経費削減とは、企業活動で支出される経費を削ることを指します。企業の利益を増やして経営を安定させる、損失を抑えるといった目的で行われる施策です。
経費には以下のとおり、さまざまな項目があります。
上記のとおり、あらゆる項目が経費削減の対象となり得ます。
経費削減には、利益拡大や損失抑制以外の効果もあります。主な5つの効果について、企業にどのような良い影響があるか確認していきましょう。
経費が少なくなることは、事業運営における費用が減ることを意味します。収入が変わらなくても費用が少なくなれば、損益分岐点は下がります。このため同じ収入額でも、利益を出しやすくなるでしょう。
一例として、年間収入が4億8,000万円の企業を考えてみます。年間の費用が5億円かかると、トータルでは2,000万円の赤字です。ここで経費を5%削減できれば年間の費用は4億7,500万円となり、トータルで500万円の黒字となります。
特に事務所の家賃や外注費など、ある程度金額が大きく月々の変動が少ない費用を削減すると効果的です。
経費削減がもたらす財務面での効果には、手持ちの現金や現金同等物(普通預金や当座預金など)が増えることも挙げられます。自由に使えるお金やいざという時に使えるお金が増えるため、資金ショートのリスクを下げることが可能です。
借入金を減らせることも、経費削減のメリットに挙げられます。繰り上げ返済などを活用し、借入残高と支払うべき利息を減らすことが可能です。
「昔から行っている業務だが、何のために行っているのかわからない」社内にこのような業務はないでしょうか?不要な業務を削ることで、業務遂行に必要な費用をカットできます。利益を生まない業務であれば、経費削減につながるでしょう。
目的がよくわからない業務に就いていた従業員をやりがいのある業務に配置転換することで、仕事への意欲を喚起することが可能です。経費削減は、生産性の向上や従業員のモチベーションアップにもつながります。
経費削減でカットした費用は、社内に貯め込むこともできます。一方で成長中の事業や新規事業に資金を投下して、より多くの利益を狙う資金源として使うことも可能です。借入なしで新たな資金を調達できることは、大きな魅力といえるでしょう。ローリスクで企業価値の向上や競争力アップにつながる施策にチャレンジできることも、メリットの一つに挙げられます。
もし価格競争力の弱い製品やサービスがあれば、削減した経費の額を価格引き下げの原資に回し、競争力をアップさせることも可能です。収益が上がれば、経費削減と売上アップの一石二鳥を実現できるでしょう。
但しこの方法が成功するケースは、一定レベル以上の品質を確保している場合に限られます。近年では品質や利便性、評判の良さなど、価格以外の尺度を重視する傾向が強まっているためです。「安かろう悪かろう」の製品やサービスは、いくら安くても選ばれにくいことに注意してください。
経費削減を行えば事業運営にかかる費用を減らせますが、手当たり次第に行えばよいものでもありません。削減する経費の選び方や削減方法を誤れば、削った経費よりも多くの利益を失う事態に直面します。これでは本末転倒です。
経費削減には、良い経費削減と悪い経費削減があります。企業の事業運営に与える影響を少なくしつつ、大きな経費削減を行える施策を選びましょう。どのような経費削減が良いか、また悪い経費削減とはどのようなものか、詳しく解説します。
良い経費削減とは、企業・従業員・顧客のいずれもメリットを得られる方法です。代表的な例を確認していきましょう。
これらの経費削減は損をする人が少ないため、支持を得やすく進めやすいでしょう。
悪い経費削減は、従業員や顧客、取引先に大きな痛みを与える方法です。法令に違反する方法で経費を削減する方法も含まれます。一例を以下に挙げました。
上記の削減方法は、従業員の士気や人材の流出、企業価値の低下、取引先に不安を与える事態につながりますから避けなければなりません。
企業活動に有効な経費削減は、さまざまな方法で行えます。主な12の項目について、方法と期待できる効果を確認していきましょう。貴社に合った方法を選び、経費削減を実行してください。
いまや企業活動において、携帯電話やインターネット回線は欠かせないものとなりました。料金体系やサービスレベルは、各社で異なります。以下の方法を取ることで、経費を削減することが可能です。
通信回線は1台・1回線当たりの料金は少額でも、回線数が増えると月々の費用は増します。定期的に契約内容の見直しを行い、必要に応じてプランや通信会社を乗り換えると大きな経費削減につながります。
すべての業務には、何らかの経費が発生しています。不要な業務の廃止は、事業運営に大きな影響を与えず経費削減ができる有効な方法です。
あわせて、業務の効率化も図りましょう。不要なプロセスや時短を図れる作業がないか、チェックすることがおすすめです。積極的なシステム化も、有効な選択肢の一つとなるでしょう。また「業務は定時に終えるもの」という企業風土を育成することも有効です。
これらの取り組みを行うことで組織全体の残業時間が減り、人件費を抑制できます。
コミュニケーションの手段が電話や手紙に限られていた時代、対面で話すには外出する必要がありました。遠隔地の場合は、出張することになるでしょう。このような対面での打ち合わせは、現代でも広く行われています。1人の従業員が動くと数万円の支出となるため、節約したいという企業も多いのではないでしょうか。
IT技術が発達した現代ではWeb会議システムの活用により、対面での会話を実現できます。外出する回数を減らすことで交通費や出張費を削減でき、経費削減を実現します。移動する時間を待たなくてよいため、必要なタイミングですぐに打ち合わせができることもWeb会議システムの見逃せないメリットです。
紙を使わない「ペーパーレス化」も、経費削減の方法として有効です。一般財団法人環境イノベーション情報機構は、オフィスで出る1カ月当たりの紙の量を1人当たり4kg(A4用紙で約1,000枚)と公表しています。従業員が多いオフィスでは、多額の経費削減が可能です。特に社内向けの書類は取引先や顧客への影響が少ないため、ペーパーレス化への取り組みもしやすいでしょう。
ペーパーレス化で懸念される事項の一つに、押印をどうするかという問題があります。この懸念については、電子署名で解決できます。郵送する手間と時間がなくなるため、すばやく契約を結べるでしょう。取引先の協力を得て契約書を電子化することも、経費削減を実現する方法の一つです。
顧客の関心事は、多様化が進んでいます。「とりあえず全世帯、全オフィスにチラシを配布」「片っ端からテレアポ」「飛び込み営業」などの手法は、費用対効果の悪い手法となりました。
効率的に売上をあげるためには、ターゲットを絞った販促が有効です。インターネットの活用により、販促に役立つ施策を手軽に打てるようになりました。興味・関心が高い層に絞って販促を行えば費用対効果が高くなり、販促費用を削減しながら売上のアップを狙えます。
オフィスにかける費用の見直しも、経費削減の方法として有効です。この方法には、2つのアプローチがあります。
それぞれの手法と期待できる効果を、確認していきましょう。
賃貸のオフィスを活用する企業において、オフィスの賃料は無視できない金額です。月々の賃料を下げることで固定費を下げ、継続した経費削減を実現できます。
一方でオフィスを移転した結果、他の費用がアップしたのでは本末転倒です。また古く汚いビルは従業員のモチベーションを下げるだけでなく、取引先に不安感を与えかねません。少々高くても、快適で利便性の高いオフィスを選びましょう。
テレワークを活用してオフィスにいるべき人数を減らすことも、経費削減を実現する有効な方法です。賃貸のオフィスなら、空いたスペースを解約することでランニングコストを減らせます。固定席がなくなる従業員も多くなりますが、フリーアドレスなどで対応すればよいでしょう。
さらに経費削減を目指すなら、オフィスそのものをなくす方法もあります。オフィスという固定費用がまるごとなくなるため、ランニングコストを大幅に削減できるでしょう。
光熱費は、経費削減のテーマに挙がりやすい項目です。4つの観点から、光熱費を削減するポイントを確認していきましょう。
電気やガスは、契約先を自由に選ぶことが可能です。より安価なプランや運営会社を選ぶことで、光熱費を削減し経費削減を実現できます。契約中のプランを確認のうえ、他社のプランと比較検討してみてはいかがでしょうか。
テーマパークやショッピングセンターなど照明を多用する施設では、電気代も多くなりがちです。LED照明を活用することで、照明にかかる電気代を削減できます。大手ショッピングセンターのなかにはトイレの照明にLEDダウンライトを採用し、1つの施設で年間83,625kWhもの電力量を削減した事例もあります。
暖房や冷房は、光熱費の大きな部分を占めています。資源エネルギー庁はオフィスビルなど「業務他部門」で2020年度に消費されたエネルギーのうち、冷房用は14%、暖房用は16%を占めたことを公表しています。
暖め過ぎや冷やし過ぎを防ぎ適温に設定する、必要な部屋だけ空調をONにするなどの工夫で、従業員の快適さを確保しながら経費削減を図れます。暖房機器や冷房機器が古い場合は、省エネ性能の高い機器に買い替えることもおすすめです。
工場や大規模施設、物流センターなど広い敷地を持つ施設では、太陽光発電を活用することで電力会社から購入する電気代を削減できます。停電などで電力会社から電気の供給が止まった場合でも部分的に施設を稼働できるため、BCPにも有効です。晴れる日が多い地域で効果を発揮する方法です。
経費削減には、外注を有効活用する方法も挙げられます。2つのアプローチをもとに、経費削減のヒントを紹介していきましょう。
外注費の見積もりを取った結果、社内で業務を遂行する経費よりも少額で済むケースは少なくありません。このような場合は業務を外注(アウトソーシング)することで、経費削減につながります。
外注できる業務は、多種多様です。例えば福利厚生にかかる業務は専門業者の「福利厚生代行サービス」を活用することで、運営費用を抑えながらサービスレベルを上げることが可能です。
外注する業務の項目を精査した結果、余分な業務を外注先にさせていたことが判明するかもしれません。この場合は依頼する業務を減らして外注費を引き下げることで、経費削減を実現できます。また社内で行うよりも外注先に依頼したほうが安価な業務は、外注先への依頼内容を増やすことで経費を削減できます。
一方で「業務内容は同じまま、外注費を引き下げる」「外注費を据え置いたまま、依頼内容を増やす」ことは避けましょう。外注先にとっては、不利益変更にあたります。場合によっては、独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」に該当するかもしれません。品質低下や外注先に無理をさせることが無いよう、工夫を凝らして経費削減を行うことが重要です。
ご自身の食事代を、会議費や接待交際費で落としたいと考える方もいるかもしれません。社外の人を含んだ飲食代が1人当たり5,000円以下ならば、所定の記録を残すことで食事代を会議費として、経費で落とせます。また接待交際費は、一部を経費で落とせる場合があります。
とはいえ経費で落とせるからといって、自動的に「経費で落として良い」というわけにはいきません。会議費や接待交際費を経費で落とすと、会社の利益は減ります。経費削減のためにも、食事を伴う取引先との打合せや接待は必要なケースに絞りましょう。特に「取引先の方にはお昼ごろに来てもらい、自分の昼食代も経費で落とす」ことを頻繁に繰り返す業務の進め方は望ましくありません。
多過ぎる在庫は、経費を上げる要因です。物品が増えれば、より広い保管スペースを用意しなければなりません。貸し倉庫を使う場合は、費用のアップにつながります。また自社のスペースを使う場合は、在庫が多いと通常業務で使えるスペースが減ってしまいます。メーカーなどものづくりに関わる業種では、特に注意が必要な項目です。
企業経営では、限られたスペースを有効活用してより多くの収益をあげることが重要です。需要を予測し作り過ぎを防ぐ、在庫が過剰になった場合は早めに処分するなどの方法で、在庫の保管費用を抑えましょう。中小企業でも導入を決断しやすい、3万円台前半で使える需要予測システムも実用化されています。
社用車の必要性を検討することも、経費削減に役立ちます。ルートセールスや宅配便配達のように顧客先への訪問を一日中行う場合は、社用車が必要でしょう。一方で社用車が時々利用される程度で、かつ公共交通機関が便利なオフィスの場合、社用車が必須とはいえません。
近年では、カーシェアリングが普及しています。公共交通機関が不便な地域を訪問する場合は、必要に応じて活用するとよいでしょう。社用車を廃止することで駐車スペースや維持管理費用、車検の費用や自動車税など、さまざまな経費を削減できます。
経費削減を、事務用品や備品を節約する取り組みから始める企業は多いです。一方でボールペン1本、ノート1冊、クリップ1個などの費用は少額です。このため、事務用品や備品の節約でまとまった経費削減を実現できるとは限りません。
一方で「事務用品も節約する」というトップのメッセージは、事業活動におけるあらゆる項目で節約を意識する動機付けとなるでしょう。コスト削減を従業員に浸透させる、有効な取り組みの一つに挙げられます。
経費削減は、以下のプロセスで実施するとよいでしょう。
経費削減は、目立つところだけ実施すればよいわけではありません。企業全体に目を配った削減策を実施することで、大きな効果が期待できます。
経費削減は、業績アップや事業の成功を目的に行うものです。手当たり次第に経費削減を行っても、業績の改善につながらないのでは意味がありません。ポイントを押さえた経費削減が効果的です。主な5つのポイントを確認していきましょう。
経費削減の効果をあげるためには、幅広い検討が必要です。すべての経費について例外を設けず、必要性を十分に検討しましょう。意外なところで、多額のムダが見つかるかもしれません。
経費の必要性をチェックすると、削減できる経費が多く見つかるかもしれません。しかし削減可能だからといって、削減して良い経費とは限りません。経費のなかには削減した結果、削った経費以上の利益を失うものもあるためです。
特に商品やサービスの品質、従業員の働きやすさに直結する経費は下げないことをおすすめします。これらの経費を下げると、競争力の低下や離職者の増大といった不利益につながります。売上に影響がない経費を優先して削減しましょう。経費削減と品質アップの両方を実現する施策を取れればベストです。
企業のなかには、削減できる経費が多岐にわたる場合があります。現場の協力が得られる場合は、経費を一気に削減する方法も取れるでしょう。一方で現場の抵抗が予想される場合は項目を精査したうえで、実施しやすく効果を上げやすい経費を優先して削減するとよいでしょう。
社内稟議を上げる際にも、効果が見えやすい施策は承認されやすいものです。まずは進めやすい施策を優先して成果をあげ、経費削減に対する信頼と支持を得ることもおすすめする方法です。
経費削減を行う際には、従業員への十分な説明も欠かせません。納得を得られれば従業員の協力を得られ、スムーズに経費削減を進められるでしょう。
説明が必要な理由には、従業員の離職防止も挙げられます。説明なく経費削減を呼びかけると、従業員は自社の経営危機を疑いかねません。結果として、離職が相次ぐ可能性もあります。優秀な人材が続々と離職すれば、従業員の減少による経営危機を引き起こしかねません。
人件費は経費の大きな割合を占めます。このため人員を減らしたいと思うかもしれませんが、慎重に検討する必要があります。
そもそも解雇のハードルは、高く設定されています。「人が余った」といった理由では解雇できず、解雇を防ぐ努力を尽くしたことが必要です。希望退職を募れば、優秀な人材から離職してしまうでしょう。退職勧奨を行う方法もありますが、従業員が応じるとは限りません。
もし業績が回復した場合でも、社会全体が慢性化した人手不足の状態にあるため、思うように採用できるとは限りません。安易に従業員を削減すると、事業拡大の足かせになりかねないわけです。将来の発展の芽を摘まないためにも、極力配置転換で対応しましょう。不採算部門を縮小する場合は業績の良い部門に移ってもらう、新規事業を立ち上げるなどの方法が考えられます。
経費の削減方法は多種多様ですが、どの法人にも合うとは限りません。削ると事業運営に大きな影響をおよぼす経費の項目は、法人によって異なります。経費全体をチェックしつつ、貴社の事情に合った項目を選び、経費削減を実現することがおすすめです。顧客や従業員の理解を得ることで経費削減もスムーズに、効果的に進められるでしょう。
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