IP電話の基礎知識

IP電話はインターネットプロトコル(IP)を利用した通話サービスで、従来の電話回線ではなくインターネット回線を使用して音声通信を行います。これにより、通話料金が安く抑えられるのが最大のメリットです。そのため多くの企業や個人が利用しており、その数は年々増加傾向にあります。

固定のアナログ電話機からIP電話を使用する場合は、変換アダプタを利用することで対応できます。

さらに、多機能なクラウドPBXシステムを導入することで、内線通話やビジネス向けの各種機能が利用できるため、多様なニーズに応えられることかが普及率増加の一因と思われます。

しかしIP電話はインターネット環境が安定していることが前提であるため、回線品質が悪い場合や回線が混雑している場合は、通話品質が低下することがあります。そのため、利用にあたっては通信環境の確認や選択も重要です。

通信費節約!法人も使うIP電話

通信費節約!法人も使うIP電話

通信費節約のために、法人も多く使われているIP電話は、インターネット回線を使って音声通信を行うため、従来の電話回線に比べて通話料金が安くなります。特に国際電話や長距離電話で顕著な節約効果があります。

またIP電話は固定(アナログ回線)電話と異なり、新しく拠点やオフィスを増やす際、容易に通信網を広げられる拡張性、音声通話だけでなくビデオ通話・会議、メッセージの送信などの多様性、CRM(顧客管理)システムなどとの連携も可能なため、様々な面でビジネスの効率化が図れます。

実は全然ちがう!固定電話とIP電話の違いはズバリ4つ!

実は全然ちがう!固定電話とIP電話の違いはズバリ4つ!

固定電話とIP電話の違いを通信方式、通信料金、モビリティ性、機能と柔軟性の4つの観点から述べてみましょう。

1.通信方式

IP電話はインターネット回線。音声データをパケット変換して送受信

IP電話はインターネット回線を利用した通話サービスであり、通信方式はインターネットプロトコル(IP)に基づき、音声データをパケットに変換してインターネットを介して送受信しています。通信量に対する追加費用が発生することが少ないのが特徴です。

専用の電話機はなくても、スマートフォンやパソコンを使って通話できるため、多様な環境で利用されています。

固定電話はアナログ通信方式

固定電話は、従来から使われてきたアナログ通信方式を採用しており、音声を電気信号に変換して伝送します。この方式は歴史が古く、インフラが整っているため安定した通話が可能です。

アナログ回線は音声通話に特化しているため、ビデオ通話や会議機能などの付加価値を提供することが難しい面があります。

固定電話はアナログ回線が全国に普及しており、緊急時の通話やセキュリティの面でメリットがあるため、現在でも一定の需要があります。

2.通信費用

IP電話は低コスト。地域や国を問わず安価な通話料金

IP電話はインターネット回線を利用するため、通信費用が従来の固定電話と比べて低コストであることが魅力です。通話料金が安く、一般的に固定で設定されていることもメリットとなっており、国内外を問わず、通話がしやすい環境が整っています。

特に企業向けには、無料の内線通話や、低コストでビデオ通話・会議が可能なサービスも提供されており、コスト削減や効率化の面で非常に有益です。

固定電話は距離や通話時間で料金が高くなることも

固定電話の通信費用は、月額基本料金に加えて通話料金がかかるため、IP電話と比較すると高くなることがあります。アナログ回線を利用するため、通通話距離や通話時間に応じて料金が変動します。特に長距離通話や国際通話では、通話料金が高くなる傾向があります。

しかし、アナログ回線の安定性や緊急時における信頼性が求められる面からは、一概にはコスト高とも言えません。

3.モビリティ性

IP電話はネットがつながればどこでも接続可能

IP電話はインターネットに接続できる環境が整っていれば、どこでも利用することができます。これはビジネスシーンで特にメリットが大きく、外出先や自宅でもつながるため、業務の効率化が図れます。

仕事で多くの人と連絡を取る場合にもスマートフォンやタブレットに専用アプリをインストールしておけば、通話がすぐにできるため、利便性だけでなくビジネスチャンスを逃しません。楽天モバイルの場合、通信エリアの人口カバー率は99.9%ですので、ほぼ全国でIP電話を使うことができます。

  • 2023年6月時点。人口カバー率は、国勢調査に用いられる約500m区画において、50%以上の場所で通信可能なエリアを基に算出。

固定電話は所定の場所からの通話に限られる

固定電話は所定の場所からの通話がメインであり、電話機が設置されている場所でのみ使用できます。モビリティが低いというデメリットがあるものの、電話回線が独立しているため、通話品質は安定しています。

固定ゆえ、電話機の設置や工事費用が発生することがデメリットとなっていますが、まだまだ高い普及率を誇っています。

4.機能と柔軟性

IP電話は拡張性が高く多機能

IP電話の大きな魅力は機能と柔軟性です。IP電話はデジタルデータをやりとりするため、音声通話以外にもビデオ通話・会議通話やチャット機能を利用でき、拡張性が高いことから柔軟なカスタマイズが可能です。

ViberやLineなどの専用の通話アプリやCRM、SFAなどウェブサービスと連携させることで、さらに多機能化が望まれます。またコールホールディング、コール転送、ボイスメール、自動応答(IVR)など高度な通話機能を搭載したサービスもあります。

固定電話は音声通話がメイン機能

固定電話は主に音声通話を目的としているため、機能面ではIP電話に比べてシンプルです。音声通話に特化したシステムのため、通話品質が高く安定しており、緊急時の連絡先としても重要です。

昨日の追加やカスタマイズが難しいことがありますが、一部の電話会社ではコール転送、ボイスメール、3方通話などのサービスもあります。

音声通話がメインの業務を行っている企業や、緊急連絡を必要とする場面では、固定電話が適切と言えます。

IP電話のメリット・デメリット

IP電話のメリット・デメリット

IP電話はインターネット回線を利用した通話サービスで、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここでは主にビジネスの面に重点を置き、メリットとデメリット双方について解説していきます。

メリット1:低コストの国際通話でグローバル・コミュニケーション

IP電話はインターネット回線を利用することによる通信コストの削減が見込まれることは前述の通りですが、もっとも恩恵を受けられるのが国際通話です。アナログ回線の固定電話の場合、国際通話は高額な料金がかかることが一般的でした。しかし、IP電話は国境をまたぐコミュニケーションでも料金を気にすることなく、グローバルなビジネスを円滑に進めることができます。Skype、Zoom、LINEなどのアプリでは国際通話を無料で利用できます。

一部の国や地域では、通信制限や国外サーバのアクセスを制限している場合もあります。

メリット2:オンライン会議、ボイスメールなど多彩な機能でリモートワークをサポート

現代の働き方の変化に伴い、リモートワークが一般的になってきました。IP電話はこうした状況においても大きなサポートを提供します。インターネットに接続されたデバイスがあれば、オフィス、自宅、移動中など、場所を選ばずに電話通話やオンライン会議システム、ボイスメールサービスをIP電話一つでまとめて利用することができます。

効率的なコミュニケーションが実現できると共に、従業員の柔軟な働き方をサポートする側面から、新たなビジネスチャンスも生まれるかもしれませんね。

メリット3:クラウドPBXの利便性を享受

PBX(Private Branch Exchange)とは電話交換機のことです。従来のPBXはオフィス内に電話通信を管理・制御するハードウェアが必要でした。しかし、クラウドPBXはその機能をクラウドサーバに格納するため、物理的なハードウェアや保守が不要となります。

そして、企業は手軽に高度な通信機能やサービスを受けることができます。クラウドPBXへの回線はインターネットを利用するため、アナログ回線では難しく、IP電話が適していると言えます。

デメリット1:インターネットの依存。接続は切れると通話ができない

IP電話のデメリットのひとつは、インターネットに依存していることです。インターネット接続が切れてしまうと、通話ができなくなります。インターネット回線が混雑している時間帯や、回線トラブルが発生した場合に通話が困難になることがあります。

企業はインターネット回線の安定性や品質を確認し、キャリア(通信会社)プロバイダなど適切な通信手段を選ぶ必要があります。

デメリット2:通信品質の変動。ネット環境により音声等に影響が

IP電話の2つ目のデメリットとして通信品質の変動が挙げられます。インターネット通信ではデータがパケットという単位で送受信されるため、その到着順序が乱れると、回線の状態によっては音声の遅延や途切れ、エコーが発生し、快適な通話ができないことがあります。

大切な商談利用の場合は、従来の固定電話や携帯電話がおすすめです。しかしIP電話の通信品質は技術の進歩により向上しています。

デメリット3:緊急通報や停電では利用できない

3つ目のデメリットとして、緊急通報や停電時の利用制限があります。一般的なIP電話サービスでは、110番や119番への緊急通報ができない場合があるため、注意が必要です。

また、停電時にはインターネット回線が利用できなくなるため、IP電話も使用できません。これに対して、固定電話は電話回線を通じて電源が供給されるため、停電でも通話が可能です。

IP電話を検討する際は、このデメリットを考慮し、他の通信手段と併用することをおすすめします。

固定電話(アナログ回線)のメリット・デメリット

固定電話(アナログ回線)のメリット・デメリット

固定電話のメリットには、通信品質の安定性や緊急通報ができる点が挙げられます。一方でデメリットとして、料金が比較的高く、移動時の利用が難しい点があります。

ここでは主にビジネスの面に重点を置き、メリットとデメリット双方について解説していきます。

メリット1:安定した通信品質と信頼性

アナログの固定電話の歴史は古く、国内では1890年に東京と横浜の間で開始されました。長年使われてきた成熟した技術のため、故障が少なく安定した通話品質を保ちます。

また電源の独立性も確保されているため、天候やネットワークの混雑に左右されず、停電時も通話が可能です。通話面においては、ビジネス、個人利用に限らずもっとも安定した通信環境と言えます。

メリット2:国際電話を使わず、国内近距離なら安価な通話料金

特に国内近距離において、アナログの固定電話は一定の料金体系が確立されており、比較的安価な通話料金で利用できます。NTT東日本とNTT西日本では固定電話同士の通話料は3分9.35円と全国一律料金です。また固定電話から050IP電話への発信は3分11.55円となります。

予算を抑えながら、日常のコミュニケーションに利用可能です。

  • 2023年10月現在

メリット3:災害時、緊急時も安心。安定的に活用

アナログの固定電話は、電話会社の中央局からの電話回線を通じて必要な電力を供給されます。このため、会社内の電力供給が途絶しても、電話会社の中央局が作動していれば、固定電話は動作し続けます。

停電が発生した際、多くの家電製品やデジタル機器は停止しますが、アナログの固定電話は上記の理由により通話が可能です。これは、災害時などの緊急事態での情報伝達や救援要請に非常に役立ちます。

デメリット1:親機と子機くらいの距離が限界。モビリティ性の制限

固定電話はユーザーが移動しながらの通話には適していません。障害物のない状態で、親機と子機の通信距離は100mが限界です。

しかし、企業においてはPBX(電話交換機)を導入することで、社内内線での転送、複数のビジネスフォン利用等でその制約はある程度緩和できます。

デメリット2:一般的に国際通話の料金は高額になることも

IP電話などの新しい技術は、通信を効率的に行うことができますが、アナログの固定電話はこれらの技術の恩恵を受けにくいため、従来の国際電話回線等を使います。そのため、料金も割高になります。国際電話の通話料は通話料×通話時間で算出されます。

通話料は国や地域ごとに異なり、NTT東日本の場合、米国は9円/分、イギリスは20円/分と比較的安価ですが、北朝鮮129円/分、イラク225円/分と高価になります。

  • 2023年10月現在

デメリット3:引っ越す場合は電話番号が変わることも

固定電話のデメリットとして、引っ越しの際に電話番号が変わることがあります。企業や店舗などで固定電話を利用している場合、電話番号の変更は大きな影響を持ちます。顧客や取引先に新しい番号を知らせる必要があり、名刺や広告、ウェブサイトの情報の変更も必要となります。

IP電話と固定電話、ニーズで選ぼう

IP電話と固定電話、ニーズで選ぼう

ここまで解説したように、IP電話と固定電話にはそれぞれのメリットとデメリットがあります。国際通話の利用が多い場合、通信コストを削減したい、または通話の拡張性を望まれる場合はIP電話を、通話品質の安定性や緊急時・災害時の通話確保などを望まれる場合は固定電話をおすすめします。

例えば、リモートワークや多拠点のオフィスを持つ場合、IP電話の柔軟性が役立つかもしれません。一方、シンプルで安定した通話が主な目的であれば、固定電話が適している場合もあります。

最適な選択をするために、会社のニーズやシーンに合ったサービスを検討しましょう。