PBXは電話交換機の意味で、「Private Branch Exchange」を略した通信用語です。1本の電話回線で、複数の電話機を使えます。また多数の電話回線を接続して、通話を制御することも可能です。主な役割を、以下に挙げました。
上記のとおり、電話による通話をスムーズに行える機能を備えています。これらはビジネスを円滑に進めるうえで、欠かせない機能です。
PBXは、さまざまな法人で活躍しています。コールセンターやコンタクトセンターは代表的ですが、その他の業種でも企業の大小を問わず、広く使われています。スマートフォンやパソコンも内線電話として使えるため、在宅勤務やリモートワークに積極的な企業との相性もよいシステムです。
PBXは設置先や通信回線の使用方法によって、3つの種類に分かれています。主な特徴を、以下の表にまとめました。
PBXの種類 | 主な特徴 |
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レガシーPBX |
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IP-PBX |
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クラウドPBX |
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オールマイティーのPBXはないため、貴社の要件に合わせて適切な種類を選ぶことが重要です。おすすめの一例を以下に示しましたので、参考にしてください。
PBXが持つ機能は、大きく5つに分かれます。どのような機能で日々のビジネスを支えているのか、詳しく確認していきましょう。
同じ組織の電話機どうしであれば内線で通話できることは、PBXの主な魅力です。IP-PBXやクラウドPBXの場合は、相手が他の拠点でも内線を使って通話できる、テレワークや在宅勤務中の方とも内線で話せるといった魅力的な機能も使えます。電話料金がかからないため、通話コストを大幅に削減できることにメリットを感じる方も多いでしょう。
電話番号は電話回線1本につき、1つだけ付与されることが原則です。一方でPBXを使った場合は、1本の回線契約で電話番号を部署ごとに持つことが可能です。例えば営業部と開発部、総務部でそれぞれ別々の番号を持てます。営業部から電話を発信すると相手先の電話には営業部の電話番号が表示され、社外から総務部に電話すると総務部の電話機だけ着信音が鳴るといった動作をします。
この機能はPBXを使って、電話機の内線番号と電話番号を紐づけることで使えます。結果として、以下に挙げる便利な機能を使うことが可能です。
また電話機によっては、1台で電話番号を切り替えられる機種もあります。ボタンを操作すればどの電話番号で発信するか決められるため便利です。
PBXなら、代表番号宛ての着信があった際は複数の電話機を鳴らし、どの電話機でも取ることが可能です。「発信や着信の制御を行う」で述べた要領で、内線番号と代表電話を紐づける設定を行えばよいわけです。手の空いた方が取れば良いため、業務をスムーズに行えることが魅力です。
着信した電話を自動で他の電話機に転送できることも、PBXの特長に挙げられます。転送機能は、大きく以下の4種類に分かれます。
転送機能の種類 | 指定の電話機へ転送する条件 |
---|---|
不在転送 | 営業時間外やオフィスに誰もいないとき |
話中転送 | 通話中に外部からかかってきた着信 |
応答遅延転送 | 着信に応答しないとき |
圏外転送 | 電話機が圏外の場合 |
もちろんいったん電話に出た後、保留した状態で他の電話機に転送することも可能です。
パーク保留機能は保留した電話を、どの電話機でも取れるようにした機能です。最初に電話を取った方はパーク保留ボタンを押し、担当者にボタンの番号を伝えます。連絡を受けた担当者は該当のボタンを押すことで、相手と通話できる仕組みです。顧客の担当者はもちろん、製品に詳しい方など適任者につなげられることはメリットといえるでしょう。
「○○さん、1番にお電話です」という言葉を聞いた方は多いでしょう。PBXでは、パーク保留機能で実現できます。伝える方法は内線電話以外に、チャットツールや直接対面で知らせる方法でもかまいません。PBXのなかには、スマートフォンでパーク保留機能を使える製品も登場しています。
PBXは、類似する「ビジネスフォン」や「FMC」と比較される場合があります。どのような相違点があるか確認し、PBXならではの強みを確認していきましょう。
ビジネスフォンはPBXと同様に、オフィスでよく使われる電話機です。両者には以下の相違点があります。
項目 | PBX | ビジネスフォン |
---|---|---|
他の拠点との内線通話 | IP-PBXやクラウドPBXの場合は可能 | 不可 |
スマートフォンへの転送や内線通話 | IP-PBXやクラウドPBXの場合は可能 | 不可 |
接続台数 | 数千台の接続が可能 | 多くても数百台程度 |
初期費用 | クラウドPBXで数十万円。レガシーPBXやIP-PBXは数百万円から数千万円 | 数十万円から数百万円の場合が多い。小規模企業では数万円程度での導入も可能 |
PBXはまとまった初期費用がかかるものの、ビジネスフォンよりも機能が豊富です。このため、比較的規模の大きな企業でよく用いられます。
FMCは固定電話と携帯電話を連携し、スムーズな顧客対応を実現するサービスです。ビジネスフォンの場合、担当者が外出中に外線から着信があった場合は、担当者に連絡して折り返しの電話をかけてもらう必要がありました。FMCを使えば外線からかかってきた電話を、外出している担当者の電話につなぎ、会話してもらうことが可能です。
これらの機能は、クラウドPBXでも使えます。一方でFMCでは、外線番号を使った発信や着信ができません。外線でかかってきた電話を直接取れるという点では、クラウドPBXが優れています。
クラウドPBXは、PBX本体を貴社の社内に置かないサービスです。利用者は運営会社が管理するクラウドPBXにアクセスし、電話機能を利用します。物理的なPBXが社内にないため、社内・社外を問わずインターネット回線を通してアクセスすることが特徴です。このため、外出先でも会社の電話を受けたりかけたりできることは魅力です。
クラウドPBXは月額料金を支払う必要があるものの、メンテナンスは運営会社が実施するため貴社の手間が軽減されます。またパソコンやスマートフォンも使用でき、離れた拠点にいる従業員間の通話も内線で行えます。一方で固定電話番号を使いたい場合は、社内に専用の機器を設置しなければなりません。
クラウドPBXを活用することで、さまざまなメリットを得られます。この記事では代表的な7つのメリットについて、ビジネスにどう役立つか確認していきましょう。
クラウドPBXを使う大きなメリットの一つに、「どこでも会社の電話を着信・発信できる」という点が挙げられます。クラウドPBXではインターネットがつながってさえいれば、社外でもオフィス内と同じように電話を使えるためです。外出先や出張先はもちろん在宅勤務でも使えますので、オフィスにいないときでもビジネスをスムーズに進めることが可能です。
レガシーPBXやIP-PBXの初期費用は、数百万円から数千万円におよびます。初期費用の高さに驚く方も多いのではないでしょうか。IP-PBXの場合は、インターネット回線の利用料金もプラスされます。
一方でクラウドPBXは月額費用がかかるものの、初期費用は数万円から数十万円程度で済みます。この金額のなかに、機器の保守管理費用やサポート費用も含まれます。レガシーPBXやIP-PBXよりも低いコストで始められることに、魅力を感じる方も多いでしょう。
クラウドPBXは、いくつかの機能がオプションとなっている場合があります。オプションを組み合わせて、必要な機能だけを選んで使えるため便利です。基本的な機能だけで良い場合は、低額のコストで済むことも魅力的です。
また機能のカスタマイズを希望する場合は、オプション機能を駆使して行います。フルカスタマイズは難しいですが、貴社の希望に近い形で使える場合もあります。
クラウドPBXは、構内交換機を社内に置かないサービスです。レガシーPBXやIP-PBXではPBXまたはサーバーの設置スペースを用意しなければなりませんが、クラウドPBXでは不要です。オフィスやサーバールームのスペースを有効活用できることに、大きなメリットを感じる企業も多いでしょう。
社内に設置されているPBXには、寿命があります。10年以上使える場合もありますが、長期間使用したPBXは故障のリスクが上がります。修理や交換には、多額の費用が必要となるでしょう。リース契約を結ぶ場合はまとまった金額を用意しなくてよい代わりに、決められた料金を定められた期間、支払い続けなければなりません。
クラウドPBXは月額料金が課金される代わりに、機器をリプレースしなくて済みます。定期的にまとまった費用を払う必要はありません。またリース契約を結ぶ際にありがちな、同じ機器を一定期間利用しなければならない制約もありません。機器は運営会社が管理しているため、老朽化の心配なく使い続けられることは大きなメリットです。
クラウドPBXは契約数を追加すれば、迅速に台数を追加できることが魅力です。また1か月といった短期利用も可能です。このため以下の要望にも、速やかな対応が行えます。
ビジネスの柔軟性が高まることは、大きなメリットといえるでしょう。
クラウドPBXで使われる電話交換機は、PBXの運営会社が管理しています。レガシーPBXやIP-PBXと異なり、貴社の本社や事業所と異なる場所に配置されていることは大きな特徴です。
万が一貴社の施設に被害が生じても、インターネットを使って所定のクラウドPBXに接続できれば、会社の電話を使って通信できることは大きな魅力です。あらかじめスマートフォンをクラウドPBXに登録しておくことで、このメリットを簡単に活用できるでしょう。被災しても取引先との連絡や社内の連絡をスピーディーに取れることで安心感を得られるとともに、復旧へのスピードを高めることが可能です。
ほかのシステムと同様に、クラウドPBXもメリットばかりではありません。この記事では、代表的な3つのデメリットを取り上げます。どのようなデメリットがあるか確認し、自社にクラウドPBXが適するかどうかの判断にお役立てください。
クラウドPBXは、月額で課金されるサブスクリプションサービスです。利用者数や端末の台数が増えると、月額料金も増すことに注意が必要です。
端末1台当たりのライセンス料金は、事業者によって異なります。事前に見積りを取り、複数の運営会社を比較するとよいでしょう。またライセンス数の大幅な変動が予測される場合は、端末ごとのライセンス料金が安価な事業者を選ぶことも一つの方法です。
050で始まる番号など市外局番を使わないクラウドPBXからは、発信できない番号がいくつかあります。110番や119番、118番といった緊急通報を発信できないことに注意が必要です。このうち118番は、海上で起こった事件・事故の緊急通報です。
加えて、以下に挙げる番号での発信もできません。
番号 | 内容 |
---|---|
104 | NTT番号案内 |
113 | 電話の故障受付 |
115 | 電報の申し込み |
117 | 時報 |
177 | 天気予報 |
実際にこれらの番号を使う機会は、多くないかもしれません。上記の番号に発信できないクラウドPBXを選ぶ際は、代替手段をどうするかあらかじめ検討しておきましょう。
クラウドPBXはインターネット回線を介して接続するサービスですから、インターネットがつながらない場所や状況では使えません。もしインターネット回線が敷設されていない場合は、回線の準備から始めましょう。また突然の回線トラブルに備えて、クラウドPBXが使えない場合の対策を考えておく必要があります。
評判の良いPBXでも、自社にマッチするとは限りません。最適なPBXを選ぶポイントは、大きく5つに分かれます。それぞれのポイントを確認し、貴社に適したPBXを選んでください。
PBXの初期費用や料金体系は、ベンダーや運営会社、どの種類のPBXを選ぶかによって大きく異なります。契約前の検討段階で、導入する際に必要な費用やランニングコストをチェックしておきましょう。
クラウドPBXでは、アカウント数の増加やオプションを増やすことでランニングコストがアップします。利用者が多い企業では、特に注意が必要です。
PBXは、今の業務をより良くするために導入するものです。有名なサービスだからといって、業務をPBXに合わせることはおすすめできません。例えば電話回線をインターネットから切り離したい場合は、レガシーPBXのなかから選ぶことをおすすめします。一方でフルリモートを採用する企業など、電話交換機を社内に置きたくない場合はクラウドPBXを選ぶことになるでしょう。
また企業によっては、PBXの導入により今の電話番号を変えたくないというケースもあるでしょう。現在の電話番号をそのまま使えるかという点も、重要なポイントの一つです。
レガシーPBXやIP-PBXは、導入後数年間は使い続けるものです。クラウドPBXを導入する企業でも、頻繁にPBX事業者を変えることはあまりないでしょう。このためPBXを契約する際には数年後を見据え、将来の事業展開や働き方を考慮したうえで契約先を選びましょう。考慮するポイントの一例を、以下に挙げました。
クラウドPBXは機能の豊富さが魅力ですが、すべての機能が貴社に必要とは限りません。使うかどうかわからない機能をオプションとして付加すると、月額料金はどんどんアップしてしまいます。導入を計画する段階で自社に必要な機能を見極め、使う機能だけを契約するとコストパフォーマンスが高まります。
またクラウドPBXは、インターネットを使ってアクセスするサービスです。運営会社のセキュリティ体制が万全か、しっかり確認しましょう。もちろん貴社のセキュリティも万全にしておく必要があります。
クラウドPBXのサポート体制は、運営会社により変わります。事業運営に必要な電話が使えない時間は、できるだけ短くしたいもの。サポートにかかわる、以下の項目も忘れずに確認しておきましょう。
PBXはビジネスを円滑に進める、さまざまな機能を搭載しています。一方でPBXは3種類に分かれるほか、提供される機能もベンダーや運営会社により大きく異なります。このため以下のポイントを押さえたうえで、貴社に合ったPBXを選びましょう。
貴社に適したPBXは、ビジネスを後押しします。価格だけで決めず、貴社にマッチしたPBXを選びましょう。