LTE advancedが開発されます。LTE advancedでは「キャリアアグリゲーション」という技術が取り入れられています。キャリアアグリゲーションは複数の周波数帯を同時に利用し情報を乗せる搬送波を束ねることで通信の高速化と安定化を図る技術です。
キャリアアグリゲーションに加え、256QAMを採用(LTEは64QAM)、基地局と端末のアンテナを4本に増やすことで最大通信速度の理論値を下り3Gbps、上り1.5Gbpsと大幅に向上させました。
また、プラチナバンドといわれる「700MHz~900MHz」の周波数を利用することで、地下や建物の中など電波が届きにくかった場所でも安定して通信ができるようになりました。これまでプラチナバンドを割り当てられていた大手三社のキャリアに加えて、楽天モバイルも2023年10月23日にプラチナバンドを獲得しています。詳細については「 楽天モバイルはプラチナバンドを取得!プラチナバンドの重要性を解説 」をご覧ください。
リモートワークの浸透で出社せずに社外で仕事をするスタイルも珍しくなくなってきました。外部から社内ネットワークに接続する際に、気になるのが情報漏洩などの不測の事態です。対策としてWi-Fiなどの無線通信+VPNの利用などが考えられます。しかし、対策をしていても不正アクセスなどが起こることもあります。
そこでさらに高いセキュリティ対策として閉域網SIMが考えられます。閉域網SIMは通信事業者が提供する閉域LTEネットワークを使って拠点間をつなぐものです。通信業者が提供する専用のSIMをデバイスに入れてネットワークにつなぎます。インターネットを介さないため高いセキュリティを確保できます。
閉域網SIM の導入には物理的な工事などは必要ありません。SIMカードの契約だけでネットワークを利用できます。ただ、利用の仕方によってはランニングコストが高くなることもあるので、利用するプランの確認は必須です。
株式会社KDDI総合研究所が5Gを4G LTEと同一周波数帯内で共存させる新技術の実験に成功しました。同一周波数帯内で共存することで、5Gと4G LTEのリソースの割当が柔軟になり、周波数の利用効率が上がります。4G LTEから5Gへの移行過程でもユーザーの偏りを防げるので、通信品質が劣化する心配はありません。5Gと4G LTEがうまく共存すれば、それだけ4G LTEの存続も続くのではないでしょうか。
外部から安全にアクセスできる社内LANとして閉域網SIMを使う企業も増えています。モバイル通信としてはいずれ5Gに移行していくかもしれませんが、閉域網SIMを支える技術としてのLTEは将来性が見込めます。
LTEがどんな風に活用されているのか具体的に紹介します。
前述の通り通信事業者が提供する閉域LTEネットワークを使って高いセキュリティのクローズド環境のネットワークを構築できます。外部からの干渉も受けにくいので、機密性の高い情報を取り扱う工場や病院、学校などに向いています。
LTE対応パソコンならスマートフォンを使うように外出先で気軽にインターネットに接続できます。モバイルWi-Fiを別途用意したり、スマートフォンを使ってテザリングしたり、フリーWi-Fiスポットを探したり、煩わしい設定をしたりする必要もありません。
ドローンの操縦者は無線通信を利用しドローンを操縦します。そのため電波の届かない場所での利用はできません。LTE対応ドローンはLTE回線を利用しインターネットで接続できるので、電波が届かなくても利用できます。飛行中に電波が途切れた場合もLTE回線を使用して安全に着陸させることができます。
ここでは閉域網SIMとしてLTE回線を利用する場合に必要なものをみていきます。
上記の3つは必須です。Wi-Fiなどの無線通信であれば、LTEに非対応の機器も接続できますが、LTE回線を利用するならSIMカードを利用できる端末が必要です。
もともとモバイル通信技術として登場したLTEですが、5Gの登場で消えていくかと思われました。しかし、閉域網SIMを構成する通信手段として新たな注目を集めています。通信手段としても安定性や普及率から5Gにすぐにとってかわられることはなさそうです。