DXの推進はなぜ必要なのか?必要な取り組みや実現するステップも紹介

企業経営において、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれる時代となりました。関心をお持ちの方も多いでしょう。一方で「なぜDXの推進が求められるのか。事業の改善や効率化では不十分なのか」という考えをお持ちの方も、いるかもしれません。
DXの推進は、なぜ求められているのでしょうか。本記事ではDXの推進が必要な理由を解説したのち、DXの推進に必要な取り組みや実現するステップを紹介します。
DXの推進はなぜ必要なのか?必要な取り組みや実現するステップも紹介

そもそもDXとはなにか?

DXはビジネスで注目されているキーワードですが、理解できているかどうか自信がない方も多いのではないでしょうか?この記事ではDXの概要を紹介し、DXを正しく進めるきっかけを提示します。

DXはデジタル技術を用いた改革

DXとは、デジタル技術を用いた企業の改革を指します。IDC Japan株式会社では、以下のように定義しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

DXは変化の激しい現代に対応した、ビジネスに関する概念です。DXには新しいIT技術やデジタル技術の導入が求められますが、これだけでは不十分です。データを活用する、事業の仕組みを変革するなど、企業自体の改革も求められます。顧客に受け入れられる製品やサービスをつくり、市場で優位な立場に立つことは、代表的なDXの目的です。DXはデジタル技術を用いた改革であることを認識しておきましょう。

IT化やデジタル化、業務効率化との相違点

DXは、IT化やデジタル化とは異なります。IT化やデジタル化の場合、新しい技術やサービスの導入は目的です。自動化による省力化は、代表的な例といえるでしょう。ときには業務改善や業績の向上につながらなくても、新システムが無事に稼働すれば成功と扱われるかもしれません。

一方でDXの場合は、ビジネスモデルの変革が前提です。IT技術やデジタル技術の導入は、DXを実現する手段に過ぎません。改革を実現してビジネスの成功につながらなければ、最新システムを導入しても失敗と扱われてしまうでしょう。

DXは、業務効率化とも異なります。業務効率化は、業務プロセスやビジネスモデルの維持を前提としています。「より短時間で」「よりコストを抑える」といった目標は代表的です。

一方でDXは、業務の改革が前提です。今の仕事がなくなるなど痛みを感じる方も出てきますが、新しい時代へ適応するために必要な事業にシフトし、組織や仕事の仕組みを作り直すことがDXです。DXにより業務効率化が図られるケースも多いですが、それは結果に過ぎません。

DXの推進が企業にもたらす5つの効果

DXの推進が企業にもたらす5つの効果

DXの推進は、企業にさまざまなメリットをもたらします。この記事では主な5つの項目について、どのようなメリットや効果があるか解説します。

システムがもたらす制約から解放される

変化の激しい時代に既存システムを無理に使い続けることは、さまざまなリスクをはらみます。例えばレガシーシステムは人員不足や技術的な制約などにより、しだいに改修しにくくなるでしょう。OSからソフトウェアまで特定のベンダーに準拠するシステムでは、ベンダーロックインによる不利益も見逃せません。「高コスト」「より良いソフトウェアやサービスを使えない」といった項目は代表的なデメリットです。

高額な保守費用も、企業の頭を悩ませる課題です。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」によると、多くの企業でIT関連費用を現行維持のためだけに消費していることがわかります。

  • 全体では8割の費用が、現行ビジネスの維持・運営で消費されている
  • 全体の4割の企業では、現行ビジネスの維持・運営にかかる費用がIT関連費用の9割以上

「新しい付加価値をつけたくても、予算をまわせない」実態がうかがえます。DXを推進すれば、工夫次第でシステムに付加価値をつけ、貴社の価値や業績向上に寄与することが可能です。

生産性が向上する

DXの活用による代表的なメリットには、生産性の向上も挙げられます。以下の方法を活用し、工数の削減や時間の短縮を図れます。

  • 業務自体を廃止、または全面的な機械化
  • 仕事の進め方を刷新する

DXは業務の根本的な部分にメスを入れるため、大きな効果を得やすくなっています。

新しいビジネスを立ち上げやすくなる

DXの推進は、新しいビジネスを立ち上げやすくなる点もメリットに挙げられます。主な理由を、以下に挙げました。

  • 固定観念や社内の暗黙の了解から解放され、新しい概念を導入しやすくなる
  • 社内システムによる制約から解放され、新しい技術を導入しやすくなる

一例として、以下のビジネスが挙げられます。

  • 不動産物件のオンラインを使った内覧
  • AIを活用した自動応答サービスの提供
  • センサーを使った設備や備品を介護施設に設置し、安全性と介護士の働きやすさを両立する

人手不足の事態に適応しながら利用者の利便性を高められるビジネスの推進は、DXがもたらす効果の一例です。

顧客満足度を向上できる

顧客満足度の向上も、DXがもたらすメリットに挙げられます。DXにより、以下に挙げる取り組みをしやすくなるでしょう。

  • 顧客のニーズを迅速に発見し、競合他社に先んじて新製品・新サービスを提供できる
  • 個々の顧客にマッチした、きめ細かい対応が可能
  • 仕事の進め方を標準化でき、担当者によるばらつきを軽減できる

顧客満足度の向上は貴社の評価を上げ、業績のアップにつながります。

変化が激しい時代でも競争に勝ち抜ける

DXを継続して推進している企業は、システムだけでなく仕事の進め方や組織の改革も継続して進めています。「より良い事業運営を」という風土が、会社に根付いているわけです。

このような企業は、変化にいち早く気づき適応できます。激しい変化が起きた場合でも迅速に対応でき、競争に勝ち抜けるというわけです。

企業にはなぜDXの推進が必要なのか?

企業にはなぜDXの推進が必要なのか?

DXの推進は業種を問わず、多くの企業で求められています。貴社が現状維持を望んだとしても、DXから逃れると業績が右肩下がりになってしまうかもしれません。ここからはDXの推進が求められる理由を4つ取り上げ、解説していきます。

変化の速い時代への対応が必要

「年を追うごとに、世の中の変化はますます速くなる」このような感想をお持ちの方も、多いのではないでしょうか?変化の速さは、DXを推進する代表的な理由です。「不確実性への対応」と「スピードやきめ細かな対応」の2点に分けて、DXが求められる理由を確認していきましょう。

不確実性が高い時代への対応

私たちの置かれた状況は、安定しているとはいえません。世界各地で起こる紛争は、自社の事業運営に大きな影響を与える場合もあります。燃料費や材料の高騰に悩む企業も多いでしょう。企業は時々刻々と変わる状況に適応し、事業を進めていかなければなりません。

加えて日本は、さまざまな自然災害のリスクがあります。地震や津波、風水害、大雪などを原因とする被害に遭っても事業を継続できるよう、適切な事業継続計画(BCP)を立てる必要があります。

より速く、よりきめ細かな対応が求められる時代の到来

インターネットの普及は消費者のニーズをより早くチェックでき、ニッチな需要にこたえられる環境を実現しました。消費者のニーズが多様化したこともあり、企業にはより速く、よりきめ細かな対応が求められています。

例えば旅行業界では団体旅行から個人旅行への変化や外国人旅行者の増加に加えて、ワーケーションなど新しい旅の概念に対応することが求められています。システムだけでなく、ビジネスの仕組み自体を再構築しなければならない場合もあるでしょう。このようなケースでは、DXの推進が効果をあげます。

クラウドの普及に伴う対応が急務

クラウドの普及に伴う対応も、DXが求められる理由の一つです。クラウドの活用により、以下のメリットが得られます。

  • 必要なときに必要な量だけシステムを使うことが可能
  • 自社でシステムを持たずに事業を運営できる
  • データを遠隔地の安全な場所に保管し、被災時のリスクを下げられる
  • トラブル対応や定期的な保守も運営会社に任せられる

クラウドを活用した、ビジネスのスピードアップも進んでいます。競争に勝ち抜くためには、クラウドの普及にも対応しなければなりません。

「2025年の崖」を見据えた企業の変化が求められる

レガシーシステムには、「2025年の崖」と呼ばれる問題があります。2025年以降、レガシーシステムを取り巻く環境が急速に悪化することを警鐘しているわけです。なぜレガシーシステムを漫然と使い続けることがリスクなのか、3つの観点で確認していきましょう。

既存システムの老朽化が多数発生する

「DXレポート」では2025年になると、基幹系システムのうち稼働年数が21年以上となるシステムが全体の6割に達する見込みを示しています。これほど長く使い続けていると、システムトラブルやデータが失われるなどのリスクが高まります。多数の企業でトラブルが発生すれば、ベンダーも迅速な対応が難しくなるでしょう。

そもそも古いシステムには、以下のリスクがあります。

  • ハードウェアの場合は、交換部品の供給中止
  • ソフトウェアの場合は、サポートの終了

このような事態に直面すれば「故障したが、復旧できない」という事態に陥り、事業継続に大きな障害となりかねません。

急激に増大するデータへの対応が必要

いまやデータは、ビジネスの成功に欠かせないものとなっています。システムの進化により、データも急激に増大していることに着目してください。

経済産業省では、インターネットのトラヒック(データ通信量)が毎年2割から4割、3年間でおよそ2倍に増加していることを示しています。メインフレームやオンプレミスでのシステムでは、データ量の増加に対応することが簡単ではありません。クラウドの活用など、新しい技術への対応も求められるでしょう。

SIベンダーに受注を断られる時代が来る

SIベンダーにレガシーシステムを保守するリソースが少なくなっていることも、留意しておきたいポイントです。デジタルビジネスの進展により、多くのIT企業はデジタル部門にシフトしています。レガシーシステムの技術者は高齢化が進んでおり、さらなる技術者の減少が懸念されています。

この結果「レガシーシステムを改良して使い続けたい」と思っても、技術者不足を理由としてSIベンダーから受注を断られるかもしれません。「システムに多大な問題があるが、法令にあわせたアップデートもできない」といった事態に陥る前に、DXに取り組むことが求められます。

低い労働生産性の改善が必要

労働生産性の低さも、日本が抱える課題の一つです。公益財団法人日本生産性本部はOECDのデータをもとに、以下のように公表しています。

項目 順位 備考
時間当たり労働生産性 27位(OECD加盟38カ国中) 金額はアメリカの6割程度
一人当たり労働生産性 29位(OECD加盟38カ国中) 金額はポーランド、ポルトガル、ハンガリー、ニュージーランドと同水準
製造業の労働生産性 18位(OECDに加盟する35カ国中) 金額はアメリカの6割程度。フランスや韓国と同水準

日本は諸外国と比べても順位は高くなく、労働生産性に優れた国ともいえません。一方でデジタル化が進んでいない企業も多いことを踏まえると、労働生産性における改善の余地は大きいといえます。DXによりIT化・デジタル化を進展させビジネスや仕事の仕組みを変えることで、業績の改善が期待できるでしょう。

日本におけるDXの推進状況

日本におけるDXの推進状況

読者の皆さまは、以下の点に注目している方も多いのではないでしょうか。

  • 日本全体で、どのくらいの企業がDXに取り組んでいるのか
  • 自社と同規模の企業がDXに取り組む状況

「競合他社が取り組んでいるなら、自社も取り組まなければ」と思う方も多いでしょう。独立行政法人情報処理推進機構が公表した「 DX白書2023 」をもとに、日本におけるDXの推進状況を解説します

売上高が大きい企業ほどDXへの取り組みも進んでいる

DXへの取り組み状況は、企業の売上高や従業員数によって大きく異なります。まずは「DX白書2023」で公表された、売上高別の結果を確認していきましょう。

2021年度単体売上高 全社戦略に基づき DXに取り組む DXに取り組んでいない
1000億円以上 85.1% 3.0%
500億円以上1000億円未満 67.2% 8.2%
300億円以上500億円未満 54.9% 19.6%
100億円以上300億円未満 56.4% 23.4%
50億円以上100億円未満 55.1% 32.1%
50億円未満 27.3% 58.9%
  • 出典:独立行政法人 情報処理推進機構「 DX白書2023

売上高1000億円以上の企業では85%以上、500億円以上の企業では3分の2以上が全社戦略に基づきDXに取り組んでいます。これらの企業では、DXに取り組んでいない企業は全体の1割未満と少数派です。また売上高50億円以上の企業では、過半数が全社戦略に基づくDXに取り組んでいます。一方で売上高50億円未満の企業では、過半数がDXに取り組んでいません。

企業規模が大きくなるほどDXへの取り組みが積極的なことは、従業員数によるデータにも現れています。以下の表でご確認ください。

従業員数 全社戦略に基づきDXに取り組む DXに取り組んでいない
1,001人以上 80.5% 5.2%
301人以上1,000人以下 63.2% 14.5%
101人以上300人以下 46.4% 38.2%
100人以下 26.2% 57.7%
  • 出典:独立行政法人 情報処理推進機構「 DX白書2023

従業員数が多くなるほど、DXに取り組む企業の割合も多くなります。1,001人以上の従業員を抱える企業では、全社戦略に基づくDXに取り組む企業の割合が8割を超えました。一方で従業員が100人以下の企業では、DXに取り組んでいない企業が過半数にのぼっています。

日本では大企業や中堅企業がDXに先行して取り組んでいる一方、取り組みが進んでいない中小企業も多いことがわかります。

DXへ取り組む企業はレガシーシステムの状況把握も進んでいる

レガシーシステムとは、老朽化した既存ITシステムのことです。どれだけ優秀なシステムでも、稼働年数が長くなるとレガシーシステムになります。事業運営にITを活かすためには定期的にシステムの状況を把握し、適切なタイミングで刷新することが必要です。

「DX白書2023」では、DXの取り組み状況とレガシーシステムの把握状況に関連があることを公表しています。

レガシーシステムの状況 DXに取り組んでいる DXに取り組んでいない
レガシーシステムは無い 10.1% 15.3%
レガシーシステムがある 81.6% 43.9%
レガシーシステムがあるかどうかわからない 8.2% 40.8%
  • 出典:独立行政法人 情報処理推進機構「 DX白書2023

DXに取り組む企業のうち8割以上は、レガシーシステムがあると回答しています。デジタル化への過渡期にある現代、社歴の長い企業では致し方ない状況といえるでしょう。一方でレガシーシステムの有無を把握していない企業は8.2%と少なく、多くの企業が問題意識を持っていることがわかります。

一方でDXへ取り組んでいない企業は、二極化しています。「レガシーシステムは無い」と回答した企業が15.3%ある一方で、レガシーシステムの有無を把握していない企業は40.8%にものぼります。レガシーシステムの状況を把握していない企業は、「2025年の崖」を意識していないかもしれません。これらの企業は「システム更新を依頼したが断られた」などのように、いきなり事業継続の高い壁に直面するおそれがあります。

DXを推進する際にクリアすべき5つの課題や取り組み

DXを推進する際にクリアすべき5つの課題や取り組み

これからの企業にとってDXは重要ですが、どのような方法で取り組んでも効果をあげるわけではありません。ポイントを押さえた取り組みは、成功への近道です。

クリアすべき課題や取り組みは、大きく5つに分かれます。注意すべきポイントも含めて、何をどのように行うべきか確認していきましょう。

経営トップによるDXの推進

事業改革は、何らかの抵抗を受けやすいものです。特に全社規模でのDX導入を目指す場合は、はじめから経営トップが旗振り役を担い、改革へのゆるぎない意志を示す必要があります。どの組織にもいる「自分の既得権益を守りたい」という人よりも優位に立たなければ、DXは実現できません。実際に経済産業省は2018年に公表した「DXレポート」において、以下の点を指摘しています。

新たなデジタル技術を活用できるように既存システムを刷新するという判断をする企業はまだ少ない。ただ、そうした判断を行っている企業は、必ずと言っていいほど経営層のコミットがある。そうでない企業は、経営層の関与が薄く、改修して利用し続けた方が安全であると判断される割合が多い。

ユーザ企業内が実は一枚岩ではないケースがある。事業部ごとに個別最適されたバラバラなシステムを利用しており、全体最適化・標準化を試みても、それぞれの事業部が抵抗勢力となって前に進まない。こうした各事業部の反対を押しきることができるのは経営トップのみであるが、そこまでコミットしている経営者は未だ少ない。

DXを行うなら経営陣が関与して、トップダウンにより全社規模で実施するとよい結果につながりやすいでしょう。

既存の「当たり前」を打破する姿勢

DXの実現には、発想の転換も必要です。一例として、以下の考えを見てみましょう。

データは事業運営に不可欠な資産なので、社内に物理的なサーバーを用意してしっかり保管すべきである。社外で保管すると情報が流出するおそれがあり、安全ではない。

以前は上記の考え方が「当たり前」とされた時代もありました。しかしデジタル化や災害の激甚化が進んだ現代では、以下の理由により適切とはいえません。

  • 専任のシステム担当者を置けない場合はセキュリティ対策が不十分になりやすく、リスクが高まる
  • オンプレミスは社外から利用するための設定が必要。初期費用も高く拡張性も低い
  • 地震や水害により社内のサーバーが被災し、データが失われるリスクがある
  • システムをメンテナンスする手間や、トラブルに対応する工数も無視できない
  • 高いレベルのセキュリティを提供するクラウド事業者も多い

この結果、「社内でサーバーを置くよりも、むしろクラウド事業者に任せたほうが安心」というケースも出てくるでしょう。クラウドの活用によりできることが増えれば、業務プロセスの改革にもつながります。クラウドはモバイル端末を使ったアクセスも簡単なことがメリットです。

実際に近年では、モバイル回線の高速化による携帯端末からのアクセスも重視されています。楽天モバイル法人プランの「音声+データ無制限・データ専用プラン」ならデータ容量を無制限で使える ため、パケットの増加を気にせず利用できるメリットがあります。在宅勤務やリモートワークに対応しながら通信コストを削減でき、リアルタイムなレスポンスで生産性の向上に寄与することでしょう。

  • 公平なサービス提供または環境により速度低下する場合あり

これまで「当たり前」と思っていた事項もゼロベースで再検討することにより、DXの実現やよりフィットするシステムの選定、事業改革の実現に寄与します。

現状の正しい把握

事業の成功には、現状を正しく把握することが必要です。DXも例外ではありません。DXを取り巻く以下の状況を正しく把握し、適切な判断につなげる必要があります。

  • 事業環境
  • 自社の強み・弱み
  • 経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)
  • 顧客のニーズや社会のトレンド
  • 既存システムの仕様

DXはITを活用した改革の手法です。既存システムの仕様を把握していることは、適切なDXの計画を立てるうえで欠かせない事項です。

DX人材の確保

DXを推進するならIT業界以外の企業でも、優秀なDX人材を確保しておくとよいでしょう。SI企業やコンサルティング会社による提案が妥当かどうか、自社でチェックできる強みが得られます。DXの推進には、以下のスキルが求められます。

  • 技術的なスキル(アジャイル開発、データサイエンス、AIや人工知能、IoTなど)
  • 業務知識
  • マネジメントスキル
  • コミュニケーションスキル

もっとも優秀な人材の確保は、簡単ではありません。「DX白書2023」では企業規模を問わず、多くの企業はIT人材の不足を感じているというデータを公表しています。求めるDX人材を確保するためには、高い給与など働きやすく魅力的な条件の提示も求められるでしょう。すでにDX人材が在籍している企業の場合は、社内で育成することも有効です。

経営に役立つデータを収集する仕組みづくり

DXにおいて、データは重要な役割を果たします。データをもとに適切な意思決定や経営判断を行う「データドリブン経営」は、今の時代のトレンドです。

せっかくシステムを刷新し事業改革を進めても、事業に役立つデータを入手できなければ効果は大きく減少します。必要なデータを効率よく集める仕組みや分析ツールの導入もあわせて進めましょう。部門ごとに散らばったデータの一元管理も重要な取り組みです。

DXを推進する6つのステップ

DXを推進する6つのステップ

DXを推進するステップは、6つに分かれます。段階を追って進めることは、成功のコツです。それぞれのステップで何を行えばよいか、確認していきましょう。

ステップ1:現状を可視化する

現状を正しく把握することは、適切な手を打つ第一歩です。以下の点を分析し、可視化して共有することが重要です。

  • 市場における自社のポジション
  • 自社の強みや弱み、課題
  • ユーザーの意見やニーズ
  • 社内で活用している情報資産やデータの種類・量
  • 事業に使える経営資源
  • システムの保守・運用に要するリソース

調査したところ、良くない結果が得られるケースも多いでしょう。不都合な事実もありのままに受け入れることは、大きなステップアップを実現する第一歩です。そもそもDXは、貴社が大きく飛躍するために導入することを忘れてはいけません。

ステップ2:DX人材を確保してツールやITサービスを調査する

DXの成功は、適切な計画が重要です。自社に優秀なDX人材がいれば、適切な計画を立案できます。ツールやITサービスを調査し、DXの成功に役立つ製品を見つけられるでしょう。SIベンダーが立案した計画も適切に評価でき、自社の発展に貢献するシステムを導入できます。

一方でDX人材は、すぐに見つかるとは限りません。自社で育成する場合は、相応の期間を要します。このため早い段階でDX人材を確保する、または確保の目途を立てることが重要です。もし適切なレベルの技術者がいない場合は、外部の技術者に依頼することもご検討ください。

ステップ3:DXの目的やゴール、具体的な施策を決める

DXの成功には、目的や目標、ゴールの設定が欠かせません。この設定には、経営トップの関与をおすすめします。トップダウンで進めることで全社一丸となる雰囲気が醸成され、改革を進めやすくなります。

ステップ1と2で収集した課題や情報をもとに、進むべき方向を決めましょう。ゴールを実現する具体的な施策も決めておくと、スムーズに走り出せます。

ステップ4:DXを実現する体制や仕組みを作る

DXの方向性が決まったら、実現に必要な体制や仕組みを作ります。専門の部署やチームを設けるケースもあれば、既存の部署に任せるケースもあるでしょう。

DXの実行には、さまざまな障害があります。予期せぬ問題の発生は、代表的な障害です。また全社規模の改革となるため、ときにはタフな交渉も必要となるでしょう。これらに対して迅速に対応するためにも、実行する部門には大きな権限と予算を与えることが成功のコツです。

ステップ5:DXの実現に向けた施策を実施する

DXの目的や目標、具体的な施策や体制が整ったら、あらかじめ定めた施策の実行に移ります。システム導入やシステム開発、組織改編や担当業務の変更などが代表的です。時々刻々と変わる状況に対応しながら、迅速・確実・丁寧に進めていきましょう。

ステップ6:施策の成果を確認し、次の手を打つ

実施すべき施策が終わったら、成果を確認します。DXは1回の取り組みで完了するものではなく、継続的な取り組みが必要です。もちろん失敗したからといって、DXをあきらめる必要はありません。成功・失敗に関わらず要因を分析し、次の手を打つことが必要です。

DXを推進し顧客の信頼を得て、貴社の飛躍を実現しよう

DXを推進し顧客の信頼を得て、貴社の飛躍を実現しよう

これからの事業運営に欠かせないDXは、さまざまな要件をクリアすることで成功へ導けます。実現には経営トップの覚悟と全社を挙げた体制が必須ですが、単なるIT化や業務効率化よりも大きな成果を得られるでしょう。

情報資産を活用して市場の変化にすばやく追随することにより、顧客の信頼を得られ競争に勝ち抜けることは、DXを活用する大きなメリットです。貴社もぜひDXを推進して、業績アップと貴社の飛躍を実現しましょう。