従業員エンゲージメントとは?意味や重要性、高める効果的な方法を紹介

エンゲージメントという言葉は聞いたことがあっても、詳しくはわかっていないという方もいるのではないでしょうか?エンゲージメントとは関係性を示す言葉であり、従業員エンゲージメントでは従業員と企業の関係性を示します。

この記事では、エンゲージメントの中でも、主に従業員エンゲージメントにスポットを当てて、定義から従業員エンゲージメントを高める重要性やメリットについて解説します。

従業員エンゲージメントを高める方法や取り組み事例についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
従業員エンゲージメントとは?意味や重要性、高める効果的な方法を紹介

エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは、一般的には「関わり」や「約束」などを意味する言葉です。しかし、ビジネスや企業と従業員の関係性において、エンゲージメントは少し違った意味合いを持ちます。従業員エンゲージメントを理解することは、企業の生産性向上や競争力強化につながる重要なポイントです。

ここでは、エンゲージメントについて、以下の3つの視点から詳しく解説します。

  • エンゲージメントの一般的な意味
  • 企業におけるエンゲージメントの定義
  • 従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い

それぞれ、詳しくみていきましょう。

エンゲージメントの一般的な意味

エンゲージメント(engagement)とは、「婚約」「誓約」「約束」「契約」などの意味を持つ英単語のことです。

エンゲージメントという概念は、もともとは心理学の分野で使われていました。人間が特定の活動に対して示す熱意や愛着心などを表す言葉として用いられてきたのです。

近年では、従業員の会社や仕事に対する意欲を表す言葉や顧客と企業の関係性を表す言葉として使われています。

企業におけるエンゲージメントの定義

企業におけるエンゲージメントには、代表的なものとして2種類があります。

それぞれの違いは、表のとおりです。


ワークエンゲージメント
個人と仕事との関係
・仕事へのやりがい
・仕事への熱意
・仕事から得る活力
従業員エンゲージメント
個人と組織との関係
・組織が目指す方向性への理解
・個人と組織の方向性の重なり
・組織への貢献意欲

ワークエンゲージメントは、仕事自体にやりがいを感じて、熱心に取り組むことです。仕事から活力を得ている状態で、個人と仕事の関係を示します。

一方で、従業員エンゲージメントは仕事自体よりも企業などの所属している組織への貢献意欲のことです。個人と組織の関係性を示しています。組織が目指す方向性を理解して、自身が目指す方向性と重なることで組織へ貢献します。

従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い

従業員エンゲージメントと従業員満足度は同じような意味で使われることもありますが、厳密には違いがあります。

従業員満足度は、職場環境や待遇面での満足度を表します。従業員エンゲージメントは、仕事へのモチベーションや組織に対する愛着や貢献意欲です。そのため、従業員満足度が高くても従業員エンゲージメントは低いというケースもあります。

具体的には、福利厚生が充実していて人間関係にも不満はないけれど、仕事へのやりがいが感じられない場合などです。このように、従業員満足度と従業員エンゲージメントには違いがあります。

なぜ従業員エンゲージメントが重要なのか?

なぜ従業員エンゲージメントが重要なのか?

なぜ、従業員エンゲージメントが重要なのでしょうか?重要とされる理由について、以下の2つに分けて解説します。

  • 従業員エンゲージメントが注目される背景と理由
  • 従業員エンゲージメントが高いと、どのようなメリットがあるのか?

それぞれ詳しくみていきましょう。

従業員エンゲージメントが注目される背景と理由

従業員エンゲージメントが重要視される理由の一つに、企業の業績との関連性が明らかになってきたことがあります。従業員エンゲージメントの高い従業員は、生産性や品質の向上に貢献し、顧客満足度にも好影響を与えるからです。結果として、企業の収益や成長に直結します。

また、優秀な人材の獲得・定着が企業の競争力を左右する時代になりました。従業員は、働く環境の質を重視するようになり、企業側も選ばれる努力が必要です。単に報酬が高いだけでなく、やりがいを感じられる職場であるかどうかが、人材確保の鍵を握ります。従業員エンゲージメントの高い職場は、従業員の満足度や定着率も高くなる傾向があります。

従業員の価値観の多様化も、従業員エンゲージメントへの注目を後押ししています。画一的な管理ではなく、一人ひとりの強みを活かし、自律的に働ける環境が求められるようになりました。従業員エンゲージメントを高める施策は、多様な人材が活躍できる職場づくりにもつながります。

人材を確保し流出を防ぐためにも、企業は従業員エンゲージメントを向上させる必要があります。

従業員エンゲージメントが高いと、どのようなメリットがあるのか?

従業員エンゲージメントが高まると、企業には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

具体的に考えられるメリットについて、表にまとめました。


生産性向上 仕事に対する積極性が高まり、生産性が上がる
離職率低下 企業への愛着があり、離職率が下がる
顧客満足度向上 従業員のモチベーションは顧客にも伝わり、顧客満足度向上につながる
イノベーションの促進 自社への愛着や思い入れから新たなアイデアが生まれる可能性もある

従業員のエンゲージメントを高めることは、企業にとってもさまざまなメリットがあります。企業の業績向上はもちろん、離職率の低下により人材確保にもつながります。

従業員エンゲージメント向上を意識した経営は、企業の持続的な成長に欠かせない要素です。

従業員エンゲージメントを測る方法

従業員エンゲージメントを測る方法

現在の従業員のエンゲージメントがどのくらいなのか気になっている方もいるのではないでしょうか?ここでは、従業員エンゲージメントを測る方法について3つのステップで解説します。

  1. アンケート調査と実施方法
  2. 従業員エンゲージメントの指標
  3. 分析における注意点

それぞれのステップを詳しくみていきましょう。

1.アンケート調査と実施方法

従業員のエンゲージメントを確認する方法は、主にアンケート調査です。エンゲージメントに関するアンケートは、エンゲージメントサーベイとも呼ばれています。

アンケートの中では、仕事への熱意や会社への愛着、同僚との関係性など、従業員エンゲージメントに関連するさまざまな質問を用意します。

アンケートはオンラインツールを活用して、匿名もしくは限られたメンバーにだけ共有される形で実施するのが効果的です。回答者のプライバシーを守ることで、より正直な回答が得られます。全従業員を対象とするのが理想ですが、規模が大きい会社の場合には部署ごとに抽出するなどの工夫を行いましょう。

近年では、エンゲージメントサーベイを提供する専門の会社もあります。アンケートの作成から結果の分析まで、一貫したサポートを受けられるため、効率的に従業員エンゲージメントの測定が可能です。

2.従業員エンゲージメントの指標

エンゲージメントサーベイでは、主に以下の3つの指標を用いて評価します。

  1. エンゲージメント総合指標
    企業のことをどのように感じているのか
  2. エンゲージメントレベル指標
    仕事に対しての熱意
  3. エンゲージメントドライバー指標
    従業員エンゲージメントを向上させる要因となるもの

総合指標は、会社に対する従業員の愛着や信頼です。レベル指標は、仕事そのものへのモチベーションを示し、ドライバー指標は、従業員エンゲージメントを高めるために必要な要素となります。これらの指標を組み合わせることで、エンゲージメントの現状を多角的に評価できます。

自社の強みと弱みを知ることが、課題解決に向けた施策を立てる際の重要な判断材料となるでしょう。

3.分析における注意点

アンケート結果の分析においては、長期的な視点を持つことが大切です。従業員エンゲージメントはすぐに向上するものではありません。定期的にアンケートを実施し、変化の傾向を追うことが求められます。

また、数値の変化だけでなく、その背景にある要因を探ることも重要です。自由記述欄を設けるなどして、従業員の生の声を拾い上げましょう。

分析結果を踏まえた具体的なアクションも欠かせません。モチベーションの把握による面談の実施や、社員の思いを反映した人事施策など、実効性のある取り組みが求められます。

従業員エンゲージメント測定は、あくまでも向上に向けた第一歩です。測定で終わることなく、PDCAサイクルを回していくことが、エンゲージメント経営の本質となります。

従業員エンゲージメントを高める効果的な方法

従業員エンゲージメントを高める効果的な方法

従業員のエンゲージメントを高めるためには、さまざまな施策を行う必要があります。
ここでは、従業員エンゲージメントの向上に効果的な方法を6つ紹介します。

  • 現状の把握と企業ビジョンの発信
  • 働きやすい環境づくりと社内コミュニケーションの活性化
  • 教育・研修の実施
  • 価値観の把握とマネジメント層の教育
  • タレントマネジメントの活用
  • リーダーシップの推奨

それぞれ詳しくみていきましょう。

現状の把握と企業ビジョンの発信

従業員エンゲージメント向上の第一歩は、現状を正確に把握することです。エンゲージメントサーベイを行い、従業員の意識や満足度を詳細に分析しましょう。

現状を把握できたら、企業のビジョンを明確に発信することが大切です。従業員が自身の仕事をどう捉え、どう働くべきかを示すビジョンは、従業員エンゲージメントを高めるために必要です。経営層は、ビジョンを従業員に浸透させるための努力を惜しまないことが求められます。

企業ビジョンが従業員にしっかり伝わるように、発信方法などを考えましょう。

働きやすい環境づくりと社内コミュニケーションの活性化

従業員エンゲージメントの高い職場づくりには、働きやすい環境の整備が欠かせません。単に物理的な環境だけでなく、精神的な環境も含まれています。

休憩時間の確保や快適なオフィス環境の提供はもちろん、職場の雰囲気や対人関係にも十分な配慮が必要です。

また、社内コミュニケーションを活性化させることで、従業員間の信頼関係を築き、一体感を高めることができます。

教育・研修の実施

従業員のスキルや知識を向上させる教育や研修は、従業員エンゲージメントを高めるうえで大きな効果があります。自己成長の機会を提供することで、仕事へのモチベーションを引き出すことができます。

教育・研修の内容は、個人のレベルや能力に合わせて設計することが大切です。また、教育や研修の実施とともにキャリアパスを明示し、将来の目標を示すと従業員の意欲をさらに高める効果があります。

価値観の把握とマネジメント層の教育

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員一人ひとりの価値観を理解し、尊重することが大切です。アンケートや面談などを通じて、従業員の価値観を把握するよう努めましょう。

マネジメント層には部下の価値観を理解し、適切にリーダーシップを発揮できるような教育が必要です。上司と部下の関係性が良好であることは、従業員エンゲージメント向上に大きく影響します。

タレントマネジメントの活用

タレントマネジメントとは、個々の能力を最大限に発揮させるための人材配置や育成を行うマネジメント手法です。適材適所の配置により、従業員は自分の仕事に対して高い責任感を持ち、楽しみながら自己実現に向けて取り組むことができます。

個々の能力を最大限に発揮できれば、自然と従業員エンゲージメントの向上も期待できます。

リーダーシップの推奨

組織の中でリーダーシップを発揮できる人材を、積極的に評価し、育成することも重要です。リーダーシップのある人材は周囲を鼓舞し、チームを活性化させる原動力となります。

リーダーシップを推奨する風土を作ることで、組織全体の従業員エンゲージメントを向上させる効果が期待できます。

従業員エンゲージメント向上には、これらの施策を状況に応じて使い分け、継続的に取り組むことが必要です。従業員の声に耳を傾け、トライ&エラーを繰り返しながら、自社に最適な方法を見つけていきましょう。

従業員エンゲージメントが上がらないときの改善点と対策

従業員エンゲージメントが上がらないときの改善点と対策

従業員エンゲージメント向上の施策を行っても、思うような効果が出ないこともあります。そのようなときは、改めて現状を見直し、問題点を洗い出すことが大切です。

まずは、現状把握から始めましょう。従業員へのアンケートやヒアリングを通じて、従業員エンゲージメントが低い原因を探ります。コミュニケーション不足や評価制度の不明瞭さ、キャリアパスの不在など、さまざまな問題が潜んでいるかもしれません。

問題点が明確になったら、次は具体的な対策を考えます。例えば、コミュニケーション不足が原因の場合には、定期的な面談の実施や社内のイベント開催などを実施します。評価制度への不明瞭さであれば、基準の見直しや十分なフィードバックが必要です。

対策を実施していくときには、PDCAを忘れないようにしましょう。施策の効果を定期的に測定し、必要に応じて軌道修正します。従業員エンゲージメント向上に向けて、継続的に取り組んでいくことが大切です。

従業員エンゲージメント向上への取り組み事例

従業員エンゲージメント向上への取り組み事例

実際に従業員エンゲージメント向上に取り組んだ企業の事例を紹介します。

【取り組み背景・課題】

ある企業では、コロナ禍での緊急対応としてテレワークを導入し、働き方の見直しを進めてきました。従業員エンゲージメント経営の導入にあたり、過去の社員満足度調査の課題を踏まえ、全社一体となった組織風土改革に取り組むこととしました。現在、全社一丸となって「従業員エンゲージメント経営」に取り組むためのエッセンスを施策に入れ込むことが焦点となっています。

【具体的な施策内容・ポイント】

同社では、2021年10月に全社員を対象にエンゲージメントサーベイを実施し、社員の会社に対するエンゲージメントの現状を確認しました。サーベイの結果は、社員の期待度と満足度の2観点から分析し、会社の課題や社員にアピールすべき部分などを明らかにします。

また、「従業員エンゲージメント経営」の達成度合いを定量的に把握するため、数値指標(KPI)の設定を検討しています。この検討では、他社の開示する従業員エンゲージメントに係る数値目標の事例を収集しました。

さらに、「退職者による機会損失の回避」を勘案した目標設定のため、退職率と従業員エンゲージメントの関係性の分析を実施します。退職面談の結果とエンゲージメントサーベイの結果を突合させて分析し、特に退職に影響を与えている項目とその影響の大きい社員層を明らかにしました。

【今後の取り組み予定・課題】

分析結果を踏まえ、全社施策・組織施策・現場施策の3階層で、従業員エンゲージメント向上施策を検討しています。また、従業員エンゲージメント経営の数値目標についても、設定に向けて引き続き議論を深めていく予定です。

この事例からは、データに基づく問題の把握と、それを踏まえた施策の立案・実行が、従業員エンゲージメント向上に欠かせないことがわかります。自社の状況に合わせた取り組みを、継続的に行っていくことが必要です。

従業員のエンゲージメント向上へ自治体の支援事例紹介

従業員のエンゲージメント向上へ自治体の支援事例紹介

従業員のエンゲージメントを高めることは、企業の生産性向上や競争力強化に直結する重要な経営課題です。しかし、中小企業にとっては、財源や人材の制約から、従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みが難しいケースもあります。

自治体によっては、中小企業の労働生産性を高めるために、従業員のエンゲージメント向上や賃上げに取り組む企業に奨励金を支給する事業を行っている場合もあります。該当地域でそのような支援制度がないか確認してみるのもおすすめです。

東京都では、令和5年度に10回に分けて、エンゲージメント向上や賃上げに取り組む中小企業へ従業員エンゲージメントを向上させる取り組みを複数対象とした支援事業を実施しています。対象は、常時雇用する労働者が300人以下の都内中小企業です。

こうした自治体の支援制度を活用することで、中小企業でも従業員のエンゲージメント向上に向けた取り組みが進めやすくなります。自社の課題に合わせて、適切な支援制度を探してみましょう。

従業員のエンゲージメント向上は、企業の成長と発展に欠かせない要素です。自社の取り組みに加えて、自治体の支援制度も有効活用しながら、働きがいのある職場づくりを進めていきましょう。

まとめ

まとめ

本記事では、従業員エンゲージメントについて、その意味や重要性、測定方法、向上させるための方法について詳しい解説や事例の紹介をしました。

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社や仕事に対して感じる愛着や熱意です。企業の業績や競争力に直結する重要な指標であり、近年ますます注目を集めています。

従業員エンゲージメントの向上は、すぐにできるものではありません。しかし、従業員の意欲を引き出し、組織の力を最大限に発揮させるのは、企業の持続的な成長と発展に欠かせない要素です。

トップのリーダーシップのもと、全社一丸となって取り組むことで、働きがいのある職場づくりを進めていきましょう。従業員のエンゲージメントを高めることは、企業の明るい未来につながります。