循環型社会について知るためには、基本的な概念と背景を理解する必要があります。ここでは、2つに分けて紹介します。
それぞれ詳しくみていきましょう。
環境省の循環型社会形成推進基本法の概要には、形成すべき「循環型社会」の姿が明確に提示されています。
「循環型社会」とは、[1]廃棄物等の発生抑制、[2]循環資源の循環的な利用及び[3]適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。
環境省によると、循環型社会の原則は以下の3つです。
循環型社会を目指す目的には、廃棄物問題の解決と環境負荷の低減があります。まず大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会からの脱却です。そして廃棄物の発生を抑えつつ、やむを得ず出た廃棄物についても資源として有効活用することを目指します。
具体的な廃棄物の資源としての有効活用は以下のとおりです。
ペットボトルのリサイクル | 使用済みペットボトルを回収し、新しいペットボトルや繊維製品の原料として再利用して、廃棄物の削減と資源の有効活用を図る |
リサイクルショップの普及 | 不要になった家具、家電、衣類などを買い取り・販売するリサイクルショップで、製品の再使用を通じて廃棄物の発生を抑制する |
生ごみの堆肥化 | 家庭や企業から排出される生ごみを回収し、堆肥化することで、食品廃棄物の削減と、堆肥による土壌改良や農業生産への活用を図る |
廃棄物を資源として有効活用することで、天然資源の消費を抑え環境への負荷を可能な限り少なくした持続可能な社会の実現を目指しています。
経済成長に伴い、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会が形成されてきました。その結果、以下のような問題が顕在化し、循環型社会の必要性が高まったからです。
資源の枯渇:
有限な資源を大量に消費し続けることで、資源枯渇のリスクが高まっている
環境負荷の増大:
大量の廃棄物の発生や、資源採取・製造・輸送などによって環境負荷が深刻化している
廃棄物問題:
最終処分場の逼迫や不法投棄など、廃棄物をめぐる問題が顕在化している
また、近年ではSDGs(持続可能な開発目標)の採択など、持続可能な社会の実現に向けた国際的な動きも加速しています。循環型社会の形成は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」とも密接に関連しており、持続可能な社会を実現するためには、資源の循環利用を促進し、環境負荷を低減していくことが欠かせません。
資源・環境・廃棄物問題への対応、そしてSDGsの達成に向けて、私たち一人ひとりの意識改革と行動の変化が求められています。
循環型社会を実現するために、どのような取り組みをすればいいのでしょうか?取り組みについて紹介します。
循環型社会の実現には、個人の意識と行動の変化が欠かせません。私たち一人ひとりができる取り組みとして、以下のようなことが挙げられます。
3Rを意識する |
詰め替えアイテムの利用
リユース品の購入 リサイクルを行う など |
ボランティアへの参加 |
海や町でのゴミ拾い
リサイクルステーション など |
エコなエネルギーの選択 |
太陽光や風力発電を使った電気の利用
再生可能エネルギーの積極的な利用 |
どれも、一つひとつをみてみると難しい内容ではありません。まずは、できるところから実際に行動してみるのが大切です。
日本政府は、循環型社会の形成に向けて、さまざまな政策や法整備を進めています。
2000年に「循環型社会形成推進基本法」を制定し、循環型社会の実現に向けた基本的枠組みを示しました。2021年3月には、環境省が「循環経済パートナーシップ」を立ち上げ、循環経済への取り組みを推進しています。具体的には、優良事例の収集・発信、国内外とのネットワーク形成などに取り組んでいます。
循環型社会の実現に向けて、日本をはじめとする世界各国でさまざまな取り組みが進められています。ここでは、日本の循環型社会形成推進基本法と計画、そして世界各国の事例を紹介します。
日本では、2000年6月に「循環型社会形成推進基本法」が制定されました。この法律は、循環型社会の実現に向けた基本的な枠組みを定めたものです。
国、地方公共団体、事業者、国民の役割分担も明確化しています。これにより、各主体が連携・協力して循環型社会の形成を推進することが求められています。
この法律と計画により、廃棄物の発生抑制、循環資源の利用促進、適正処理の確保などを通じて、資源消費の抑制と環境負荷の低減を目指す循環型社会の形成が推進されます。
循環型社会の実現は、日本だけでなく世界共通の課題です。ここでは、アジア太平洋地域とヨーロッパの取り組み事例を紹介します。
アジア太平洋地域では、日本の提唱により、2009年に「アジア太平洋3R推進フォーラム」が設立されました。このフォーラムは、アジア各国における3Rと循環型社会の推進を目的とする国際的なプラットフォームです。資源の有効利用により環境と経済の両立を目指す概念です。フォーラムでは、参加国間の意見交換、プロジェクト支援、情報共有などが行われています。
ヨーロッパでも、環境問題への関心が高まっています。EUは、2021年までに使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する法令を採択しました。また、EU加盟国は、2029年までにプラスチックボトルの回収率を90%、2025年までにリサイクル材料含有率を25%、2030年までに30%にすることを目標としています。
このように、世界各国・地域で資源の効率的な利用と廃棄物の削減に向けた取り組みが進められており、循環型社会の実現に向けた国際的な連携も強化されています。日本の経験や技術を活かしつつ、グローバルな視点で循環型社会の形成を推進していくことが求められているのです。
ここからは、循環型社会と関連する概念やアプローチについて紹介します。紹介するのは、以下の3つです。
それぞれ循環型社会との関係性を詳しくみていきましょう。
3Rとは、Reduce、Reuse、Recycleの頭文字をとったものです。この3Rは、循環型社会を実現するためのキーワードとなっています。詳細は以下のとおりです。
この3Rは、循環型社会を実現するためのキーワードとなっています。
3Rの優先順位としては、リデュース、リユース、リサイクルの順で取り組むことが重要です。まず発生抑制に努め、次に再使用を検討し、最後にリサイクルを行うことで、資源の消費と廃棄物の発生を最小限に抑えることができます。
循環型社会は、3Rを通じて資源の循環利用を促進し、環境負荷の低減と持続可能な発展を目指す社会システムです。3Rの推進は、循環型社会の形成に欠かせないものであり、国、地方自治体、事業者、消費者が一体となって取り組むことが求められています。
SDGsは、2015年に国連で採択された17の目標と169のターゲットから成る国際的な目標です。循環型社会は、SDGsの達成に向けて重要な役割を果たします。
循環型社会とSDGsの関係する目標には、以下のようなものがあります。
SDGsと関係する目標を達成するためには、循環型社会の形成が必要です。
サーキュラーエコノミーと循環型社会には共通点もありますが、いくつかの違いがあります。
循環型社会 |
廃棄物の適正な管理とリサイクル
環境負荷の低減と資源の有効活用 リサイクルに力をいれる 国や自治体、消費者の意識改革が重要な要素 |
サーキュラーエコノミー |
廃棄物の概念はなく資源を循環させる
経済的価値の創出 製品デザインの段階から資源の循環を考慮して設計 特に企業の役割が重要視される |
サーキュラーエコノミーと循環型社会は互いに密接に関連しており、明確に区別することは難しい場合もあります。持続可能な社会の実現に向けて、資源の循環利用と環境負荷の低減を目指すという目標は共通です。
サーキュラーエコノミーを詳しく知りたい方は、ぜひ「 サーキュラーエコノミーとは?注目される理由から事例までわかりやすく解説 」記事をお読みください。
循環型社会の実現は、持続可能な未来を築くために欠かせません。しかし、その道のりにはさまざまな課題が立ちはだかっています。ここでは、3つの観点で課題と展望について解説します。
それぞれ詳しくみていきましょう。
循環型社会への移行における課題と解決策を表にまとめました。
課題 | 詳細 | 解決策 |
---|---|---|
経済 | リサイクルインフラの整備コスト |
補助金の有効活用
税制優遇措置 |
技術 |
リサイクル技術の未発達
分別が難しくリサイクルが困難 |
研究開発への投資
設計段階で分別への配慮を考慮する |
社会 |
消費者の意識不足
3Rへの理解不足 |
環境教育の充実
メディアでの発信 |
制度 |
法の整備不足
各自の連携不足 |
法の着実な実施
役割分担の明確化など |
これらの課題を解決していくためには、政府、企業、消費者などが協力し、取り組む必要があります。
循環型社会の実現には、技術革新と教育が非常に重要な役割を果たします。
技術革新は、資源の効率的な利用や廃棄物の削減、再生可能エネルギーの活用などを可能にするからです。例えば、リサイクル技術の向上、バイオマス資源の活用、IoTを活用した資源管理などが挙げられます。これらの技術を開発・普及させることで、循環型社会の基盤を強化することができます。
また教育は、循環型社会の概念や重要性を理解し、実践するための知識やスキルを身につけるために欠かせません。学校教育における環境教育の充実や、社会人向けの研修プログラムの提供などを通じて、循環型社会の担い手を育成していく必要があります。
循環型社会は、持続可能な未来を実現するための鍵となる概念です。資源の循環利用と環境負荷の低減を通じて、経済発展と環境保護の両立を目指します。
また、循環型社会は、SDGsの達成にも貢献します。資源の効率的な利用や廃棄物の削減は、責任ある生産と消費(ゴール12)や気候変動対策(ゴール13)などに直結しているからです。循環型社会の実現には、国際的な連携も大切です。各国の優れた取り組み事例を共有し、グローバルな課題に協調して取り組むことで、持続可能な未来に向けた歩みを加速させることができます。
循環型社会への移行は、すぐには実現できません。しかし、技術革新と教育を通じて、一人ひとりが自分にできることから始めることで、持続可能な社会の実現に近づけます。
私たち一人ひとりが、循環型社会の担い手であるという意識を持ち、行動することが何より大切です。
資源の枯渇や環境問題が深刻化するなかで、循環型社会への転換が求められています。日本だけでなく、世界中で循環型社会の実現へ向けていろいろな取り組みが行われています。
個人でもすぐに取り組めるのは、3Rの意識です。それぞれできることから、循環型社会に向けた取り組みを始めていきましょう。