皆さまのなかには、「データドリブン経営」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。これからの事業運営において、重要なキーワードとなる用語です。データドリブン経営は、単なるデータの活用にとどまりません。データを踏まえた意思決定を行うことで、会社の発展につなげることが可能です。
この記事ではデータドリブン経営について、詳しく解説します。求められる理由や事業にもたらす効果をとおして、顧客満足度と業績を向上させるきっかけにしてください。
データドリブンとはあらかじめ集めたデータを分析したうえで、判断や意思決定を行うプロセスです。データに基づく結果をベースとして、課題の解決に向けた施策を立案することは代表的な例です。これは「KKD」と呼ばれる、「勘、経験、度胸」に頼った手法と大きく異なります。
データドリブンは適切なデータを用意できれば、担当者レベルでも取り組めます。経験の浅い従業員でも、適切な判断を行いやすくなるでしょう。
データドリブン経営とは、集めたデータの分析結果をもとに組織や企業の意思決定を行い、事業戦略や経営方針を決める手法です。従来の慣行や過去の経験などにとらわれず、数字などの客観的なデータを基準とします。
データドリブン経営は経営トップが積極的に関与し、会社レベルで取り組む必要があります。成功に導くためには、データ活用の基盤を整備することや組織風土の変革も求められます。
データドリブン経営が求められる理由は、4つあります。それぞれの背景も含めて解説します。
変化の激しい時代には、想定外の事態が頻繁に起こります。データドリブン経営なら、データを詳細に分析することで、対応策を理論的に決定できるでしょう。経験や感覚を優先する経営では、未知の状況に直面した場合に柔軟で適切な対応は難しくなりますが、データドリブン経営なら、事業環境の変化や未知の状況でも、根拠ある判断と適切な対応が可能です。
現代では、消費者・事業者ともに、さまざまなチャネルを利用して商品情報の入手から購入までを行う環境が整っています。営業担当者や店員と全く顔を合わせることなく、SNSや口コミを参考にしながら好みの商品を手に入れることも可能です。
企業はこのような状況の変化にも対応し、利益を上げなければなりません。購買や契約につながる行動が多様化した時代では、データを用いて顧客に合ったアプローチが必要です。個々の顧客に適したコミュニケーションを行う「One to Oneマーケティング」はその一つです。
対面での営業活動において顧客の納得を得るためには、客観的で根拠ある理由が必要です。数字など、データを用いた説明をすることで説得力を増すことができます。法人向けの営業では、その傾向がより強まります。データ活用が進まない企業は、製品やサービスが選ばれにくくなり、競合他社に劣ってしまうおそれがあります。
データを活用するハードルが下がったことも、データドリブン経営が求められる理由の一つです。IT技術の進化により、データの収集や分析に関する負担は下がりました。いまやインターネットを活用して多種多様なデータを収集でき、AIなどを用いてデータを分析するサービスも提供されています。
今後、経営にデータを生かさない企業は競合他社よりも劣位となり、シェアを落としやすくなります。これまで「KKD」で経営を進めてきた企業も、データドリブン経営に舵を切らざるを得なくなるでしょう。
データドリブン経営は事業運営に5つの効果をもたらします。その効果について、それぞれ解説します。
データドリブン経営を進めると、日々の状況や変化を迅速につかめます。客観的なデータに基づいて状況を正しく把握し、マーケットの変化にも柔軟に対応できるでしょう。現状に即した迅速な判断が可能となるため、タイムリーな製品やサービスの提供により機会損失を防げます。
データドリブン経営では、データを用いて顧客の動向やニーズを可視化することにより、顧客にマッチする製品やサービスの提供などニーズに沿った施策を打てるようになります。
データドリブン経営では、データの活用によりリアルタイムの実績値を踏まえた対応をいち早く講じることができるメリットもあります。例えば製品を製造する工場の場合には、需要の高さを優先して工場の稼働時間を延長して機会損失を防ぐ対応をとるべきなのか、原価率の高さを優先して生産性の向上やコスト削減への取り組みを取るべきかを迅速に判断できるようになります。
データを分析する過程において、営業担当者が知らないようなニーズが可視化されることで、新しい顧客のニーズを発見できることがあります。
「データ」という現実に対して真摯に向き合うことで、顧客に支持される新たなビジネスの創出につなげることが可能です。
データドリブン経営は属人化を防ぎ、変化に対応できる組織作りを支援します。誰でも扱えるデータと明確な判断基準により、誰でも判断や作業にデータを活用しやすくなるでしょう。
データドリブン経営の実現には、以下に挙げる7つのステップを踏む必要があります。
正確な判断を下すためには、どのデータをどの範囲で集めるか、どのツールを用いるかという項目にも重点的に取り組む必要があります。
データドリブン経営の実現に必要なポイントを確認していきましょう。
データドリブン経営では、収集したデータに変化の兆候が見つかれば、事業の運営方針を変えることになります。これまでの進め方にこだわらず、データに基づいた戦略を立て、業務のなかで実行していかなければなりません。データを重視し変化をいとわない組織風土づくりが重要なポイントとなります。
データドリブン経営では、データをどう収集するか、また収集したデータをどう分析するかという工程が重要です。このため、データ分析に関するスキルを持つ人材や職種が求められるでしょう。代表的な職種を、以下に示します。
職種の種類 | 職種の説明 |
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データエンジニア | データを収集する仕組みを開発・運用する |
データアナリスト | 収集したデータを分析して、適切な意思決定や施策に寄与するインサイトを見つけ出す |
CDO | 「Chief Digital Officer」(最高デジタル責任者)の略。企業のデジタル化を推進し、データを活用して競争力を高める業務を担う責任者 |
データドリブン経営では、迅速にデータを入手し分析することが必要なため、システムの扱いやすさは重要です。扱いやすいシステムは活用する機会が増えるため、アウトプットを事業に生かす機会も増えます。事業運営への貢献度も大きくなるでしょう。
データドリブン経営に活用するシステムは、信頼性の高さも重要です。頻繁にトラブルが起こるシステムは業務で使われにくくなり、事業への貢献度も下がってしまいます。
変化が激しく顧客の興味・関心も多様化した現代において、「データドリブン経営」により時代の変化や顧客の期待に素早く応えることができます。これからの時代に勝ち抜く企業となれるよう、データドリブン経営への取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。