医療法人正幸会 正幸会病院 様

業種
医療・福祉
企業規模
1~100名
回線数
1~100回線

セキュリティと業務効率化を両立する医療DX

DX推進に力を入れている医療法人正幸会 正幸会病院(以下「正幸会病院」)。
積極的に遠隔医療を実施するだけでなく、独自のクラウドシステムの開発や診断画像のAI解析、2024年には「病院広報アワード SNS部門優秀賞」なども受賞しています。その活動の中でも最も注目されているのは日本で初めてクラウド・ネイティブ型の電子カルテを導入・運用していることです。

院長の東様は「医療現場のシステムはすべてWebクラウド化すべき」と、DXのスピードを緩めません。今回はDX推進の一環として、楽天モバイル法人サービスの導入に至った経緯や、現場での活用方法などを伺いました。病院やクリニックのDXをお考えの医療従事者の方々に向けて、今後の展望や対策なども記載しているのでぜひお読みください。

課題を解決
電子カルテのセキュリティを強化したい
生体認証システム導入により、セキュリティが強化され、業務効率が向上
スタッフ間コミュニケーションの改善
Buddycomを活用したリアルタイムの情報共有で、業務が迅速化
業務の属人化を減らしたい
スマホ活用で円滑な情報共有や安全な診療体制が実現
院長 東様

導入背景

DXのキーポイントとなる”クラウド・ネイティブ型電子カルテ”へ移行するために

今回お伺いした正幸会病院はどんなきっかけで DX に踏み切ったのでしょうか。院長の東様に伺いました。

東様「医療事務スタッフ2名が同時に辞めると言ったことがきっかけです。当時は紙のカルテを使っており、業務が属人化されていることやアナログ業務のリスクを痛切に感じ、それ以来、成長戦略の柱をDXとして進めてきました。

まずは紙カルテを廃止し、“オンプレミス型”の電子カルテを導入しました。オンプレミス型の電子カルテとは、院内にサーバーを設置し、専用端末にソフトをインストールして使用するものです。他にも様々なクラウド型のデジタルツールを積極的に導入しましたが、電子カルテとレセコンだけはオンプレミスのままで、クラウド型を取り入れたいと思っていました。そこで複数の業者に話を聞いたものの、『クラウド型電子カルテです』と説明されても、実際にはクラウドリフト型という、オンプレミスのサーバーをクラウド上に移しただけで、体感はオンプレミスと変わりがないものばかりで、導入には至りませんでした。そんな中、ヘンリーの林社長との出会いがあり、まだ開発途中ではありましたが、まさに私が求めていたイメージそのもので、アクセスのしやすさ、膨大な情報量にも耐えうるスケーラビリティに加え、クラウドを活用した最新技術の導入のしやすさや高セキュリティな点が医療現場にぴったりでしたので導入を決定、当院は国内初のクラウド・ネイティブ型の電子カルテを運用する病院となりました。」

クラウド・ネイティブ型電子カルテ:クラウド上にサービス環境を構築、Webブラウザで利用が可能。

採用の決め手

スマホ導入でセキュリティ強化と利便性確保

東様「クラウド環境で動作する電子カルテシステムを運用するにあたり、データの安全性を確保した状態でSaaSにアクセスすることが課題でした。大切な情報は高セキュリティのクラウドに保存されていますが、スタッフのログイン認証精度を高めたいと考え、多要素認証※1によるログインを導入しました。なかでも生体認証ができる機能面や、コスト面においてスマホは楽天モバイルがベストという結論に至りました。
当院は「業務はWebクラウドで」という方針で、多くのSaaSを利用しており、SSO(シングルサインオン)※2を利用しています。これにより、スタッフはスマホからの生体認証ですべてのシステムへのログインが可能になり、セキュリティの入口対策が実現しました。ID・パスワードを何度も入力する手間がなくなり、スタッフからも大変喜ばれています。

さらに、医療の質にもよい影響をもたらしてくれました。当院では「正幸会フライホイール」という「すばらしい患者体験→集患→患者のニーズ把握・分析→よりよい診療体制の構築」というPDCAを回すことで、医療の質向上を図るモデルがあります。その中心にあるのがクラウド・ネイティブ型電子カルテと、SaaSへのアクセスを可能にする生体認証システムです。Rakuten最強プラン ビジネス(以下「法人プラン」)の導入で、この回転速度が上がり、効果を生んでいます。

法人プラン採用の決め手は生体認証システムですが、その他にもBuddycomというハンズフリーの院内インカム、クラウドPBXというソリューションも導入し、DX推進にむけて活用しています。」

  • ※1多要素認証とは、認証の3要素である「知識情報」、「所持情報」、「生体情報」のうち、2つ以上を組み合わせて認証すること。(NRIセキュア ブログ「多要素認証とは?パスワードだけでは守りきれないクラウドのセキュリティ」2024年5月)
  • ※2認証1つで複数のシステムにアクセスできるしくみ。

活用方法①

スマホとBuddycomで外来患者へのスムーズな対応

Buddycom(バディコム)とはアプリをスマホにインストールするだけで、通話やチャットなどを使えるコミュニケーションツールです。正幸会病院では、Buddycom(バディコム)アプリが入ったスマホをもち、インカムと連動させています。医療現場の様々な活用方法を外来看護師主任の宮城様へ伺いました。

宮城様「当院では医師だけでなく、外来受付、検査技師、レントゲン技師、看護師など業務に関わるスタッフ全員がBuddycomを使っています。例えば患者さんがいらっしゃった際、受付から「◯◯さんがいらっしゃいました。」とリアルタイムに連絡が入ることで、各担当は準備をすることができます。このように来院情報を、全フロアのスタッフが瞬時に把握することで、事前の作業がスムーズになりました。これまでは来院時間が予定より遅れている患者さんが来ているか受付まで見に行ったり、確認の電話をかけたりしていましたが、その作業がなくなったことで、業務が円滑に進んでいます。
診察や検査が終わったときも「◯◯さん終わりました。胃がちょっと荒れていたので、お薬処方希望です。」と一言入れるだけで、受付スタッフは追加処方のお会計などと、自分の業務に紐づけて準備し、段取りがスムーズになります。こういった作業はスマホを取り出して行うわけではなく、すべてBuddycomで行います。」

活用方法②

音声テキスト化機能で業務効率化

宮城様「BuddycomはLINE WORKSにも連携されているため、話したことがすべて文字情報としても残ります。
患者さんとお話していて、聞き逃してしまった場合でも後からスマホの画面で再確認できるので、お薬の処方忘れなどが少なくなりました。文字情報が保存されるおかげで、言った言わないのトラブルも減り、業務の申し送りなども簡略化されました。」

活用方法③

患者さんの待ち時間を軽減、Buddycomによる情報共有

宮城様「Buddycomは情報を聞くだけでなく、誰もが発信できます。患者さんによっては、検診をした後に本人希望でCTオプションを追加し、その後エコーを行い、胃カメラに行くなど複雑な行程を進む場合もあります。
これまでの連絡手段はPHS※だったため、複数人への電話や、伝達ミスなどで患者さんにご迷惑をおかけする場合もありました。しかしBuddycomは一度に全員と情報共有ができるため、「エコー少し遅れてます。」や「患者さんの順番の入れ替え可能ですか。」等調整がしやすくなり、患者さんがいつ自分の担当部署にいらっしゃるのかと不安になることもなくなりましたし、患者さんをお待たせすることも少なくなりました。」

  • PHSとは、移動型無線通信機器のこと。

活用方法④

リアルタイムの情報共有がスタッフのナレッジ共有へ

宮城様「Buddycomの一斉配信機能のおかげで、スタッフのナレッジ共有に役立った出来事がありました。
「非常に珍しいケースの検体を取ったが、その対処方法が分からない」とあるスタッフからBuddycomに連絡が入りました。対処法を把握しているスタッフが「後ほど対応するので置いておいてください。」と連絡を入れたところ、別のスタッフから「私も知らないので教えてほしい。」との声が入り、複数人で対処法を学ぶことができました。

現場で誰に聞けばよいかわからない場合も、Buddycomのおかげですぐに対処法を聞くことができ、スタッフへの知識共有も可能になります。このように業務連絡だけでなく、情報共有やナレッジ共有という活用方法も発見でき、医療の質向上にとても役立っています。」

導入検討者へ

スマホによるセキュリティ強化と業務効率化を両立するDX導入

東様「病院にはPHSを使う文化が根強く残っています。しかし1対1のコミュニケーションしか図れない、電波が届かないなどの課題があります。現代は誰もが所有しているスマホ時代、業務アプリもスマホに一本化でき、さらに複数人で同時にコミュニケーションを図れるので、ぜひ多くの病院で取り入れていただきたいと思います。

私は医療DXの観点において、医療システムはすべてクラウドサービスで統一されるべきという考えが根底にあります。そこでもっとも重要なことがセキュリティを高めることです。IDとパスワードだけだと、情報漏洩や盗難に遭う可能性があります。そこで多要素認証を持つスマホを使い、特に高度な個人情報を扱う電子カルテにアクセスするときは、生体認証機能を持つスマホを使って業務にあたること。これが日本の医療の未来の姿だと思います。その上で法人プランを導入したことは、導入のしやすさやコスト面から考えても非常に重要だと感じています。
今後は、他の病院でもクラウド・ネイティブ型電子カルテに移行される機会が増えてくると思います。その際は楽天モバイルをパートナーとして、多くの病院で医療DXがより広がればよいと思っています。」

医療業界におけるDXの遅れとその背景

スマホを活用したDXでセキュリティ強化と業務効率化

東様「他業種と比較して、医療業界のDXが遅れているのは事実です。その要因は1つではないと思われます。
例えば個人情報には高度な医療情報が含まれる大切なものですが、医療者側の先入観や固定概念で、インターネット上への保存は危険という考えが存在するのも確かです。また、IT情報をアップデートする時間がなく、大切な医療情報は病院の敷地外へ持ち出してはいけない、院内のサーバー内がもっとも安全と思われている方も多いと思います。さらに、クラウド・ネイティブ型電子カルテを開発するには技術的に高いハードルがあることも要因の1つです。クラウド・ネイティブ型ではなく、オンプレミス型のようなシステムを導入した結果、病院は利便性を実感できず、医療費の増額や、非効率化などにつながっていることもしばしばあります。

私は現在医療業界や他院へDX推進を加速させるべく、協力活動なども行っていますが、実感として動きは遅いです。やはり大きく重たいものは、最初の動きはゆっくりなのかもしれません。日本の医療DXは遅れていますが、欧米と比較して患者さんの満足度は高いと言われています。私たちは、日本全体で質の高い医療を患者さんへ届ける環境にすることを目指しています。DXだけではなく、満足度を犠牲にしない日本独自の取り組みが必要かもしれません。
その本質を忘れずに、当院の成功例をもって指針を示していける存在になりたいなと思っています。そして、DX推進のサポートとして楽天モバイルはパートナーとして外せない企業であると確信しています。」

※ 掲載内容は取材当時のものです。

営業担当者

担当営業からのメッセージ

法人営業部 営業課

岡田 尚也

楽天モバイルでは、病院や医療機関のDX推進をサポートしています。正幸会病院様ではスマホ・クラウドPBX・Buddycomを活用し、院内・院外通信を導入させていただきました。
これからも多くの医療機関様のDX推進のお手伝いで、医療現場の一助となれるよう努めてまいります。