2023年12月1日から検知器を使ったアルコールチェックが義務化

2023年12月1日から検知器を使ったアルコールチェックが義務化

これまでも運転前後の点呼において、酒気帯びに関するチェックは実施されてきました。2023年12月1日以降はチェックの手段として、対面によるアルコール検知器の使用が義務化されます。五感によるチェックだけでは、法令の要件を満たさなくなるわけです。

また確認した結果は記録したうえで、1年間の保存が必須です。これは事業所ごとに任命された、安全運転管理者の責務として課されます。もちろん会社としても、守らなければならない事項です。

緑ナンバーだけでなく白や黄色ナンバーも対象

以下のいずれかの要件に該当する事業所では、安全運転管理者の配置が義務付けられています。2023年12月1日以降、以下のいずれかに該当する事業者は業務で車を使う際、運転者に対して検知器を使ったアルコールチェックの実施が義務化されます。

  • 定員11名以上の車を保有
  • 白ナンバーや黄色ナンバー車を5台以上保有

アルコールチェックは、1日の業務が始まる前と終業時の点呼において実施する必要があります。

なお緑ナンバー車を保有する事業所については、すでに2011年から検知器を使ったアルコールチェックが義務化されております。

法令改正に至った背景

この法令改正は2021年6月28日に千葉県八街市において、下校中の小学生の列にトラックが衝突し、2人が死亡、3人が重傷を負う事故をきっかけとしています。NHKはトラック運転手について、以下のように報道しています。

  • 高速道路のパーキングエリアで、220ミリリットルの焼酎を全部飲み切って運転していた
  • 過去には周囲から酒臭さを指摘されたこともあった

常識や社会規範、モラルに訴える方法だけでは、積極的に飲酒運転を選ぶ行動を防げません。白ナンバーや黄色ナンバーの運転者に対しても、酒気帯びの状態では運転できないようにする仕組みをつくり、実行する必要があります。この要件を満たすべく、アルコール検知器を用いたチェックが義務化されました。

アルコール検知器に求められる性能

アルコール検知器に求められる性能の要件は、警察庁が2023年8月15日に発した通達により、以下のように定められています。

アルコール検知器については、道路交通法施行規則第九条の十第六号の規定に基づき、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を定める件(令和3年国家公安委員会告示第63号)により、呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器であれば足りることとされている。
また、アルコール検知器には、アルコールを検知して、原動機を始動することができないようにする機能を有するものを含む。

「呼気に含まれるアルコールを検知し、結果を表示する」アルコール検知器は一時期品薄の状態でしたが、現在では入手可能な状態となっています。この要件を満たせば、メーカーなどの指定はありません。

またアルコールを検知してエンジンを起動できない自動車も、アルコール検知器に含まれます。

もしアルコールが検知された場合はどう対応する?

もし運転する前や運転した後の点呼でアルコールが検知された場合は、酒気帯び運転や飲酒運転の疑いがあります。このため企業には、以下の対応が求められています。

  • 運転する前の場合:運転をさせず、警察署に通報する
  • 運転した後の場合:警察署に通報する

上記とあわせて、就業規則による処分も必要です。なおアルコールが検知されたタイミングが運転する前の場合で、運転者の通勤手段が以下の場合は警察への通報を要しません。

  • 徒歩
  • 公共交通機関(電車、バス、船など)
  • 会社が用意した通勤バスや送迎車

アルコールチェックの義務は会社全体におよぶ

アルコールチェックの義務は会社全体におよぶ

アルコールチェックの義務は運転者と安全運転管理者にとどまらず、会社全体におよびます。どのような義務が課されるのか、違反するとどのようなペナルティがあるか確認していきましょう。

安全運転管理者が負うべき義務

検知器を用いたアルコールチェックの義務化により、安全運転管理者が負うべき義務に以下の項目が追加されます。

  1. 始業前・終業時の点呼において、アルコール検知器を用いて酒気帯びの有無をチェックする
  2. 検査結果を記録して、1年間保存する
  3. アルコール検知器をいつでも正常な状態で使えるように管理する

このうち1番の業務は、安全運転管理者が常時対面して実施しなければならないわけではありません。安全運転管理者の代わりに、副安全運転管理者または安全運転管理者の業務を補助する者がチェックを行うことも可能です。

運転者自身が負うべき義務

安全運転管理者の義務を別の方向から見ると、運転者自身が負うべき義務が見えてきます。運転者は日々行われる始業時や終業前の点呼において、安全運転管理者等と対面したうえでアルコール検知器を用いた検査を受けなければなりません。その際に酒気が検知された場合は運転が許されず、会社の指示に従う義務を負います。

検査後に記録すべき項目や保存期間

検査の結果は以下の事項を含めて記録し、1年間保存してください。

  1. 確認者名
  2. 運転者
  3. 運転者の業務に係る自動車のナンバーまたは識別できる番号等
  4. 確認の日時
  5. 確認方法(対面でない場合は具体的方法)
  6. 酒気帯びの有無
  7. 指示事項
  8. その他必要な事項

上記の内容は点呼を行うごとに、また運転者ごとに記録しなければなりません。

直行直帰の場合は運転者自身がアルコール検知器を携行する

直行直帰や出張などで安全運転管理者と対面できない場合でも、アルコール検知器を用いたチェックは免れません。業務で車を動かす日は、以下のどちらかでチェックを受けなければなりません。

  • 安全運転管理者がいる営業所等に向かえる場合は、現地の安全運転管理者と対面してアルコール検知器を用いたチェックを受ける
  • 運転者にアルコール検知器を携行させたうえで、携帯電話やWeb会議システムなどを用いて、始業時・終業前のチェックをリアルタイムで行う

アルコール検知器に表示された数値は、運転者が所属する営業所等の安全運転管理者にリアルタイムで報告しなければなりません。事後報告は不可という点に注意してください。

アルコールチェックを怠ると業務が止まり信用を失うおそれがある

アルコール検知器を用いたチェックを行っていない事業所は、自動車の適切な運転管理が実施されていないものと扱われる可能性があります。この結果、公安委員会から安全運転管理者の解任を命じられてしまうかもしれません。安全運転管理者を解任しない「解任義務違反」や適切な方を新たに選任しない「選任義務違反」は、最大で50万円以下の罰金となります。

またアルコールチェックを怠ったことが原因で事故が発生した場合は、企業や社会からの信頼が失われます。事業継続に重大な悪影響をおよぼしてしまうでしょう。

会社で準備が必要な5つの項目

会社で準備が必要な5つの項目

アルコール検知器を用いたチェックの義務化に先立ち、会社が行うべき準備は5つあります。何をどのように行う必要があるのか、確認していきましょう。

アルコール検知器の入手と定期的な点検

アルコールチェックは業務の一環として行うものですから、アルコール検知器は会社の負担で準備することが望ましい備品です。アルコール検知器は一時期入手しにくい時期がありましたが、2023年に入ってからは入手がしやすい状態となりました。

もっとも、個人で準備したアルコール検知器が使えないというわけではありません。会社で購入した検知器と同様の管理を行っていれば、使用可能です。

安全運転管理者は保有するアルコール検知器に対して、日ごろから以下の管理を行わなければなりません。

  1. 取扱説明書に基づき適切に使用する
  2. 検知器に定められた使用期限や使用回数を厳守する
  3. 正常に作動すること、損傷が無いことを日々確認する

加えて、以下の内容を週1回以上確認する必要があります。

  • 酒気帯びの状態でない人が使用した場合に、アルコールを検知しないこと
  • アルコール成分を含む液体を口の中に噴霧したうえで使用した場合に、アルコールを検知すること

もし異常が見つかった場合は、そのアルコール検知器を使ってはいけません。

予備のアルコール検知器の確保

アルコール検知器が壊れてしまいアルコールチェックを行えない場合、対面など他の方法で代えることは認められていません。業務の続行には、別のアルコール検知器を用意する必要があります。

故障した場合、すぐに修理や代替機の準備ができるとは限りません。「アルコール検知器が壊れたため業務が止まる」といった事態にならないよう、予備のアルコール検知器を確保しておき、いざという事態に備えましょう。

点呼記録の保存

点呼記録の保存は必須条件ですが、必要なときに表示・出力できればデータを管理する方法は問いません。人手を使ってその都度紙に記入する、パソコンに入力する方法は簡便ですが、どうしてもミスや記録忘れが発生することは避けられません。

一方でうっかりミスであっても、記録の漏れはあってはならない事態です。このため、検知結果を自動で記録するシステムの導入がおすすめです。

就業規則やルールの整備

会社で準備すべき項目は、アルコール検知器そのものにとどまりません。アルコールチェックの実効性を担保するためには、就業規則やルールの整備も重要です。

残念ながら働く方のなかには、隙があればルールを逸脱したいと考えている方もいるかもしれません。なかには点呼におけるアルコール検査を拒否する方も出てくるかもしれません。このような事態を許すと、チェックは形骸化します。会社は就業規則に以下の事項を記載し、アルコールチェックの実効性を担保する必要があります。

  • 検査を拒否する行為そのものが就業規則違反である
  • 検査を拒否する従業員には、処分を科すことができる

また長距離を運行する場合は、しばしば直行直帰や現地での宿泊が発生するでしょう。その際はどのような方法でチェックするか、あらかじめ決めておく必要があります。

アルコールチェックをきちんと行える体制づくり

アルコールチェックをきちんと行える体制づくりも、会社が対応すべき項目です。事業所が保有する自動車が20台以上になると、副安全運転管理者を1名選任しなければなりません。また40台以上の事業所は2名、それ以上は20台ごとに1名を追加で選任する必要があります。安全運転管理者と副安全運転管理者では業務がまわらない場合は、補助者の選定も必要です。

また泊まり業務や直行直帰の運転者がいる場合は、Web会議システムなどリモートでもリアルタイムでチェックできるシステムの整備が必要です。

アルコールチェックの規制強化に対応するおすすめの製品をご紹介

アルコールチェックの規制強化に対応するおすすめの製品をご紹介

検知器を使ったアルコールチェックの義務化にあわせて、優れた性能を備えた製品が続々と登場しています。どのような魅力があるか、製品ごとに確認していきましょう。

パイ・アール社「アルキラーNEX」

パイ・アール社では既存製品の「アルキラー」「アルキラーPlus」を進化させた、「アルキラーNEX」を発売しました。以下の機能を備え、確実なアルコールチェックと記録の保管を手間なく実現します。

  • 検知結果をクラウドで管理し、いつでもどこでも結果をすばやく確認できる
  • いつ・どこで・誰が・どの機器を使ってチェックを行ったか、顔写真や結果とともに記録・送信できる
  • 操作は簡単。アプリの表示に従って息を吹き込むだけ
  • 検知器とスマートフォンはBluetoothで接続。顔認証やワンタイムパス認証でなりすましを防ぐ
  • 法令で求められる記録簿も自動で作成。ExcelやCSVへの保存も可能
  • 検知器の有効期限も一括管理できる
  • アルコール検知器協議会(J-BAC)認定を受けており、精度の高い製品
  • 検知器のカートリッジ交換も無償で実施。不明な点も電話やメールなどでサポート

アルキラーNEXは運転を生業とする運輸業をはじめ、大手の小売業や製造業、建設業でも多くの台数を導入頂いております。法令遵守はもちろん、安全運転を行う縁の下の力持ちとしてもおすすめです。

早めにアルコール検知器を確保して準備を進めよう

早めにアルコール検知器を確保して準備を進めよう

アルコール検知器の使用義務は、準備状況のいかんを問わず2023年12月1日から始まります。「検知器がなくて業務ができない」という事態にならないよう、早めにアルコール検知器を確保しましょう。記録方法のフォーマットは千葉県警察のサイトなどで公開されていますので、参考にすることもよい方法です。貴社に合った方法で、準備を進めてください。