クラウドとは?企業が導入前に知りたいメリットから気をつけたいポイントまで解説

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本記事では、これからクラウドの導入を検討している企業に向けて、クラウドとはなにか、利用動向、メリットとデメリット、どのようなシステムをクラウドに移行すると効果的か、安全にクラウド製品を利用するポイントを紹介します。
クラウドとは?企業が導入前に知りたいメリットから気をつけたいポイントまで解説

クラウド(クラウドコンピューティング)とは

 クラウド(クラウドコンピューティング)とは

クラウド(クラウドコンピューティング)とは、ネットワークやサーバー、アプリケーション、サービスなどの共用リソースへ、どこからでもインターネット経由でアクセスできる仕組みを指します。利用者はサーバーなどを持たずに、簡単な手続きで、必要な機能を利用したい時に必要な量だけ利用できます。インターネットが普及し、仮想化技術が進展したことで、2010年頃から国内でも広く利用されるようになりました。

クラウドの種類(サービスモデル)

クラウドは、提供するサービスの種類(サービスモデル)により4つに分類できます。

SaaS(Software as a Service)

メール、名刺管理サービス、グループウェアなど、アプリケーションの機能をインターネット経由で提供するサービス

PaaS(Platform as a Service)

OS、ミドルウェア、開発環境など、アプリケーションを実行する際に必要となるプラットフォームをインターネット経由で提供するサービス

IaaS (Infrastructure as a Service)

仮想サーバー、ネットワーク、ストレージなど、インフラ部分をインターネット経由で提供するサービス

CaaS(Containers as a Service)

環境の構築・運用管理などを容易にするコンテナ技術を用いて仮想化したシステム基盤をインターネット経由で提供するサービス

クラウドの4つの実装モデル

クラウドは、サービスの提供方法(実装モデル)によっても分類可能です。企業がクラウドを導入する際には、コストやセキュリティを考慮したうえで、自社のニーズにマッチしたモデルを選択しましょう。

パブリッククラウド

クラウド事業者が所有するサーバーを、複数のユーザーに割り当てて共用する方式。コスト効率が高いのが特徴です。

プライベートクラウド

クラウド事業者が所有するサーバーを、単一の組織が占有して使用する方式。専用の環境を構築できるため、高いセキュリティとカスタマイズ性が特徴です。

コミュニティクラウド

特定のコミュニティや事業者がクラウド環境を共有する方式です。

ハイブリッドクラウド

プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて利用する方式。柔軟性が高く、リスク分散ができるのが特徴です。

企業におけるクラウドの利用動向

企業におけるクラウドの利用動向

近年、国内外でクラウドの利用が急速に拡大しています。政府はシステム導入時にクラウドを第一候補として検討するクラウド・バイ・デフォルト原則を掲げ、積極的に推進しています。また、企業でもクラウドを優先するクラウドファーストの採用が広がるなど、社会全体でクラウドを前提とする考え方が浸透してきています。

このような状況のなか、今までオンプレミスでシステムを運用してきた企業にとっても、クラウド導入は有益な選択肢となっています。既存システムをクラウドへ移行することで、コスト削減や利便性の向上だけでなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に繋がります。

既に多くの企業がクラウドサービスを利用しており、その用途はファイル・データ共有、電子メール、社内ポータルなどのほか、営業支援、プロジェクト管理、財務会計など多岐にわたります。全面的にクラウドへ移行する企業はまだ少数で、オンプレミスを利用しながら一部のシステムをクラウドへ移行するケースが主流 です。

クラウドを導入するメリットとデメリット

クラウドを導入するメリットとデメリット

企業でクラウドを導入するメリットには、費用を抑えられる、メンテナンスが不要になるなどの「管理が楽になる」側面と、時間や場所の制限がなくサービスを利用できる、柔軟な拡張性があるなどの「利用の自由度が高まる」側面があります。

一方、クラウドを導入するデメリットには、機能やサービス運営を「自社でコントロールできない」側面があります。また、システムの安全対策が事業者側に依存するためセキュリティに対するリスクがある点もデメリットです。

メリット
  • 初期投資を抑えることができる
  • 更新・メンテナンスが不要である
  • 場所・時間に制約なく利用できる
  • 必要に応じて規模の拡張ができる
デメリット/リスク
  • カスタマイズが困難である
  • サービス運営を自社でコントロールできない
  • セキュリティ面でのリスクがある

企業がクラウドを導入するメリット

クラウドを選択することで、サーバーなどの設備投資を抑えながら必要なシステムを導入できます。運用に関しても、機器の維持管理費用を削減でき、更新作業やメンテナンスを行うITの専門スキルを持った人員の確保が不要です。さらに、インターネットに接続できれば場所や時間の制約なくサービスを利用でき、必要に応じてリソースを迅速に拡張・縮小できることもクラウドのメリットです。

企業がクラウドを導入するデメリットとリスク

インターネット上に重要な情報や個人情報を保管するため、サイバー攻撃の被害や情報漏えいのリスクがオンプレミスよりも高くなります。さらにサービスの運営自体が事業者に依存するため、予期せぬタイミングでサービスが停止したり、突然サービスが終了したりして利用できなくなるリスクがあることも意識する必要があります。

企業はどのようなシステムをクラウドへ移行すると効果的か 

企業はどのようなシステムをクラウドへ移行すると効果的か

自社でクラウドの導入を検討する際に気になるのは、「どの業務がクラウドに置き換えられるのか?」や「どのくらいの効果が期待できるのか?」という点ではないでしょうか。営業支援ツール(SFA)のほか、意外と見落としがちな電話システム(PBX)も、クラウド移行によりコスト削減や業務効率化などの効果が期待できます。

クラウドの活用サービス例1:クラウドSFA/MAツール

MA、SFAなどの営業支援ツールは、導入ハードルの低さや利便性の高さからクラウド型で導入するケースが増えています。営業情報をエクセルやアクセスで管理している場合、社内に戻らないと情報が確認できない、データの統合に手間がかかるなどの課題が生じていました。クラウド型のSFAやMAツールを導入することで、組織内でデータを一元管理しやすくなるほか、外出先から情報を確認・更新できます。さらに、サービスによってはデータの分析やまとめを自動で行ってくれるものもあり、作業の効率化にもつながります。

クラウドの活用サービス例2:クラウドPBX

PBX(Private Branch Exchange)とは、電話を制御するために拠点内に設置する専用機器(構内交換機)です。外線の発着信や内線電話の接続を制御します。従来はオンプレミスで運用されていましたが、維持管理の問題などから、近年ではクラウドサービスとして電話サービスを提供するクラウドPBXの導入が増加しています。

クラウドPBXを導入することで、電話回線の保有やPBXの運用管理が不要になり、機器管理コストの削減につながります。また、複数拠点間の通話を内線化することや、社用のスマートフォンを内線電話として活用できることから、通話料の削減に加えて取次業務の効率化にもつながります。

安全にクラウド製品を利用するためのポイント

安全にクラウド製品を利用するためのポイント

クラウド製品を選定する際と、導入後にクラウド製品を運用する際に分けて、セキュリティリスクを抑えるためのポイントを紹介します。

クラウド製品を選定する際のポイント

クラウドサービスのセキュリティ対策は、提供している事業者側に依存します。そのため、利用を検討しているクラウド製品に対して、通信の暗号化やデータ管理方法などのセキュリティ対策について、サービス利用規約などで事前に確認しておくことが重要です。

サービスだけでなく、運営元であるクラウド事業者の信頼性を確認することも必要です。事業者の公開情報を確認してセキュリティ関連の認証取得状況を知ることも役立ちます。

また、サービス解約後のデータの取り扱いについても確認するようにしましょう。クラウド製品のなかには、解約後のデータの取り扱いについて契約や規約内に明確に記載していないものもあります。自社が意図しない用途でデータを不適切に取り扱われるリスクや、情報漏えいのリスクに注意しましょう。

クラウド製品を運用する際のポイント

クラウド製品を運用する際には、社内のセキュリティ対策を見直すことも重要です。不正ログインを防止するための多要素認証の導入やウイルス対策ソフトの導入などの対策に加えて、不審なメールを開かない、ソフトウェアやOSは常に最新版にアップデートする、ID・パスワードは適切に管理するなどを含めた社員のセキュリティ教育を行うと効果的です。

また、万が一クラウド経由で取り扱う情報が漏えいした場合や、消失してしまった場合のリスクも考慮する必要があります。バックアップ体制を万全にすることや、セキュリティポリシーを策定して適切な対応や具体的な実施手順を周知する、サービス事業者側に保証範囲を確認しておくなどの対応が求められます。

クラウドを理解して適切に活用しよう

クラウドのリスクを理解しつつ適切に活用しよう

コスト削減や業務効率化を実現し、デジタルビジネスを促進するために、クラウドは欠かせない選択肢になっています。クラウドについて正しく理解し、自社のニーズに合った製品を選定・活用するのに役立ててください。