データベースを導入し、活用したいと考える企業は多いのではないでしょうか。データベースを活用するためには、データベースの種類や仕組みを理解しておく必要があります。本記事では、データベースとはどのようなものなのかについて、活用事例も紹介しつつ、解説します。
データベースとは、特定のルールに基づいた構造で整理された情報の集まりのことです。大量のデータの検索や分析、共有などを効率的に実行できます。顧客や在庫の管理、電子カルテなどさまざまな場所で利用されています。
データベースは大きく分類すると、階層型データベース・ネットワーク型データベース・リレーショナル型データベース・NoSQLの4つになります。現在の主流は、リレーショナル型データベースとNoSQLデータベースです。それぞれのデータベースの特徴を詳しくみていきます。
階層型データベースは、ツリー型構造になっているデータベースです。階層型データベースでは、上位データ(親)は複数の下位データ(子)を持ちますが、下位データに対する上位データは1つだけです。下位データへのルートは1つに限定されるため、検索のスピードが速いことが特徴です。
しかし、下位データに複数の上位データが必要になる場合は、複数の上位データの下に同じ下位データを登録する必要があり、データの重複が起こります。データが重複すると、情報を更新する際にすべての重複するデータを更新しなければなりません。複数の重複データを更新すると、更新漏れが発生しやすく、データの一貫性を保つことが難しくなります。
また、最下位データ以外の部分にデータの追加や削除を行うと、以降の下位データへのルートが変わって構造自体が変更になるため、データ管理が煩雑になる原因となります。
階層型データベースは、パソコンのファイルを格納するディレクトリや製造業で製品を構成する部品リストなどに用いられています。
リレーショナル型データベースが普及する前に主流であったネットワーク型データベースは、階層型データベース同様に、上位データ(親)と下位データ(子)という関係性があります。しかし、ネットワーク型データベースの下位データは、複数の上位データを持つことが可能です。関連するデータを紐づけて多対多でデータを管理するため、重複登録は発生しません。
多対多のデータ構造を持つため、階層型データベースよりも多様なデータアクセスが可能になります。その反面、複雑なデータ構造を理解するために、高度な知識が必要となることもあります。ネットワーク型データベースは、航空業界で現在も利用されています。
現在最も広く使われているデータベースの一つであるリレーショナル型データベースは、レコード(行)とフィールド(列)で構成されるテーブル(表)にデータを蓄積し、行単位のデータを操作します。データの操作には、データベース言語のSQLを用います。
柔軟性が高く、テーブル同士を組み合わせて、新たなテーブルを作れます。複数のテーブルを組み合わせることで、より複雑な関連付けも可能です。また、ACID特性の標準規格を満たすトランザクション処理を行うことで、データベースに不整合が生じないようにできます。
複雑な関連付けが可能なため、情報量が多いデータを扱う場合は、処理速度が落ちてしまうという欠点もあります。また、区切りに規則性のないテキスト、PDF、音声、画像、動画などの非構造化データは、リレーショナル型データベースでは扱えません。
データの一貫性の高いリレーショナル型データベースは、金融業界やインターネット通販など、データの整合性が最重要なシステムに広く活用されています。
最近ニーズが高まっているNoSQL(Not Only SQL)データベースは、リレーショナル型データベースではないデータベースの総称とされています。リレーショナル型データベースが苦手とする構造化されていないテキスト、PDF、音声、画像、動画といった形式のデータをそのまま格納できるデータベースです。
データの保存方法の違いにより、主にキーバリュー型・ワイドカラムストア(列指向)型・ドキュメント型・グラフ型の4種類に分類されます。
NoSQLデータベースは高速な処理を可能にするため、シンプルな作りになっています。さらに、データの複製が容易で、複数のサーバーにデータを分散させられるため、サーバーにかかる負荷を軽減し、大量のデータの効率的な処理が可能です。
NoSQLデータベースはSQLを使用しないため、検索精度が低く、複雑な検索には向いていません。また、トランザクション処理を省いているため、データの一貫性を保つことが難しく、分散環境においてデータの不整合が生じてしまうデメリットがあります。
NoSQLは、主にSNSやビックデータのリアルタイム分析といった大量のデータの高速処理を優先するシステムに利用されています。
データベースを効率的に管理・運用するにはDBMSが必要になります。DBMSとはDatabase Management Systemの略で、データの格納・検索・更新・削除・共有などを効率的に行うためのシステムです。
RDBMS(Relational Database Management System)は、データベース言語であるSQLを用いて、リレーショナル型データベースの定義、操作、制御などを行います。コンピュータを操作するC言語やJava、Pythonなどのプログラミング言語とは違い、データベース言語が対応できるのは、データベースのみです。
データベースのメリットは、大量のデータから目的の情報を容易に抽出できる点にあります。有用なデータが大量にあっても効率的に操作できなければ、データ分析や情報の更新などができません。
情報をデータベース化することで、情報管理やデータ検索を効率的に行えます。さらに、データベース化することで情報が整理されるため、データの比較や分析が容易になります。情報の修正や削除も漏れなく実行できます。そのため、データの比較や分析の結果に基づいた、企業経営の方針や意思の迅速な決定にもつながります。
データベース化することで、データ入力や共有などがスムーズになります。入力規則の設定も可能なため、入力ミスを軽減したり、間違った上書きによるデータの破損を予防したりでき、大人数での作業や部署をまたいだ作業の効率化が可能です。
データベースには、バックアップ機能やリカバリ機能があります。顧客情報や機密情報など企業の信頼に関わるデータ消失のリスク軽減にも役立ちます。
ここからは、データベースの活用事例をいくつか紹介していきます。
企業活動において欠かせないものの一つに顧客管理があります。顧客のプロフィール、顧客からの問い合わせ、購入履歴、アプローチ履歴などさまざまな顧客情報をデータベース化することで、顧客管理の一元化が可能です。
データベース化した顧客情報を社内で共有することで、業務の属人化の防止や顧客への効率的なアプローチの実現などの効果が期待できます。また、顧客の購入履歴などの分析をもとに、顧客に合わせた商品やサービスの紹介を実施できます。顧客満足度が向上し、リピート率も高まります。
商品情報をデータベース化により、商品の在庫をリアルタイムで把握できるため、過剰な在庫や商品の欠品を防ぐことができます。特に支店がある場合は、本店で情報を一元管理すれば、支店による在庫のばらつきを防ぐことも可能です。
ホテルなどの予約システムにデータベースを用いることで、利用可能な部屋や顧客の予約情報をリアルタイムで更新することで、ダブルブッキングなどのトラブルを未然に防げます。顧客は最新の空室状況をもとに予約できるため、客室の稼働率も向上します。
ECプラットホームでは、ユーザーごとのカート情報や注文情報を処理しなければなりません。また、データベースを導入することで、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴などからレコメンド(おすすめ)機能を実装することもできます。
最適なデータベースを選ぶためには、どういった情報をデータベース化するのかを考える必要があります。顧客情報のように構造化されている情報は、リレーショナル型データベースの利用が最適でしょう。一方で、非構造化データや半非構造化データと相性がよいのは、NoSQLデータベースです。NoSQLデータベースはビックデータの分析にも効果を発揮します。
情報を分析し、活用することが企業の発展には欠かせません。そのためには、データベースをうまく利用する必要があります。データベースにもさまざまな種類があり、それぞれ得意とする情報が異なります。利用用途に合ったデータベースを活用することで、大量のデータを生かすことが可能となります。